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2007年3月26日 (月)

エマ8巻発売~すみずみまであたる灯り~

7巻で完結した「エマ」が、番外編だけで続刊刊行!というわけで喜び勇んで買いに行った。

「エマ」は本当に愛される漫画だ。我が家は年齢も性別も違う熱心な漫画の読み手がいるが、全員熱をあげるという数少ない作品である。19世紀イギリスの労働者階級を中心に、どこまでも風俗にこだわり、どんな端役にも愛情を注いで描写する細やかさは今新鮮。主軸のエマとウィリアム以上に周辺の人々が魅力的で、本編以上に楽しめてしまった。

とある若夫婦の万博の思い出。失意の令嬢のバカンス。「新聞」を中心とした、たくさんの人々の物語。「うっかり」がぬけないメイドの家族。
どれもどれも素敵。古い階級社会の名残と、新時代の予感の空気を、ともに味わうような喜び!ことに「The Times」は秀逸の短編。あんな端役たちにもスポットを当てるかと言う驚き。読むにしろ使うにしろ、「新聞」の担ってきた役割と、それをめぐる人々への暖かいまなざしがうれしい。「エマ」をこれまで読んだことのない人、漫画は子どものものと思う人にも素直に勧められる。

私は、エマとウィリアムズ・ジョーンズの純愛の障害になる役どころの子爵令嬢エレノアと、彼女を異常なほどに溺愛するモニカ姉さまが大好き! 恋敵役でありながら、なんとこの令嬢の愛らしいこと。恋する少女の純粋さに魅了され、彼女とウィリアムの婚約披露パーティの場で、運命の皮肉でエマと再会してしまう…というベタベタな恋愛ドラマにも、エレノアかわいそう!モニカ姉さま怖い!と、そっちの方ばかり考えてしまった。これも作者の戦略か。感動!奇跡の再会!以上に彼らが背負うあれこれに思いをめぐらせ、基本的に平等で自由な世界に住んでいる読者にもその純愛の困難さを理解させる…。名も無い使用人にもしっかりスポットをあて、綿密に「時代」を描写してこその、あのベタなシーンだろう。本筋は本当に何のてらいもなく、きっと100年前でもありふれたものなのなのに、これだけ現代人の心にむしろ新鮮に映るとは。
時代考証にこだわること。その時代に愛情を持つこと。
作者の豊かな知識と愛情が、その「時代」を蘇らせた。そんな感慨が沸き起こる作品である。

ところで、この8巻はDVD付の特別バージョンと通常版がある…と、エマひいきの漫画専門店のたて看板で知り、その「エマ」への愛情に感銘してぜひ8巻特別版をその店で買おう!と思っており、艱難辛苦を乗り越えて来店したのだが……何も情報なく、ただその店の熱いPOPだけで行ったのだが…

表紙が本気で2種類ある。

ビームコミックス エマ 8巻(通常版) Book ビームコミックス エマ 8巻(通常版)

著者:森 薫
販売元:エンターブレイン
Amazon.co.jpで詳細を確認する

これは、通常版。この若夫婦が誰で、どんな物語があるのかはぜひ読んでいただきたいところだが、とにかく私はエマが出てきたあたりでぼろぼろ泣いた…。嗚呼、素晴らしき哉パリ万博!

で、特別バージョンは画像とれない…もちろん、私は購入しているのでスキャンしてお見せすることもできるのだけど、アフィリ出してない限りは、今やっぱり見せられない…ごめんなさい…

まあともかく、このパリ万博を見に行く若夫婦か、「リーズの結婚」のリボンを編むように舞い踊るあまたのメイドさんに萌えるか。ああ、なんとかあいらしいメイドさん…清楚な黒で、長いスカートで慎み深いメイドさんが、かあいらしくリボンにぶらさがる……   ぶふぉぉお…

「『エマ』なんて飾りです」といわんばかりのこの一冊。名著に輝くことは間違いない。

で、メイドさんとレア度に惹かれてDVDつきバージョンを買ったけど、読むと通常版も欲しくなる…最近の出版界って、あざといですよ……

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