凡人なので、漫画などは最初から見ることにしている。
大体、自分の好みに合いそうな話題の漫画はネットや新聞評などでチェックし、気に入れば購入。ただし、昔から信者的に買わせていただくと決めている作家は、見かければ値段も見ずに即買いだ。スーパーでは、一袋19円のもやしにも、「でもぉ、あっちのスーパーでは火曜には10円だしぃ」などと迷うというのに。
で、いろいろ気になりながら、なかなか読むのにいたらず、最近になって遅ればせながらはまってるのが久米田康治さんだ。
きっかけは、某人気ラーメン店で、待ち時間に読んだくたびれた少年マガジンだ。ざっと話題の漫画を読み、もう少しで太く短い麺に、濃い目のスープが絡み、薫り高い海苔やチャーシューが絶品というラーメンが供されようというときに、ほぼ巻末で出会ったのが、「さよなら!絶望先生」だった。
キミのこと、前から気になっていたの→熱愛。
仕事ももちろん大事だが、合間を見て昔働いていた本屋さんへ。新本を買うなら、なるべく買ってあげようという店の一つだ。だが。
この店には、絶望先生の1巻が無かった。
だが、この、時事ネタ満載の作品なら、かえって新しい巻のほうがいいかもしれない。前に熱にうかされたヴィクトリアンロマン「エマ」だったら、絶対に1巻を探すまではあきらめなかっただろうが、読みきり連載タイプのこれは、別に1巻にこだわらなくてもいいんじゃない???と、この日はとにかく最新刊の4巻を買い、移動時間に読みまくる。さらに同じ日に別のこだわりの店に寄り、迷わず1~3巻を購入。私は、働きながら子どもたちにエサを運ぶ母鳥のようなものだが、この日は、いつもよりたっぷりの、というか珍しく頭と心の栄養になりそうな虫を4匹も加えて巣に帰る心地だった。
「あんたは、4巻から読みなさい」息子に、4巻を渡した。「は?4巻?」いぶかしげな息子。「そう、最新刊。全然、問題ないから。というか、そのほうがわかりやすいから」中学生で不登校でオタクな息子なら、時事ネタも新鮮なほうがいいだろう。一方、娘には「1巻から読みなさい」と勧めた。あまりひねた時事ネタよりも、物語として入りやすい1巻からの読書が、娘には合っているだろう。 で、これは正解だったと思う。喧嘩にもならないし。
息子は、まずは好みの萌え絵柄と、因果関係は良くわからないながらも美少女だらけの世界観と自分に似た世をすねた主人公、そして、読めば読むほど味わいの増す細かなネタにどっぷり漬かり始めた。4→1→2→3の順で読んで、むしろ良かったのだ。一方娘に感想を聞くと、普通に「おもしろい」といい、物語をきちんと楽しんでいるようだ。彼女の好きなキャラは日塔奈美で、次は千里だそう。 普 通 だ。 彼女のおかげで、「一家団欒アスペ」を免れているんじゃないかとひそかに思っていたのだが、それが立証された形だ。
次に私は、営業歩きの途中で、この作者の前作である「かってに改蔵」にも食指を動かし始めた。これも、前から話題を聞きつけていたのだが、1巻を読んで……いろいろ、イメージが違い、放置していたのだ。あえて、その時本屋で目に付いた一番後ろの25巻を購入!絶望先生の土台だ。で、前に見た1巻とはまるで別の作品に思えた。改蔵も、ヒロインだと主張するうみちゃんも。…チタンくんって、おもしろいなあ。何巻くらいから登場したのかなあ。とか思いつつ、24巻購入。次、23巻が無かったので、しょうがないから1巻購入。うああああああ。チタン君、ここから出てるんだ!というか、あのいじめられキャラか!別人だ!wwww下ネタだらけで、小学生は、読んじゃダメ!
と、いうことで、1巻を愛娘ちゃん禁止で息子に渡した。私としては、息子にどの巻から見てもいいよ、というスタンスで家に置いていったのだが、息子は律儀に1巻を読み、「はあ?下ネタだらけだし、絵も洗練されてないし…」という感想だったらしい。で、24や25巻を見ることなく、今日私が買って帰った最終巻の26巻にいきなり手を出すことになってしまった。
1巻から、いきなり最終巻へ。
こういう読み方って、アリか???しかし、なんとなくこの作品に限ってはアリかも!と、私は息子の反応を観察した。
表紙をめくって、いきなりウケている。「はあああ???どちらさまですかあああああ?wwwwwww」どうやら、主人公さえ、誰だかわからなかったらしい。というか、絶望先生の高校時代くらいに見えたようだ。作風も、ネタも、絶望先生の土台にしか思えない。ヒロインの変貌ぶりにも、ついていけずウケまくり。さらに、チタンくんの変貌ときたら!あえて、この本でも作者自ら1巻の頃からの変貌をネタにしているが、ある意味、逆の最終巻→第1巻の読み方もあるのかもしれない。
で、ラストにはものすごく感動していた。この手のオチ、というのはある意味禁じ手だろうし、「打ち切られた」とかなんとかいう情報も無い状態ではあるが、年の割にいろいろスレてしまっている息子が、1巻から最終巻というとても乱暴な読み方をしても、こんなとんでもないラストを見せられても、「すげえ」と感服。この、息子の反応がおもしろかった。
まず、この作者の力量が良い。これは絶対。また、読みきり連載って、やっぱりいい。ふらりと手に取った雑誌でも、すぐに入っていける作品、それも時事ネタを盛り込める作品は、週刊雑誌には欠かせないものだろう。命が短い、という苦しさもあるだろうが、長い長い目で見れば、時事ネタを盛り込んだ作品は、そのまま「歴史の証人」としてよい史料になることもあるのでこのままいってしまえ、だ。比較的属性の似ている私から見ても、偏りがある時事ネタだが、これが数十年後には、21世紀初頭のサブカル史料になるかと思うと、別の意味で笑いが止まらない。
息子、改蔵第1巻を読破したあと、そーーーーーっと、妹の目をしのんで私のもとに持ってきた。しかし娘はいう。「はあ?その1巻なら、とっくに読んだわよ」
なんかもう、いろいろ脱力する梅雨明け前。
表紙からして別作品。
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