ひとり上手と呼ばないで~不登校息子と私の「孤独」自慢~
あいも変わらずゲームに夢中な不登校息子。何を話しかけても上の空。
で、私はなんとかして少しでも息子の気を、ネットゲームからそらしたい気持ちでいっぱい。どんなくだらないことでもいいから。
今日の昼は、昔の人生相談をバラエティにした番組で、少し気をひけた。引き続き、何かドラマが始まった。
「ああ、オレ、ドラマは興味ね~な~」とそっぽを向く息子に、私はがんばって声をかけた。
「お、阿部ちゃんじゃない」
私も正直ドラマ関係は見ないほうだが、息子はそれなりにオタクな母である私に敬意を持っており、母が関心を持つものには一応反応する。
画面では、モデル出身の元祖イケメン俳優・阿部寛さんが一人、キッチンで手巻き寿司を食べていた。阿部ちゃん、この恵まれた風貌に加えて演技力には定評があり、どんな役でも実に魅力的にこなすという。海苔に酢飯を乗せ、巻き簾でネタを巻き、食べる。海苔を巻いた酢飯にうにをのせ、食べる…。この指の細かな動き、表情。実にうまい。息子もつい、引き込まれた。
ドラマは、最近とても話題になった「結婚できない男」の最終回だった。イケメンなのにどこかイケてない、いい年をして結婚できない男を、阿部寛さんが好演。なるほど、と私も息子も納得。
そして「手巻き寿司パーティー」を男一人で行うという行為の異常な寂しさに爆笑。阿部さんがやるとかっこいいし、本当においしそうで、本人も至福の時…という様子だったが、これはかなり寂しい。一人鍋も寂しいが、それでは平凡。あえて贅をこらした手巻き寿司。おしゃれでグルメなのに、やはりありえない。
息子は「これ、いいなあ~おもしろい。オレの、『ひとりぷよぷよ』くらい悲しい」
「ぷよぷよ」というのは、日本の代表的な落ちゲーと呼ばれるパズルゲームで、一人でも遊べるが、二人での対戦がおもしろい。コンパイルと言う、世界一素人っぽいところが魅力な会社が作ったのだが、今はセガが受け継いでいるらしい。息子の言う「ひとりぷよぷよ」とは、対戦モードを一人で行い、楽しく連鎖を出すことだそうだ。
それは寂しい。
「あとひとりデュエルとか」
それは、遊戯王などのカードゲームを、一人で楽しむことだそうだ。まあ、碁にも詰め碁というのがあるし、より強いデッキを作る上では別にいいだろうと思う。
アニメのようなせりふを、一人で二役叫んだりしなければ。
そのほか、ひとりじゃんけんやひとり格闘ゲームをしたことがあるという。息子の「ひとりしりとり」は凄惨を極めた。
「ファーストが『る』攻めをやるんで、セカンドが大変なんだよ。サードも性格悪くてさあ…」
って、一人で3人の人格を使い分けて遊んでいるのか!寂しいにもほどがある!
「あと、ひとりデュエットとか」肉球慕情とかいう、いかにも80年代男女デュエット曲風のアニメ挿入歌を、一人で歌うそうだイメージ的には「雨の西麻布」とか「銀座の恋の物語」を、一人で歌うものか。
「ひとりバレンタインとか」バレンタイン前にチョコを買うのはすべての男にとって恐怖なのに、喜んで板チョコを買い、自分で調理して自分にプレゼントするという… 一応、息子に本命チョコくれる女子もいるのだけど、これは漢として、やらなければならないことなのだという。なんなんだ。
あと、キャンプで男女ペアで肝試しをしたのだが、自分はあぶれて一人で肝試しをしたのだという。それは、…なんか違う寂しさだな…。
私はかつて、あくまでネタとして「ひとりマイムマイム」という話をしたことがある。フォークダンスでおなじみ、みんなで手をつないで輪になって踊る、あの「マイムマイム」を、自分の手と手をつなぎ、その場でくるくると回り、踊るのである。その話を聞く人は、ものすごくウケた。なぜか、その場で「ひとりマイムマイム大会」になったことがある。
しかし、息子も私も、今やしゃれにならない状態だ。
年の瀬、近所のスーパーに買出しに行くと、ご近所の方や子供のお友達のお母さんなどに会う。娘の友達の親は「あら、久しぶり!」と親しげに話しかけてくれるのだが、息子の同級生の親は、一様に気づかぬふりをするか、目があってしまうと「こんにちは」「お久しぶり」といいながらも、目が笑ってなかったり、明らかに距離を置いている。もう、だんだん私も目を伏せ、誰とも会わないように買物をしたい…という気分。
これまで、息子の母としてそれなりに人とのつながりを持とうとがんばってきたけれど、無理らしい。どこかに行けるわけでもないので、このまま行けば、私も息子も地域から孤立する生活を送ることになりそうだ。
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