娘の悩み相談~とはいうけれど~
「最近、先公がうざい」
あら、また変な妄想が姿を現したわ、うちの愛娘ちゃんが、そんなはしたない言葉を使うはずがないのに…と、一瞬めまいがしたが、娘は続けて学校での悩みを打ち明けた。
前にも書いたかもしれないが、娘のクラスにはQちゃん(仮)という子がいて、この子が少々困った状態なのだ。私はこの子は直接知らないが、お母さんとは低学年くらいの頃にお付き合いがあり、中学年の頃、「娘の行動に困っている」と、保護者会で涙ながらに訴えていたのを記憶している。詳しくはわからないが、急に乱暴になったりして娘の言動が理解できない、夫が単身赴任で私は孤独…ということであった。
うちの家庭事情に比べればはるかに普通の、反抗期かなにかの悩みに思えたのだが、今日の話を聞くと、ちょっと印象が変わってきた。娘は激高する。
「先生は、えこひいきする!Qちゃんが悪いのに、私ばかり叱られる!」
Qちゃんは、たしかにいろいろ困った行動が特に目立ってきたようだ。授業中、おとなしい子にちょっかいを出して困らせたり、人の持ち物を平気で持ち出して人に貸したり。「みんなあの子を嫌っている」というのだが、娘と、その友人は一方的に気に入られているようで、何かとくっついてくるらしい。今日の午後は、向こうから一方的に遊ぶ約束をしてきたのに、午後電話を入れると留守だったようだ。それでぷりぷりし始めた娘の怒りの矛先は、なぜか担任の先生だったのだ。
娘は時折大人もどっきりするほどずばりとものをいうタイプ。小さな頃からはきはきと弁が立ち、誰も勝てないくらいの気の強さを持ち、常にリーダー的存在であった。が、高学年にもなると、他の子も素直に従うこともない。「何、一人でいばってんの」などというやっかみもあるのだろう、いろいろ娘には不満なこともあるようだ。
ことに、Qちゃんに対する態度について、先生からも「言葉がきつい」などとたしなめられることが増えたようだ。「みんなだって、Qちゃんが嫌いなの。他の子も、やっぱり『Qちゃんばかりかばって、こっちが叱られた』って、怒ってる」「そりゃ私もきつい言い方したかなあと思うこともあるけれど、でも、何度言ってもAちゃんの消しゴムを勝手に持っていて、Kちゃんに貸すんだもの!」「先生は、いじめは、『いじめをする方が絶対に悪い!』って言う。えこひいきする先生になんか言われたくない!」娘は、涙をためて言う。
こうなると、ひとつの構図が浮き出てくる。Qちゃんという子がいる。ちょっと変わったこの子を、みんなはあくまでも善意で、きつく言う。先生はこれをいじめと捉え、Qちゃんを守る。いじめの急先鋒は、うちの娘ということになっている。
たぶん、どこでもこんなことがあるのだろうと思う。「いじめる」側には、罪悪感なんかなく、それなりの理由がある。いじめられる側も不快であろうが、いじめる側にも言い分はある。もちろん、いじめられる側にも、どうにも仕様がない部分というのがあるのだと思う。Qちゃんは、いわばうちの息子や、かつての私のようなタイプの子なのかもしれない。もしかしたら、すでに何かしらの病名がつけられているのかもしれない。それで、先生がその子を守ろうとしているのかも。
そんなことを娘に話してみた。と言ったって、息子にも私にも正式な病名はないし、娘も兄をただの怠け者だと思っているので、わかりにくいだろうけど。
「普通に」できない人間の存在は、普通の人には不快だろう。いくら「普通に」できないと言ったところで、ほとんどの人はいずれは社会生活の中で「普通に」しなくてはならないのだから、「ちゃんとしなさい」と言われることは、むしろよい事ではあるのだけど。特にこじれると、それがいじめという問題になり、いろいろな悲劇を生むことにもなる。
娘としてはいじめっ子のレッテルを貼られ心外だろうが、私はなんとなくではあるが、Qちゃんの気持ちもわかるし、先生の立場もわかる…また、娘も今、「正しいと思うことをずばずばいうことが正しいとは限らない」ということを学ぶ時なのだと思う。
自分がよかれと思って放った言葉が、その人を死に追い込むということもある。
実は、私もおそらく一人は殺しているんじゃないかという傷がある。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今日は、昨日残った餃子の皮を使い、豚と生えびのあらみじんをあわせたニラ餃子を作った。贅沢のきわみであった。学校でも会社でも、ついでに家庭でもいろいろある親子三人だが、この幸せがいつまでも続きますように。
| 固定リンク
コメント