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2007年2月 7日 (水)

鏡を磨く男と会った

私は営業を生業としている。飛び込み中心、毎日数時間ウォーキングが出来る、素敵なお仕事だ。

で、歩いていればいろいろなものを見、いろいろな人と出会うわけだが、今日はこんなことがあった。

ほとんど空き地、という場所に一人の男性がいた。前に、ここに営業にきていたのだが、この寂れようは、もはや廃業したのかもしれない。
明らかにそのときにいた人とは違うのだが、私はその、80近い男性に声をかけてみた。
その男性は、木で出来た手作りの機械のようなものを操っていたが、私に気づくと、「まあ、座ってください」と招き入れてくれた。
やはり、ここは廃業に近い状態で、私の仕事はそれで終わったも同然だったのだが。
話をするうちに、彼が行っていた作業の話題になった。

「望遠鏡の部品を作っているんだよ」
「レンズですか」
機械の動きから、とっさにそれを思い浮かべたのだ。
「いや。鏡」
「天体望遠鏡ですか?」
「そう」

彼は、恐らく「日本で唯一の、趣味で天体望遠鏡の鏡面を作る人間」と名乗った。
機械は、素朴で単純ではあるが、よくできていた。彼は鋳物もするし、かつては手で鏡を磨いていたという。
「人間の手でやることを、機械にやらせたんだよ」枠は、ただの木材だし、部品も木を彫って作ったものがある。水で溶いた磨き粉を、手順に従い徐々に細かいものにしながらかけてゆき、ひたすら、なめらかにしていくのだという。
天体マニアという人に、じかに会うのは意外と初めてかもしれない。この方、世界初の人工衛星スプートニクを観察して新聞社に情報を送ったり、プラネタリウムの解説を行ったりと、幅広く活動しているそうだ。
ひたすら、鏡を磨く機械を見て、質問してみた。

「魔鏡も作れるんじゃないですか?」
「作れるよ。魔鏡作るのが目的じゃないんで、作らないけど」
彼は、ちょっと奥に行って、書物を出してきてくれた。無造作に積まれたその本には、魔鏡についての論文(英語)が載っていた。

魔鏡というのは、一見普通の、金属を磨いただけの鏡なのに、光を当てて壁などを照らしてみると、文字や像が浮かび上がるというものだ。
有名なものは「かくれキリシタン」のもので、マリア像や十字架が浮かび上がる。普段はただの鏡や、ご神体ということにしておいて、キリシタンが集まればマリア像を拝む、という昔のからくり。ちょっとしたロマンだ。

「江戸時代の鏡とかも、作れるわけですよね」
現代の鏡は、ガラスの裏に銀(あるいは銀状のもの?)を塗るが、私は昔使われていたという金属の鏡に憧れがある。あまり映りは良くないだろうが、それでも昔の人々が日常使い、恐れていたものだと思うとわくわくする。
でも、博物館などで見る古い鏡は本当に劣化してしまって、これでは紅ひとつ塗れまいと思うのだ。
「いや、江戸時代の鏡はめっきだから、違う」え、江戸時代の鏡はめっきしてたんだ!
「めっきの技術は、古くからあるからね」
アマルガムを使った金メッキなら、奈良の大仏にも施されているけれど、電気めっきなのかなあ…
宇宙の話も鏡の話もとてもおもしろかったが、仕事中なので、ここでゆっくりしているわけにもいかなく、そこで失礼した。

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