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2006年8月 5日 (土)

今月のテレプシコーラ~伏線総ざらえ~

篠原家は、本当に健全な、理想的な家庭だ。

何事にも手を抜かず、母として妻としてバレエの指導者としてがんばり続けるお母さん。
おっとりとしながら、妻や娘のサポートに徹するお父さん。

そんな両親のもと、これ以上ないくらい、まっすぐに育った舞姫たち。

その、まっすぐさがいけなかったのか…長女の千花ちゃん、そろそろ49日も迎えたのか、洋風な家になじむような、あっさりとした祭壇で、花に囲まれ遺影となって微笑んでいる。その姿も、バレエの舞台衣装らしいのが哀しい。

前々からにおわされていた、「いじめ」の問題がいよいよ明らかになってきた。あんなことになったのに平然と「バイ」といってのける高森さんには底知れぬ恐ろしさを覚えるが、母親の千恵子さんの言葉には心底頭が下がる。これだけがんばってきたのに最愛の娘を失って、他の誰のせいにもしないのだ。実際、私も千花ちゃんがいじめなどに屈したなどとは思えない。自殺するかしないかは、結局は自分の問題だろう。千花ちゃんにはバレエしかなかった。イヤな連中の鼻を明かすのにも、バレエしかありえなかった。だから自分が踊れないのではないかと思ったとき、完全に自分を否定してしまった。

少しでも、千花ちゃんがアイドルとか恋愛とかにうつつをぬかせる子だったら。高森さんの100分の1でも、したたかだったら。

でも、そんなにも踊ることに全身全霊をかけた千花ちゃんだからこそ、ここまで多くの人の愛情を受けたのだろう。私にとっては、「あしたのジョー」の力石か、「ベルサイユのばら」のオスカル以来の漫画大事件だと思う。

千花ちゃん、まだトゥオネラで踊っているらしい。生前最初で最後の、あの素晴らしい舞台の頃よりも、いくらか大人びた体型になり、艶やかに舞う千花ちゃんに、涙。

でも、ずっとこのままあそこで踊らせてはいけない気がする…

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