凄い人に会ったけど絶対秘密です~ある動物好きの悲劇~
雑貨屋を営むA子さんは、近所で無類の犬・猫好きで知られている。数件先に最近入ったブティックの主人(ちょっと変人)は言う。「あの人はいい人だ!本当に、すばらしい!あんなハデな感じだけど、本当に…!」
そう、A子さんは大学生の子どもを持つ年齢ながら、髪は金髪、メタリックブルー系のアイシャドウに瑠璃色のマニキュア、言葉遣いもちょっとどこのギャル?という雰囲気。しかし、一見蓮っ葉な言葉遣いでも、こんなにいい人がいるのかあ、と私は会うたびに感心してしまう。
件のブティック主人が絶賛するきっかけになったのは、彼の店の前で早朝、猫が車に轢かれていたことからだ。近所の人がそれを見つけ、A子さんに知らせた。A子さんによると「もう、アッタマくるわね。ウチの前じゃないのよ?わざわざウチに…」と私に愚痴ったが、彼女は家のタオルを持って、轢かれた猫を抱いてやり、もう駄目なのを知りながら、行きつけの獣医さんに連れて行った。獣医さんも「ああ、またですか…」と格安で診てあげて、きちんと処理をしてあげた。A子さんは言う。「だって、もうダメなのはわかってるけど、あそこに置きっぱなしじゃ、もっと轢かれるし、役所に言ったって、ゴミとして処理するだけなのよ!役所の人、あとからノコノコやってきたけどさあ!」…私も轢かれた猫はかわいそうだと思うが、内臓や脳髄がはみ出した見知らぬ猫を手で抱いてやり、自腹を切って獣医に行けるか??と自問すれば、ひたすら頭が下がるばかり。件の主人も、自分の店の前で轢かれた猫を処理してくれて、などと言う以上の感動を覚えたからこそ、絶賛したのだ。
A子さんの店のレジに、捨て猫の里親探しのチラシが貼られていた。これもまた、大変な話だ。
近所の古い店の主人が、夜中に戸を叩いた。「こっちはお風呂も入って寝る所だったのに」と思いながら出ると、主人が、捨て猫を抱えていたという。A子さん、「もう、そんなの自分でやってくれりゃあいいのに!」と言いつつも、結局預かってしまう。雨の中で震えていた生後2ヶ月の子猫は、丁寧に世話され、写真を見てもふわふわの美しい毛並みの、可愛らしい猫になった。猫エイズなどのワクチンも、自腹を切ってタウン誌(と言っても、ちゃんとした地元誌ではなく、よそから来た広告ばかりのやつ)に里親探しの広告も出した。おまけにそのタウン誌に、「お店の広告も出してください!!!!!」と泣きつかれて、何の因果か出したくもないのに広告を出すハメになったらしい。「ワクチンの注射や去勢手術だってさあ、獣医さんも『またですか』と同情してくれるんだけど、タダってわけにはいかないじゃない?里親探しの貼紙だって、表に出すとまた大変だから、病院の中にっていうことだけど、それでも目立つ所に出してくれたわよ」
そう、他でも聞く話だが、ペットショップや獣医さん、犬猫好きなんていうところに、捨て犬や捨て猫が集中するという現実がある。とある大型ペット店など、「生体を扱う店なので、衛生面から捨て犬・猫は即座に保健所に引き取ってもらいます」と、かなり厳しいポスターが店の前に貼ってある。イメージ的にはダウンかもしれないが、犬猫ショップだから動物好きな店員さんが優しく面倒を見てくれるだろう、的な幻想を抱いてほいほい捨てられたら、死活問題だ。里親探しのために、目立つ所でアピールしたいが、それをやっていると「あそこに捨てれば、里親を探してくれる」と、ますます負担が増える。実際、近所の捨て猫まで、抱え込んでいるのだから…
というわけで、無駄かもしれないけど、可愛い生後2ヵ月半のオス・茶トラの里親募集中。私が飼ってあげたいくらいだけど、集合住宅の上、家族が猫アレルギーで、実家は全員猫嫌い。…いっそ、専用メアドくらいつくろうかな、と思ってます。
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