娘がセクハラ~意外な彼女の言い分~
いつも家の中を裸同然でうろうろし、隙を見ては兄の布団にもぐりこみ、お尻などを触ってくる妹…
そんな妹、どこのギャルゲーにもいるはずがない。都合が良いにもほどがあるだろう。また、いてもあまりうれしくない。
で、そんな困った妹がうちには実在する。夏はいくらたしなめてもパンツとランニングだけでうろうろ。さすがに寒くなった今も、油断すると着替え途中にリビングを歩いていたりする。仮にもそろそろお年頃だというのに。
また問題は、この子のセクハラの対象がむしろ、母親である私に向いているということだ。いきなり布団に押し倒し、胸に顔をうずめたり、スカートの中に手を入れたり、逆に自分の胸を触らせようとする。
あんまりひどいので、私は怒って叫んだ。「あんた、本当に腐児子(仮名)なのっ!?本当は中身がよその変態おやじとかじゃないのっ!?」「何それ」「どっかで中身が入れ替わっていて、娘のふりしてへんなことをしてるんじゃあ…」
われながら漫画的な発想だ。しかし、とても清らかな乙女のすることではないだろう。いや、たとえ昨今の性的に乱れた少女だって、母親にこんなことはしないと思う。
ところが娘は思わぬ行動に出た。涙ぐみ、ぷい、と部屋を出て、唯一鍵のかかる部屋に閉じこもってしまった。「腐児子、なんかこもってるけど、なんかあったの?」と息子が聞く。簡単に説明してやったが「うん、たしかにあいつは変態だからな」とあきれ、しばらく放置することにした。
数時間こもったあと、夕食に呼ばれ、ようやく出てきた娘。まだ不機嫌らしく、目には涙をため、口を尖らせている。「おまえ、いいかげんにしろよ」と息子。骨付き肉をほろほろになるまで煮込み、旨みをたっぷりひきだしたスープで食べる我が家流水炊きを前に、娘は大粒の涙をこぼして言った。
「だって… ひどいんだよ、ママ。私をどこかの変態おやじといれかわったって…腐児子は、おやじじゃない! ちゃんと変態なのに…」
近頃の若い娘の主張が、わからない。
「ちょっと。ママは、腐児子が純真無垢な乙女と信じているから、変なことをする腐児子は本当の腐児子じゃない、ということで言ったのよ。悪く言ったつもりはないけど」息子もフォロー。「そうだよ。それで怒るのはおかしい」それでわかったのか、娘はぱあああっと明るい表情になり、「そうなんだ」と、好物の鍋をもりもり食べ始めた。大好物のかんずりをたっぷり入れて。立ち直りの早いところは、娘のいいところだ。
で、やっぱり娘は今後も自分を「変態だ」と主張するのだろうか。この子と長くつきあっているが、本当に思考回路がわからない……
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