サンタさんに関する息子の考察
息子に「今年はサンタさん、来ると思う?」と聞いたら「う~ん…来ないと思う…」と答えた。
不器用な男だ。
同じ質問を娘にしたら、「ええ、来るわ。ゲームを持って」と、模範解答をしたのに。
息子は、子供のころから物知りで知られていたが、なぜかサンタさんは小学校卒業くらいまで信じていた。あれはたしか10歳くらいだったか、息子が「サンタさんはいるのか」と疑問に持ちはじめた。息子は考えた。どうやったらサンタさんがいる、いないの証明ができるかを。ある朝、息子は「サンタさんはいないんじゃないかな。だって、こんなにたくさんの子におもちゃをあげてるのに、買物をしているところを誰も見ていないんだから」と言い出した。その時私はこう答えた。
「デパートには外商というのがあって、お得意様は売り場をうろうろなんてしないの。デパートに行っても専用のサロンでお茶でも飲みながらお買物。サンタさんくらいの上得意なら、外商マンがカタログや商品持って出かけていって、自宅でお買物できるでしょうね」
息子は、納得した。
次は、「俺、夜寝ないでサンタさんを捕まえたいな。そしたら肺機能を調べるの」と言い出した。なんで肺?と聞くと、「サンタさんは橇に乗ってかなり上空を飛んでいるでしょう?空気が薄い上空を、高速で飛ぶのだから、肺機能が相当発達しているはずだよ。だから、本物かどうかわかるはず」と言い出した。
息子にとってのサンタさんは、UMAのようなものらしかった。ネッシーとか、ツチノコとか。大体どうやって10歳の子が肺機能を調べるつもりだったんだろう。大病院には高価な機械があって、それで調べられるけど、まさか解剖する気ではなかったのか。
息子がサンタさんを解剖したら大変なので、「サンタさんを、われわれと同じ生物と思ってはいけない。われわれの生命力や科学力などをはるかに超越した存在なのだ」と教えた。また、良い子が起きていると絶対に姿を現さず、今までに何百という良い子がサンタさんを一目見ようと夜更かししたが、そのためにプレゼントをもらいそこね、永遠の絶望を味わったことも付け加えた。
また息子は納得した。
そして翌年あたりには、「サンタさんが一晩でこんなにたくさんの世界中の子にプレゼントを配るのは不可能ではないか」と言い出した。イスラム圏などを除くとしても、一体一晩に何件の家を回るのか。煙突をくぐり、良い子の枕もとの靴下に、間違いなくプレゼントを入れるとして、どんなにすばやく行動しても5分はかかるだろう。移動時間を無視しても、一時間当たり20人しか配れない。子供が寝る時間が8時間として…などと計算し始めたのだ。
地球は回っているので十分24時間は使えるし、また前にも言ったとおり、サンタさんをわれわれと同じ生物の範疇で捕らえてはいけない。北島マヤの年越しそば出前の驚異とは、スケールが違う。サンタさんは唯一であり、無限である。生物ではなく、いわば「現象」に近いものなのだ。サンタさんの超人的なスピードを追跡するサイトもあるのでこれを見るがいい。
などと言ったら、また息子は煙にまかれた。
後に、うっかりしたことで私がサンタさんであると知ったとき、息子は笑いながらうっすら涙を浮かべていた。すでに声変わりが済んでいた。現実的なタイプの妹のほうは、とっくにそうだとわかっていた様子だったのに。
惜しいことをした。まだまだ、息子とサンタさんの話をしたかった。
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