娘が読みたがる「銭」~さすがは欲望でできている女
娘が先日、だだをこねた。
漫画好きのアニメ好きのゲーム好きの、という我が家だが、年齢や性別により微妙に嗜好は違う。私は懐古主義で、新作でも大人に人気の有る漫画が好きだし、息子は「萌え」傾向が入る。娘も古い漫画を好んでいたが、最近では「りぼん」とか「ちゃお」とかのローティーン向けや、BL風味のものを好む。
ところが、その娘が本屋で声を荒げて欲しがったのが、鈴木みそさんの「銭」なのだ。
鈴木みそさんというと、私はファミ通の業界ルポ漫画で知り、その後化学式の学習漫画も愛読した。具にも着かない学習漫画の中では異質なほど、よく咀嚼されておもしろくわかりやすい。学習漫画としては異質なほど、素晴らしくエロいのも特筆すべきだ。
その素晴らしいルポライター的センスで経済をときにえげつなく、ときにハートウォーミングに描く話題作。それが「銭」である。
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銭 四巻 著者:鈴木 みそ |
幽霊たちが現代日本をさまよいながら、「銭」をテーマにいろいろな業界と、人々を観察する。語る。生々しい経済学であるが、そこに救いや解決法を示唆してくれるところもよい。かといって、「いい子」に収まってないのもまたよい。うちでは3巻まで買っていたのだが、なんとしても続きが読みたい!と娘がだだをこねたのだ。
「あたしの85パーセントは『欲望』でできているの」
と小学5年のときに言い放った娘は、たしかに欲深く、お金が大好きな女である。
まだほんのよちよちの頃であった。祖父母といっしょにドライブにでかけ、昼食をとろうとレストランに入った。娘は車の中ですやすや寝入ってしまい、座敷に入ったあとも何度も揺り起こしたのだがまったく目を覚まさない。仕方なく食事を済ませ、父がお会計をしようと財布を出した時、チャリチャリという小銭の音に突然娘がむくりと起きたのだ。
また、しまじろうくんの本を見せたときだ。「3と5、どっちがおおい?」と、正解をたどるとゴールにつけるゲームがあった。お兄ちゃん(アスペルガー)はこういう問題は幼い頃からすらすら解いたのだが、娘は「????」と首をかしげる。さっぱりわからないらしい。「じゃあ、チョコレート3つとチョコレート5つ、どっちがほしい?」というと娘は目を輝かせ、そこから娘の「さんすう」は始まった。
幼稚園の頃から、特にお勉強ができるというわけでもないのだが、一緒にスーパーに買物に行くと、やけに「お釣り」を計算するようになった。893円のお買物でママが1003円出すと…と、お金の計算だけは大好きな子になった。
その娘が、日ごろ顔の半分くらいが目というような漫画を好んでいる子が、「銭」を読みたがる。
頼もしいような、末恐ろしいような。
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