目立ちたくても放火はダメ~なんだかもう~
デスノートのおもしろさは、一見荒唐無稽なストーリでも、しっかり現代の様相を描いていることだと思う。ことにおもしろいのは前半、主人公の月と、それを暴こうとする相手との頭脳戦だ。レイ=ペンバー、南空ナオミ、そしてL。月は、自分の正体(キラ)を隠しながら、巧みに相手の情報を得ていく…。
名前と顔。すなわち「個人情報」を取られたら負け。ナオミはことに、まったくデスノートの情報もなく月の前に現れ、慎重に実名を隠していたのだが、月の演技で本名を露にしたとたん、デスノートの犠牲となった。犯罪者ではないのに。ナオミとレイのエピソードは、月を「退屈な、正義感の強い天才少年」から、デスノートを使いこなすようになって「自分に逆らうものは容赦なく裁く暴君」へと変える、実に象徴的で、おもしろいものだった。
同時に、「こりゃあ、ネット社会や、個人情報保護社会を暗喩してるんだろうなあ」と恐れ入った。
インターネットの世界は、誰でも情報を発信できる無限の媒体だ。宣伝にも、自己実現にも、驚くほど安いコストで自分の持つ情報を発信できる。が、同時に一度発信した情報が、どう扱われるのかわからない、そういう世界でもある。個人情報保護法ができたのはすばやかった。今、子供のスポーツ大会参加目録に、娘の名前を出すのもイヤがる親がいる。ほのぼのした子供の遊ぶ写真を載せるのも、新聞記者は気を使っている。最近の学校にはホームページを持つところが多いが、児童の顔はボカシが入っている。PTA広報も同様だ。新聞やテレビで褒められるということは、きっと本人の励みになるだろうが、その前に誹謗中傷、あるいは性的対象にされるという危険もはらむ。名前や顔を出すこと。素性を知られること。「有名になる」は、今は危険なことなのだ。
で、先ごろN県で放火の疑いで逮捕されたE・Hさんである。今更こんなひっそりとした個人の日記でイニシャルにされたところでどうにもならないだろうが、この方はとても自己顕示欲が強く(私も含めて、大なり小なりHPやブログをやってる人はそうなのだろうから、私に叩く権利はないのだが)、それがかなり無防備で、すごすぎる。
詳細は、おそらくほかでいくらも情報が得られると思うので、ここにはいちいち揚げない。というか、そのくらい、彼女はいろいろ「有名」だったようだ。名前も、顔も、風俗で働いたこと、整形したことも。…まあ、これもキャラクターによっては潔いとか、そういうことになるかもしれない。が、あまりにも、あまりにも……
とにかく、彼女は異常な自己顕示欲の強さのために、2ちゃんのような魔窟でひたすら自己アピールに勤めたようだ。もしかしたら、嫌悪したり、呆れたり、怒ったりする人の反応も、自分の魅力のためだとうれしかったのか。だまされようが半ば馬鹿にしに来てようが、自分のホームページにアクセスがあることを誇っていたのか。誰も自分をアイドルとして認めてくれなければ、自作自演の火事で、注目を浴びようとしたのか…
今のところ彼女が全部関係しているかどうかわからないが、S市の連続放火では、不幸中の幸い、死者はでていないそうだ()。だから、まだ笑いのねたにできている。よかったですね、Eさん、とても有名になれて。
が、たとえ車を燃やされただけでも、もちろん大切な家を燃やされただけでも、大変な被害です。家を建てるって、どれだけ大変か。燃えてしまったアルバムや思い出の品は、どうやって償うんでしょうか?
で、もしも「キラ」が実在したら、きっとEさんもここまで悪目立ちすることもなかったでしょう。なまぇゃかぉがでたらこゎぃのは、Eさんにもわかることでしょうから…
で、月はあんまり相手にしないけど、少なくともミサミサは「この馬鹿女~~」と嬉々としてノートに書きそう。それも、事件を起こす前にかも。いろいろデスノートのおもしろさを再確認した事件だった。
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