息子の独自の倫理観~やっぱりお金を盗む気だったか~
子どものお小遣いというのは、各家庭でいろいろルールがあると思う。
お手伝いなどをしたらあげる、という家庭。反論もあるだろうが、等価交換、勤労の代償として代価を得るということを学ばせたいという考え方はある。
多いのは、毎月一定額を与える家だろうか。それも、多目に与えて文具や昼食代などの経費もそれで賄わせるところや、そういう経費は別途にして自由に使える純粋な額を与えるところが多いだろうか。
私は、お小遣い帳をつけさせ、お小遣い日に提出するシステムをとっている。私もそうだが、息子がそういうことが非常に出来にくい性質だからだ。
息子は自分のものの管理が極端に出来ない子だ。失くすし、壊す。部屋は散らかり放題だし、時折誰のものかわからない制服や玩具が見つかる。
また、決められたルールが守れない。自分が納得すればむしろモラルも高く、しっかりした子なのであるが、自分が納得できないことには絶対に従わない。独自の倫理観を持っており、「俺が必要ないと思うから」という理由で、他の子たちがやることを絶対にやらない。小学校まで不登校にならなかったのは、周囲が息子に合わせてやったからだ。それはありがたい面もあるが、それでは息子は永遠に社会のルールに従うということをせず、独自のルールで動くことになってしまう。
それでは、社会人としてやっていけない。
俺ルールで周囲が動いてくれるわけがない。こういう性質の子には、「みんなと同じにする」などという当たり前のことが一番難しかったりするのだが、それでも「決められた時間を守ろう」「出せといわれたものは出そう」とか、きちんと教えてやらなくては、どこまで偏狭な人間になるかわからない。
そういうことを学べるようにと、幼少の頃から「お小遣い帳を提出しないと、お小遣いは無い」という、厳格なルールを敷いてやってきたのだが…
「不登校君は、『困る』ということができないようですね」と、最近臨床心理士さんに言われた。なるほど、と思った。普通の子なら、困らないように言われたことをやるのだが、どんなに怒られても、周りが迷惑だと言っても、「困る」ということができない。お小遣いがもらえないのは困るから、ときちんとお小遣い帳をつけたり見せたりできない。中には親に知られたくない出金もあるのだろうが、それを適当にごまかして報告するという悪知恵も働かない。「うそも方便」というようなことができないのだ。
一方しれっと嘘をつく能力もある。息子はお小遣いをもらえなくても、親の金を盗むことで問題を解決するようになってしまった。彼の言い分は「お小遣いをくれない親が悪い」であり、自分は正当。お小遣い帳はいつも紛失するが、自分はちゃんと置いているのに無くなる。だから自分は悪くない。お小遣い帳が無いというのに、新しく買わない親も悪い。部屋の片付けはしない。する必要もない……である。
以前に息子対策にバッグを買い、鍵をつけたと書いた。しばらくは大人しくなり、おじいちゃんの仕事を手伝ってお小遣いを貰ったり、私もあまり締め付ける一方ではいけないと「とりあえず残高を計算して出せばいいよ。これからはきちんとしようね」と、お小遣いをあげた時期もあったのだが、最近やはりお金の減りが異常に早い。また、昨日の額より、明らかに2000円少ない!と気づくこともあった。
失望した。息子は、やはり成長していなかったのか。
よく調べると、鍵を閉めてはいてもファスナーは拡げられ、腕一本くらいは入れられるようだ。そうなれば財布や、お金を抜くくらいはできてしまう。本来は、たとえお金がむき出しであろうとも手を出すものではない、と教えたいくらいだが、息子は「俺ルール」で「とれるものはとってもいい」と解釈してしまうようだ。取れないようにしたものを取れれば、それはゲームをクリアしたご褒美のようなものくらいに思っているのだろう。
そこで私は、布の巾着袋を買ってきて、それに財布を入れ、バッグの中に入れた。その作業を何気なくしていたが、息子はそれを見てぴんと来たようだ。
ばれた。やられた。あれでは、お金を取れても元通りに巾着を閉めることはできない、と。
…昨日から息子が必死でお小遣い帳システムの撤廃を求めてきた。ようやく、息子は「困る」ことができたようだ。このようにシステムの見直しを求めるのはまだ、前向きな問題解決方法だ。私は、小遣い帳はない、システム手帳もとうに失くした、などという話を聞いてはやったが、ますますこのシステムを続ける必要を感じる、と答えた。お金についてきちんとしていること、管理能力があること、ルールを守ることができなければ、社会に出てから確実に大変なことになるのだから。
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テレビで、小学生を殺害した元塾講師側がアスペルガーを理由に減刑を求めたというニュースをやっていた。気分が重い。これでますますアスペルガーが叩かれることになりはしないかと。
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