高校球児幻想~ハンカチ王子はいかがなものか~
今年は久々に「野球」がきた。春の王ジャパンに引き続き、夏の甲子園も、球史に残る名決勝、早稲田実業、駒大苫小牧の両エースの活躍は、久々に「甲子園のヒーロー」らしいさわやかさを感じさせてくれた。
しかし、特に「ハンカチ王子」などという名をつけられた早稲田実業の斉藤佑樹選手の騒がれ方はちょっといかがなものか。たしかに、人気実力とも、久々の大物だ。端正な顔立ちに清潔感漂うしぐさ、知的なところも加えて、まさに「理想の高校球児」が出現した感がある。
日本人は、「白球に青春を賭ける穢れなき高校球児」という幻想が大好きだ。この「穢れなき」が重要。前の甲子園のヒーローだったダルビッシュ君は、喫煙でヨゴレがついてしまった。真紅の優勝旗を北海道にもたらした駒大苫小牧にも、多くの物語を期待したが、結構部員の不祥事なんかのヨゴレがついてしまった。
うちの近所にも某高校野球部のキャプテンがいたが、小中学生の女の子に露出などの性的いやがらせを頻繁に行い、ついにはひったくりで捕まった。高校球児がこのようなことを起こすと「まさかあの子が」という反応になってしまう。うちの息子など、オタクだというだけで「性犯罪者予備軍」呼ばわりされて傷ついて不登校になっているのだが、こういう傾向はまだまだ続くのだろう。スポーツに青春を賭ける子は、健全。そうでない子は不健全。こういう構図の元、高校球児には必要以上に「努力、友情、勝利」などの物語を望む。ったって、スポーツ少年だって、オタク少年だって、悪いことをやるかどうかの確率なんて、たいして変わらないと思うのだけど。
横道にそれた。まあ、斉藤君は賢く、清潔で、実力もあり、優れた少年なので、騒がれるのも無理はない。が、一介の高校生をつかまえて「王子」はないだろう。甲子園が終わって大分たつ今日だって、「ハンカチ王子選抜チーム情報」「ハンカチ王子の彼女は慶応少女だった」などの報道が相次ぎ、今朝のワイドショーでは彼についてまわった女性リポーターが「アーーーッ!今、汗を拭きましたぁ!」などと、まるで珍獣のような騒ぎっぷりだ。
そんなふうに騒がれるたびに、斉藤君がおかしくならないかと危惧してしまう。またこんなに騒がれたところで、ちょっとでも「穢れなき高校球児にあるまじき振る舞い」のひとつでも報道されたら、マスコミは持ち上げた反動で、たちまち叩きに転じるだろうことが容易に想像できる。
イメージで必要以上に貶められるオタク少年もつらいが、必要以上に神格化される高校球児も気の毒だ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント