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2007年11月19日 (月)

息子にカーディガンを着せる~普通はそれだけで日記になんかならないが~

今日はこの冬一番の寒さであった。

私は、裏起毛のスラックスにセーター、そして買ったばかりのコートにマフラーで、それでも夜には震え上がった。先週のぽかぽか陽気からこれでは、体調管理が大変である。

で、年寄りの私よりも大変なのが子どもたちだ。「制服」というものを着る彼らであるが、最近の子はコートというものを着ないらしく、マフラーやカーディガン、ババシャツ、はにわ(スカートの下にジャージ)などで体温を確保するしかないという。

というのが、私のテレビなんかで得た知識。秋の衣替えで、「校則や、先輩たちの服装を確認して。必要なものは買うから」と宣言したが、わが子たちの服装への関心のなさと、一方での異常なこだわりに悩まされた。

特に元不登校息子。アスペルガーであろう、という診断もされているが、本当に服装に関しては無頓着なのかこだわりがあるのかわからない子だ。中学時代はほとんど不登校(重役出勤)で、また父譲りで暑さ寒さをあまり感じにくいこともあり、あまり登下校スタイルで防寒を考えずに済んでしまったけれど、今年はそうはいかない。体温の逃げやすいブレザースタイル。それに朝早く自転車で出かけ、夜バイト先から帰ってくるのだ。寒い思いをさせてはならない。

「カーディガンとかマフラーとか、校則を確認して」

そう言ったのは、たしか9月下旬だと思う。10月に入ってずいぶんしてから、入学当時の資料を持ち出し、息子はこう言った。

「『ブレザー、ズボンなど、校則で指定された服装以外の着用を認めない』って言うから、全部ダメなんじゃね?」

そんなわけはない、冬には防寒が必要だろう、だからちゃんと先生や先輩に確認して、などと語りかけて約1ヶ月。ようやく「さみ」とか言い出した息子が、「うちの学校、なんでもいいと思うよ~?黒とか紺とかグレーとかなら」と言い出した。……のが11月中旬。やっと、仕事の合間に、安くて洗える黒のアクリルカーディガンを購入した。

「買ったよ~」

「ああ」

息子は、一瞥してPCやゲームに没頭した。

「『ありがとう』は?」

「ああ、ありがと」

で、カーディガンはそのまま放置。そして今朝、いかにも寒そうな天気予報に「今日こそ、カーディガン着なさいよ」と強く語りかけた。「……ああ…どこだ?」「あんたの寝床の下になってる。何度も、あんたの上に出したんだけど」「ああ」

寝ぼけ眼の息子も、ようやく動き始めた。顔を洗い、着替えの準備をし始めた。そこで、息子は衝撃的な言葉を発した。

「なあ……これって、どういうふうに着たらいいんだ?」

……思えば、私もカーディガンというものを、彼の前で着た事がないのかもしれない。某デパート勤務の時に、指定されたものを着たくらいか。カシミアアンサンブルなんていう奥様っぽいものも20年前から持っているが、それは出産してから封印されている。そして何より、息子はちょっとだけ、人と違う思考回路を持っている子だ。彼は、シャツとカーディガンとジャケットと、どういう順番で着れば良いのか、真剣に悩んでいるようだった。数学や物理は、砂に水がしみこむように理解できるが、「ダメ」なものは、油粘土が水をはじくようにわからない。そういう子。

「まず、ママがこの前買ってあげた冬用の肌着を着るんだよ」
「どこ」
「ほらここ」
長袖ウォームビズ肌着を渡す。「それから、Yシャツを着る」「うん」
「それからネクタイを締めて、その上にカーディガンを着るの」
「……」

息子は、ようやく納得したようだ。Yシャツの下に着るのかどうかと迷っていたのか、君は。普通の子は、そんな悩みを抱かないがな。ただ、同じくおかしい私にとっては、目の詰まった、けれど薄いワイシャツの下にカーディガンの方が、関東の空っ風に対抗して保温できるんじゃないかな~やらないけど。だ。息子は、そういうようなことを考えていたのかもしれない。

さらに私はこの、天才的なひらめきと、愚鈍な発想を持つ少年に釘を刺した。

「あ、ズボンははいてね。『アンタが言わなかったから、肌着、ワイシャツ、ネクタイ、カーディガンだけつけて(下半身裸で)登校しちゃったじゃねえええええかあああああ!』とか言うの、やめてね」

キレたときの息子の口真似で、言ってみた。寝ぼけ眼で不機嫌だった息子は、微妙なアルカイックスマイルを浮かべて固まりながら、なんか目をキラキラさせ始めた。私の言う自分像を想像して、おもしろかったらしい。ていうか、本気でやりそうだったのかもしれない。

玄関で「行って来ます」とか言う息子だが、案の定、肝心のカーディガンを忘れている。声をかけると「ああ~忘れてた。時間ね~~~」という。慌ててカーデガンを渡し、息子がかばんに突っ込む。「あ。まだ値札とか、とってないんじゃ…」「い~~よ!俺、カッターとか、デザインナイフとか持ち歩いてるから」「電車の中とかで刃物出すの、やめてよね」「出さねえよ!」「ていうか、今が一番必要なんだって!」「今日のバイト帰りが寒そう~~」

あわただしく、朝の会話が進んだ。息子、カーディガンと言うものを着用したんだろうか。午後、とても冷え込んだが、それで足りるんだろうか。母はあれこれと思案する。

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コメント

初めまして
闇鍋奉行さんのblogは、多くのテーマがそれぞれ興味深くて、以前から楽しく読ませていただきました。
今回、このきっかけで初めて書き込みます。

私が昔、通っていた学校の教師、非常に高圧的な人でして...。
白ワイシャツや学生服(ブレザーじゃなかった)は、学校指定の制服なので一定だけど、カーディガンやセーターは子どもによって微妙に違う。
学生服脱ぐこともあるだろうし、そうすると、セーターやカーディガンが「いちばん表に出る」。すると、

「表から見たところで、家庭の貧富の差が目立たないように」、という制服の意義が無くなるのは怪しからん!

という理由を建てまして...。

「カーディガン、セーター類は、ワイシャツの下に着ろ!」

というお達しを発せられました。アスペとかそういうの一切無しでも、
薄いワイシャツの下にカーディガンで関東の空っ風に対抗してた
子たちも実際にいたんですねえ。という、トンデモない思い出がよみがえりました。

はなっから長文コメント失礼しました。これからの記事も期待しております。

投稿: まーく | 2007年11月20日 (火) 23時22分

まーくさん、ようこそ!
「カーディガンをワイシャツの下に着ろ!」ですか!すごい学校もあるものですね。貧富の差が目立たないようにという配慮ですが……その前に、貧しい家には制服を自体をそろえるのがとっても大変だったりするんですけどw
安物着てる子、ブランド物着てる子がいてもいいんじゃないかなあ、と思いますけどね…しょせん人間、絶対に平等なんかじゃないんだし、みんな違うけど、だからと言って安物着る子を見下したりすることのないよう教育するほうがよっぽどいいんじゃないかと……
それはともかく、まーくさんのコメントを朝出勤前に拝見してなるほどと思い、今日薄手のフリース長袖シャツを息子に買ってきました。息子はマフラーが大嫌いで、このままでは本気で寒い日につらいので、これをワイシャツの下に着せようと。セーターだとちくちくしそうですが、これならいいかも。素敵な情報、ありがとうございました!

投稿: 闇鍋奉行 | 2007年11月21日 (水) 21時09分

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