終業式~不登校息子の通知表~
今日は公立学校の終業式(この地方では)。このところ学校に行けていない不登校息子にも、しつこく今日だけは出ろ、進路希望の用紙を提出しろ、と言ったけど、昨夜はやはり丑三つ時近くまでゲーム三昧。今朝も何度も何度も、息子の大好きなSMAP中居クンが「車検にタクシーで行っちゃったんだって」なんていう話も耳元で囁き、仕事の合間を見て電話もしたのだが、結局起きられたのは昼過ぎだったようだ。
それでも「一応今日は行くわ」と、出て行った。
で、通知表をもらい、夕食前に私に見せた。
1、2、1、2… 行進かよ、という数字が並んでいる。涙が出た。
こんな数字、ギャグ漫画でしか見ることはないだろうと思っていた…というのもあるし。
これまで授業は出ないわテストは受けないわ、という状態で、通知表なんか見ても、斜線(評価不能)が引いてあるだけだったのが、一応数字が入っている!
ていうのもある。
受験直前で、こんな数字で喜んでいる場合ではないのだが、まあ、今学期はなんとかテストが受けられた。よかった。
☆
さて、息子は「オタク」な母親である私を激しく愛しているが、普通の母親である私は殺したいほど憎んでいる。
「勉強しろ」「学校へ行け」などと普通の事を言うと暴れだすが、アニメやゲームの話をし始めるとトイレにまでついてくる。
そんな親子ではあるが、ニュースやワイドショーなどを見て、社会の事を話すこともある。
最近の社会問題といえば、「少子化」「二極化」「モラルの低下」「社会保険など、福祉の不安」…などである。息子がそういう話題に、こんなことを言い出した。
「社会主義の方が、正直よくね?」
それは極論かもしれないが「ああ、かつて景気の良かった日本は、『世界で一番成功した社会主義国』などといわれていたんだよね」と答えた。
一応、民主主義国家であり、戦後のほとんどを自民党が支配したわが国ではあるが、戦中の反動とばかりに社会主義、共産主義が強くなり、弱者を保護し、いろいろな面で国が規制していた。社会は安定し、国民の多くが「中流」意識を持てた。とにかくこつこつ働いていれば、結婚し、子供を育て、社会に貢献したあとは豊かな老後をすごす、という生活設計が、ほとんどの国民に持てたのだ。
ついでに、日本では言論の自由も保障され、今も社民党、共産党ががんばっていられるが、自由の国アメリカでは共産主義が厳禁だという。真の自由の国は、日本だろうw 冷戦時、多くの社会主義国家は独裁者による恐怖政治に走ってしまったが、日本は実にうまくバランスをとりながら進んできたと思う。
が、今はそうではない。まず雇用の不安が大きい。昔は工場でも事務でも、ちゃんと生活が保障されたが、今は正社員として働くことが本当に困難だ。
私は、破格の時給と待遇の「レジ」の派遣社員の経験があるが、試験を受けに来る人に男性が多いことに驚いた。レジなんて、育児を終えたおばちゃんが「生活費の足しに」する仕事だと思ったのだが、学校を卒業したばかりの若く美しく賢い女性はもちろん、若い男性も多かった。
が、派遣社員として、パートさんよりはるかに高い時給をもらえても、「将来」はまったく見えない。時には、正社員の頃よりも高い月収が得られたのだけど、3ヶ月先も見えない、日雇いにも等しい世界だった。派遣同士のつぶしあいもあったし、パートのいじめもあった。そしてひとつでも悪口を叩かれれば、明日はない。
パートさんとしては、同じように正社員並みの仕事をしているのに高い時給をもらう派遣が憎らしかったのだろう。が、我々は、どんなに時給が安くてもパートさんのほうがむしろうらやましかった。そこは組合が強く、社会保険が充実しており、長い目で見ればパートさんのほうがまだ、ゆとりある生活ができそうであったのだから。
派遣には、一定の条件を満たせば社会保険に入れるなどの規定もあったが、結構難しくもあった。巧みに、その条件を満たさないように契約が切れるのだ。また、ちゃんと満たした人も、社会保険費用を天引きされてるのにちゃんと手続きされていなかったり。そうこうするうちに「パートにも月収8万以上で社会保険を」などと報道されるようになって、急遽扶養家族としての就労希望者以外がばっさり切られたこともあった。30歳で働く、昔なら才媛として十分な仕事に就けそうだったミセスが、よく私にこぼしていた。
「夫の収入では、とても出産育児はできない。私が働かないと生活もできないのに、幼稚園や保育園では母親が役員をするよう言われたりするんでしょ?生みたいのに、生めない…」
彼女も当時月20万くらいの収入があったと思うのだが、夫の収入も大して変わらないのだと思う。もしかしたら、夫も明日をも知れない、バイトとか契約社員とかいう立場かもしれない。家賃だって払わなくちゃいけない身で、まじめに働く若い世代は、今は子供を生もうにも生活設計がたたないのだ。
「正直、女性差別だとかなんだとか運動したのが悪かったんじゃね??差別でも何でも、昔の方が良かったんじゃないの?」
うわ。女性の私としては、それにはすぐに賛同しかねるが、わかる部分もある。ていうか、息子、本当に先日「いい国作ろうキャバクラ幕府」で私を絶望のどん底に落とした息子か。
「差別は、よくない(キッパリ)。 多様な人生があっていいと思う」
「でも、男と同じように働きたいって言ってて、結局『働かなくちゃいけない』ようになったんだぜ?今の女は」
本当にこいつ、十代か。
彼が棲むネットの世界は、今極右寄りだ。嫌韓サイトなども、見たという。おそらく学校では習わない近代史を知っていることだろう。
が、意外と冷静にものを見ているなと思う。ネット漬けで洗脳されているだけなら、先の「社会主義のほうが」発言はなかっただろうし、「男女平等主義がよくなかった」というのは、多くの識者が思っていても、今そうそう言えない事だ。以下、超親バカモードに入らせていただくが、息子はやはりバカだが賢い。もう少し知識をインストールしておけば、ディスカッションを試験に採用する学校など、軽く突破できたのではないか。
いや、受験より何より、もっと上を目指してほしいと思う。息子はおそらく発達障害だが、発達障害者にしかできないことも、あるはずだ。
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