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2007年3月22日 (木)

美術鑑賞と観光で息子の容量オーバー!~って、よくわからないのですが…

野田市の報恩寺ですごい美術展をやるというので、元不登校息子とでかけた。

きっかけは先月だ。タウン紙の広告で、素晴らしい絵とともに、この美術展のことを告知していたのだ。Issonn_1
田中一村の蓮の屏風絵。この絵と、お寺が無料で有名作家の美術品を公開しちゃうというのにオタクな息子が萌えた。念のため、この絵には美少女はいない。双子でもない。ツンデレでもない。

いやあ、本当にすごい美術展だった。こんなに贅沢な作品群を、無料でお茶の接待つきで一般庶民に見せてくれるなんて驚いた。おかげで、日ごろ漫画、アニメ、ゲームなどにしか興味を示さず、学校にも行かなければ秋葉原やコミケにも一緒に行くことがない息子が朝早くから遠出したし。息子なりに芸術に興奮しているのを観察もできた。横山大観、池大雅、谷文晁、板谷波山、高村光雲…などという、「何でも鑑定団」で庶民もその名を知るような一流作家がずらりの中で、普段同人作家に恐れ入っても、あまりそういう有名作家に恐れ入ることのない、オタクな息子がとくに興味を示したのはこういうものだった。

田中一村。これは息子もとても楽しみにしていたのだが、とくに揚羽蝶を描いたものに感動していた。筆致、色彩、構図の妙。私もこれは感動した。後の奄美大島時代にも通じる視点を感じる。花鳥風月はどの作家も描くけれど、虫を描くことはたとえ蝶といえども少ない。精密にして玄妙。そこに息づいて風に吹かれているような風情に親子して心を奪われた。

棟方志功。なぜか孔雀を描いた屏風に特に関心を持っていた。力強く、荒っぽい筆致と色彩がよいらしい。
加山又造。ことに金彩、銀彩の桜の絵で、銀が酸化して変色しているのに強い関心。「酸化を見越して作っているのがすげえ」「この花は、年月を経るごとに枯れてゆくのか」「この額の中の酸素は…」とひたすら銀の化学反応に興味がゆく。
欄間。お寺の本堂の欄間の素晴らしいことに気づき、感動。また室町時代の弘法大師や、平安時代の観音像などに関心。
関口正男。超ビッグネームだらけの美術展では知名度が劣るかもしれないが、こちらのお寺はこの人の作品のためにすごいホールを建て、いくつも作品を飾っていた。「でけえ」と息子はため息をついていたが、サイズもでかいがそれ以上の「でかい」ものを感じたのだという。それがどういうでかさかは、自分でも表現しきれないようなのだが…宗教画の方面、結構好きなのかもしれない。
川端康成。『雪国』のあの有名なフレーズを短冊に書いていたが、「すげえ親近感を感じる」と息子大うけ。「書」の名品はこの会場にいくらもあり、文句のつけようがない完璧な空間処理を見られたのだが、こちらの先生の書は、最初大きくだんだん「書ききれない」と思ってか小さくなり、また「しまった、署名のスペースがないや」と思ったのか2行目、徐々にゆがんでいく。「昔の人って、みんな書がうまいのかと思ったけど、そうでもないんだな」「しょうがないよ、原稿用紙に書くのが本業だし」と適当なことを言ってしまったが、鋳造を生業とする作家、政治家として有名な方などにも素晴らしい書を書く方は大勢いる。ただ、この短冊を見ると書きなれない印象を感じるけれど、文字そのものには大変味わいがあり、「川端フォント」があればいいなあなどと思ってしまった。

このお寺の裏手はキッコーマンの御用蔵と排水処理場になっており、息子、その風景にも大変感動していた。御用蔵はお堀の中に浮かぶお城のようで風光明媚。処理場は、今日は轟音をたてて水を処理しており、これがまた絶景。そして気候によっては富士山も拝めるという江戸川の景の見事さよ。
その足で、キッコーマンを支える名家のひとつ・高梨家の「上花輪歴史館」を訪ねる。500円の入館料はかかるが、見所は多い。木や苔、硝子にも息子感動。また、おそらく当主?の方など多くの方が喜んで解説してくれた。
私は仕事の関係で何度か野田を訪れたため、結構絶景ポイントを知っている。それで軽くそこを紹介しながら歩いたのだが、息子はものすごく感動していた。「野田、すげえ!」
すごいだろう。「ここでちょっと振り返ってみ」「そこは、一応一般のお宅なんだけどね…」と案内すると「すげえ!」「ちょwwwこれで一般のお宅って、俺どんなにみじんこの生活してるんだよwwww」と本気で興奮している。野田の市街は、江戸、明治、大正、昭和、平成の建築物が一気に見られる建築物のデパートだ。昭和初期の建物が見られたかと思うとそこにファンタジー漫画家ますむらひろし氏の壁画が広がっている。ガラス張りのキッコーマン本社脇を曲がると、ロケにも使われるという黒塀があり、レンガの塀があり、板塀のお宅が続く。大正時代の給水塔が聳え立つお向かいには、これまた風情満点、四季折々に美しい景を織り成すお屋敷がある。芝桜はまだまだこれからというところだが、それでも十分美しかった。そのそばには、キッコーマンの茂木家が惜しげもなく美術品を見せる美術館があるし、「いやいやまだまだ」と連れていたのは「市民会館」。いや、「市民會舘」。「はい、これが市民會舘~」と見せると、息子は腰も抜けんばかりに驚いた。「なんか、違う!」続いて隣接する郷土博物館に行こうとすると、息子は悲鳴をあげた。

「もういい!野田すごすぎる!ひとつひとつが2ギガくらいある!もう俺、何言われても入らねえよ!」

息子の言い分はこうだ。東京の秋葉原とか、コミックマーケットとかも魅力的だが、それらもひとつひとつは何キロバイトか、というレベルだという。修学旅行で京都奈良も行った息子だが、野田はとても自分のスペックでは計り知れない!というのだ。面白い表現をするなあ。私としてはもっといろいろ見せたかったが、息子はパニックを起こして大声で騒いでいる。大体、娘へのお土産にと和菓子屋に寄っても息子は天地がひっくり返るほどの衝撃061231_005 を受けたのだ。

「のだれーぬ」って……w

息子、これだけでも窒息しそうなくらい興奮していた。ところが家族へのほんの数百円のお買物客にもこの店は、お茶と最中を出すのだ。「こんな安い買物だから」と固辞したのだが、「お茶だけでも」「お菓子はぜひお持ち帰りを」と勧めてくれた。お昼を食べたとんかつ屋にもいろいろ感動していたのだけど、息子にはこの町のすべてが新鮮で感動的だった。「野田、すげえ」うん、私もそう思う。だから、この町に連れてきたかった。

近々、息子はかなり有名な精神科にかかる。

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