起きられない息子にかみそりを
元不登校息子は、新しい学校に入って生まれ変わった。
周りの多くは、同じように中学でつまずき、不登校だった、いじめられっこだった、というような、でも根はまじめな子。なぜかここの先生方にも息子は大変評価が高く、ちょっと一目置かれてる?と親ばかにもそう思えてしまう。私自身もそうなのだが、「キミは一味違う」と、注目されると妙に張り切り、斬新な発想やらすごいがんばりを見せられる。逆だと、とことん病気になるまで落ち込むんだけど。
息子は、今はりきりすぎている。
頼まれたり、頼られたり、「自分がやりたい!」という情熱に駆られすぎている。
PCの前で、丑三つ時まで。
早く寝ろ、とか私にPCを渡せ、とか言ったって通じない。そうして朝、また起きられないことが増えてきてしまった。また、「人間時報」の生活だ。
「起きなさい、もう7時45分よ」「辛抱さんのコーナーよ!」「あら、テレビでこんな話題をやっているわ!」いろいろ声をかけているが、起きられない。声だけじゃ、だめだ。体に刺激を与えないと。そして私は、ほっぺを叩いたり頭をくしゃくしゃしたりしてみた。やはり、声だけだと「起こさなかったじゃねーかー」レベルだが、少し反応が違う。でも、目は開かない。
息子は部屋を散らかしまくり、今はリビングのソファで寝ている。あまりお行儀がよろしくないが、私もそのほうが息子を管理しやすいのでずるずると許している。リビングは東南に面していて、朝日が強く差し込む。みのもんたが、朝さわやかに目覚めるのに朝日の刺激がよろしいなどと言っていたっけ、という妄信もあり、カーテンを開いて思いっきり息子に朝日をあてる。
すると、目に付いてしまうのが息子の「ヒゲ」だ。
息子も一応男。日一日と男性として成長しているので、ひげもそれなりに生えてくる。その処理をさせるために、ガンダムつき髭剃りと、シェービング用のクリームやらローションやら与えたが、なんかあまり使いこなせてない感じ。こういうのって、男親に任せたい……と思うけど、うちの男親は家庭放棄しているので、私がなんとかするしかない。日ごろ、頬骨のあたりにそり残されている、3センチくらいの毛をつまみ「あ~このまま抜きたいわ」とか言ってたけど、それでも神経が行き届かない息子。
「剃る! もう、剃るからね!これじゃバイト先でも言われるでしょ!」
私はむにゃむにゃして目を開けない息子に宣言した。クリームと、髭剃りを用意。
「塗るよ~」と声をかけ、クリームを塗った。ひやっとして、いやでも目が覚めることだろう。そして、ガンダム髭剃りをあててみた。
剃れてナ~~~~~イ!
息子、髭剃りの手入れもよくわかってないのか、本当に限界なのか知らないけれど、息子専用ガンダム髭剃りは、さっぱり切れ味を失っていた。何度息子の頬を滑らせても、毛は空しく残る。
「あら、剃れないわ。ちょっと待って、新しいのを持ってくるから」うん、とかすかに息子がうなずいた。完全に寝顔だけど、聴こえてはいるようだ。
私の顔剃り用に買った、3本105円(税込)かみそりを持ってきた。ピンクの柄のやつだ。家族といえども共用はよろしくないので、今日からこのピンクかみそりは息子専用。
おお、よ~~く剃れる。頬骨あたり、あごの下。剃り残しやすいところもつるつるになった。床屋さんでも剃ってくれないような小鼻のあたりや唇ぎりぎりの産毛もしっかり丁寧に剃った。気持ちいい。
「剃れたよ~~さあ、早く顔を洗って、余分なクリーム落として~~」
と言うと、目をしょぼしょぼさせながら息子は起き上がり、洗面所に向かった。日ごろ、息子の洗顔ときたら「それは顔に水を塗ってるだけだろうが」レベルだが、微香とはいえ何か残っているのは気になるのだろうか、意外ときちんと顔を洗い、かったるそうな顔でも、一応着替え始め、ネクタイを締めている。
こんなことを2度やったら、なんか自ら「床屋に行く~」とか、「髭剃りの替え刃買って~~」とか言い出した。お肌つるりん状態を心地よく感じ始めたようだ。
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