不登校息子と豪遊~親子関係しきりなおし~
「今日は息子の家族サービスに専念する」と決めた。別に、「高校生が母親の首を斬り付ける」というニュースがあったせいではない。いろいろ二人の都合がついたのだ。
まあ、いろいろあった。お互い悪い部分もあったし、行き違う部分もあった。息子は学校にほとんど行けなくなり、いろいろ損失を負った上でこれからの進路を考えなくてはいけない。貧乏のどん底から一人で這い上がるためにはいろいろ我慢したりさせたりということがあったし、そのせいでお互いが不審にもなった。
学資保険満期金50万円は、息子の前で手渡され、新しい保険契約に関する手続きも子供たちに参加させた。現金は息子と一緒に駅前の郵便局へ行き、息子の口座に入れるところを確認させた。息子は、自分のお金がこんなに貯まっている事(ただし息子の感覚で)に驚いたようだった。
「これは、あんたが将来の道を歩くのに困らないように、ママが貯めてきたお金。高校くらいは行けるようにしないといけないから」と話した。これまでそんな話もできなかったが、受験や進学にどういうお金がかかるかも話した。受験するにもお金がかかる、滑り止めの私立の多くは、入学金を納めなくてはならず、他の学校に行くことが決まってもほとんど帰ってこないこと、うまく公立高校に入れたとしてもこのくらいのお金、私立だったらこのくらい、いざというときにフリースクールなども考えているが、息子が大金のように考えているお金も、意外と簡単に飛んでいってしまうこと、など。
今、ようやくこの段階だ。
駅周辺には制服を着た中学生がたくさんいた。同級生のグループからも「よお」と声をかけられた。「たぶん、高校の説明会だと思う。俺は情報入ってこないから行ってないけど」と息子。引きこもり仲間でさえ、行ったことがあるようなのに、何やってるんだか…しかし、私自身も仕事を毎日やるのが精一杯で、何もしてやることができてなかった。第一、定期テストもまともに受けられない状態で、志望校云々なんて、考えられないし。
今の息子の第一の課題は、家族を含めた人間関係を円満にすること。もはや父親には何も期待できないが、それ以外は2年前には考えられないほど良くなってきた。第二の課題は「生活リズムを取り戻す」こと。朝、起きるべき時間に起き、寝る時間に寝る。自分の気まぐれでなく、社会のリズムに合わせること。今日は、眠いとかなんとかいう息子を、明るい町に連れ出し、家では食べられないおいしいものを食べさせ、おねだりも極力聞いてやり、楽しませてやろう。外の世界は、こんなにも刺激に満ちているのだ。
電車に乗り、まずは私のお得意先でもあり、絶対に息子が感激すると信じたお蕎麦屋さんへ。一人前1000円以上する食事なんて!とイヤがったが、私が絶対これがお勧め!と思う天せいろを食べさせた。どうよ、この打ちたての蕎麦。コクのあるつゆ。てんぷらもからり、大きなえびはぷりりと、存在感も満点。わさびアレルギーだと思い込んで外食を避けていた息子に、あえてここの本物のわさびを、ちょっとでもいいから入れてみなさいと勧めると、素直に「うまい」とうなずく。お会計時、店主が「息子さんですか?」と話しかけてくれた。なんと、息子は初対面の店主と気軽に話しはじめた。不登校が、引きこもりが、うそのようだ!うまい蕎麦は、引きこもりを直すぞ!「美味しんぼ」的展開だ!
息子の希望を聞くと、なかなか海や山というわけにはいかず、その町のオタク向けスポットがどうしてもはずせない。今日のメインは閉館間近の「バンダイミュージアム」だ。以前に連れて行ったときには生活の不安からザクマシンガンを撃たせてあげられず、ずっと恨み言を言われていた(俺の希望なんか、結局聞いてくれないじゃないかよ~!と)ので、今日は大いに豪遊させるつもりで。ところが、息子はガンプラなどを見るだけで満足。「もう、いいから」と言った。さすがにだだをこねるのは卒業したか。帰り際、ケロロのグリーティングに遭遇。こういう着ぐるみとしては小さく作られ、動きなどが本当にかわいいので、バンダイミュージアムでも大人気。「すげえ。本当にかわいいなあ」だから、去年あれほど一緒に見に行こうと言ったのに。
カラオケに行き、日ごろやたら歌う息子を、思い切り歌わせた。ヘヴィメタ系、絶叫系、アニソン、どれもうまい。おまけに得意の「あなごさん」声でも歌いこなす。驚いたのは、家ではやらないファルセットも完璧だったことだ。「Air」のテーマ曲「鳥の歌」や、「ファンタジックチルドレン」のエンディングなど、女性でも歌いこなすのは厳しい曲を、美しく歌ってる。若本からオリガまでって、息子はばけものか。なぜか一緒にアニメタルを歌い、今度は「レッツファイナルフュージョン」を一緒に歌おうね、と誓う。
本屋にも行った。古書も新書も、品揃えの良い店に行ったので、息子は大喜びで、漫画談義におねだりにとコミュニケーションを楽しんだ。高校進学の本も読んでみたり、いきなり漱石の「坊ちゃん」をねだられたり。CDショップでも、アニメのDVDや一部CDが安い店に案内。そのあとの日用品の買い物も嬉々として手伝い、「荷物重い~明日は筋肉痛~~」とはしゃいでいる。「おいおい、あんたらに食べさそうと、肉や野菜や牛乳やらで、いつもその倍くらいの荷物持って帰ってるし、そのくらいの荷物持って毎日仕事で歩き回ってるんだよ~」と言っておいた。
良い刺激になったと思う。今、息子は必死で宿題に取り組んでいる。
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