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2006年10月 6日 (金)

テレプシコーラ第一部完了~おめでとう六花ちゃん~

倍のページ数でも良かったかもしれない…

これは、本当に難しいシーン。なにせ、「あの六花ちゃんが」という以上の、今をときめく男性ダンサーも「挑戦したい」というほどの、尋常でない難易度の振り付けを、金子先生や篠原先生が後で気づくほどの「トゥオネラの白鳥」の曲で踊る。

私のような、ほとんどバレエ素人の読者に伝えるのは、どれだけ難しかったことだろう。

前の蜘蛛の踊りと同じく、六花ではなく、観客の先生視点。ずっと、まるで篠原家の長女のように千花・六花姉妹を見守ってきた金子先生を中心に、六花ちゃんの踊りが解説される。
「まるで千花が乗り移ったかのようだ」「うん」
彼女の成長を見守ってきた鳥山・富樫先生。たしかに、六花ちゃんの中のイメージには、おそらくあの、トゥオネラで踊る千花ちゃんの姿があるのだろう。

できれば、あの姿がオーバーラップするシーンが、少しでも欲しかった。

すぐにイメージを形にし、憑依したように表現できるタイプの六花ちゃん。ダンサーとしてはまだまだ劣る彼女が、表現のために大変難易度の高い踊りに挑戦した…見所はたくさんあるが、踊りの解説に力が入る(入らざるを得ない)踊りであったために、どこか情緒がついていかない。
もちろん、「千花ちゃんの死」をきっかけに、ダメダメ六花ちゃんが、凄腕ダンサーになりましたとさ、とはいかず、あちこちでミスをして、先生も観客もハラハラ。その作品の成就を祈る。これはすばらしい。ノンナのように、身体的なコンプレックスを克服して自分の世界を開花させる……一歩手前。

六花ちゃん、本当にがんばった。今だって、彼女の右足は、十分に開かない。千花ちゃんや、空美ちゃん、茜ちゃんのように自分のイメージどおり関節を動かせないのだ。けれど、自分が「踊りたい」というイメージを得て、ようやく自分に必要なものを、自分で吸収しようとした。それを表現するために、必要なことを、必死でやった。作品中に描かれなかったけど、もしかしたら以前のように「千花ちゃんに言われたとおり、もっと腹筋を鍛えておけばよかったな」とか、「空美ちゃんのあの姿勢、もっと教えて欲しかったなあ」とか思いながら、、自分の力量以上のイメージに、挑戦していたのかもしれない。

挑戦し続ける人間。これもまた、「テレプシコーラ」のテーマか。

本当にぎりぎりいっぱい、最後まで必死で踊り続ける六花ちゃんの、渾身のピルエットトリプルにも、さりげな~く「最後は疲れてかかと落とす」と、著者の容赦ないコメント。山岸先生、まったく踊りに妥協していない。こんなに感動的な、六花ちゃんの成長ぶりにも、きっちりダメをだす。先生、六花ちゃんの指導者状態ですね。手厳しい。ついでに、貝塚バレエの仲間たちの衣装にもいろいろ解説。源氏物語もかくやと思われる、細かなこだわり。

ねえ、貝塚バレエ団って、本当にありますよね?

埼玉県のどこかに、篠原一家は、いるんですよね?

そうまで思ってしまう。ああ、生なましい最終回。

バレエダンサーとしては身体に欠陥がある、まだまだ幼い少女。そのイメージ能力が、ようやく自分でプレゼンテーションできた。ここにきて、万能だった千花ちゃんだって、身体的には圧倒的に優れていても、どれだけ六花ちゃんの無限のイメージを具現化できたかどうか、と思う。また、六花ちゃんも、つらいつらい体験を経て、ようやくここにきたか。

六花ちゃん、おめでとう。表現の道を、歩んでください。

第二部がどんなものになるのかわからないけど期待。

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