息子のリュック~これを持ち歩くのは普通だろうか~
息子はいつも、ずっしりと思いリュックを背負っていて、どこに行くにも手放さない。「必要なものだけ持てば良いじゃないの」と言うと「全部必要なんだよッ」と声を荒げるが、一体何が入っているのか、私も確かめたことはなかった。
それを確認する機会があった。息子が、病院で保険証を出そうとしたときのことだ。「あれ…無い」たしかに財布に入れていたという保険証がないという。「落ち着いて探しましょう」と待合室の椅子に座り、まずは財布からじっくり探す。
私の財布も中身の薄さに比べてものすごいボリュームになってしまっている。多くのクレジットカード、会員券、ポイントカード……時折整理しているが、どんどんそれらは増えていき、財布を膨らましてしまう。
だが息子の財布から出てきたのは遊戯王とか、何かの美少女とか、そういうカードの数々だった。「そんなの財布に入れてるの???」「お守りなんだよッ……ほれほれ見てみ。これなんかさあ」いや、カードの自慢はいいから保険証探して。
財布には無い、という結論に達し、リュック全体をあけて調べることになった。どさっと出てきたのは「ニニンがシノブ伝」などの大判コミックスの数々だ。そんなに持ち歩いて読むのか。さらにゲームソフトのケースが4本ほど出てきた。私は携帯ゲームは1台、ソフト1本(DSの場合は2本)入れて歩けば、電車の中などで十分時間はつぶせると思うのだが……
やけに大きな筆記用具入れ。いろいろなパンフ。下敷きもどっさり入っている。前も通学かばんの中に教科書は一切無く、山のようなアニメ下敷きが詰まっていて驚いたけど。
そして私の目を引いたのは2本の「めん棒」だった。私がその信仰心をもってそれは何かと聞くと「マイ太鼓のばちだよ」と答えた。「そんなものまでもって歩いているのか」と呆れると、「何言ってんだよ!」と彼は激高した。
「そんなの普通だろ?UちゃんもQも持ってるよ!10人に1人は持ってるものだろう!」
すごい衝撃だ。今、日本では太鼓の撥を持ち歩くのが普通なのか。10人に1人。1クラスに3人。東京ドームに5000人。夏と冬のビッグサイトには1日2万人か。
「私の会社には、どう考えたって1人もいないと思うのだけど。本当に10人に1人くらいいるものなのかしら?」息子は少し考え、だって、あそこでも、ここでも見たんだよ、と近隣のゲームセンターなどの名をあげた。そりゃあ、「太鼓の達人」のあるところには、そういう人が来ることもあるでしょうよ。しかしそこにだって10人に1人はいねええ!
「今日、ここの病院の予約患者数は約3500人だそうだけど、そのなかで何人くらいいると思う?」「……1人」
まあ、そうよね。大体病院にそんなものもって来てどうするのよ、と言ったのが気に障ったのか、待ち時間の間ばちを出してぽこぽこ練習し始めた。精神科なので、あるがままにしておいた。
| 固定リンク
コメント