娘がパパのコートを着た~癒えた傷?~
最近の中学生はコートを着ない、と思って子どもにコートを用意していなかったが、娘が突然登校途中に寄ってきて、「お古でもいいからダッフルコート無い?」と聞いてきた。
娘の周囲ではダッフルコートを着る子がいるようで、中にはママのコートをもらってくる子もいるそうだ。しかし、私の中高生時代はダサいスクールコートしか使えず、現存もしていない。しかし。
「パパのならあるけど……ダサいけど」「えええっ!?」
たしかに、パパの古いダッフルコートならある。ずいぶん子供っぽいデザインのものをスーツの上に着ていて不思議だったのだ。あれなら女子中学生にも合いそうだ、とひっぱりだしてきた。
フードの裏が赤いチェック。よくもまあ、こんなのを大の男が着たものであるが、娘は「そういうの着てる子もいるから校則問題ないよ」と試着。袖の長さもあつらえたようにぴったり。そのまま登校してしまった。
一応、娘にコートをあげてもいいかメールで聞いてみた。もう十何年も使っていないけれど。
件名:あんな
お前のキャンドルの火はまだ♪と歌いだしそうな返信が来た。
本文:ものでよかったらどうぞ
そう続くか。
☆
学校で娘は「お父さんのコートなの☆」と自慢し、驚かれたそうだ。「お父さん、こんなの持ってたの……?」という意味でも驚きだが、娘にとってパパの話題はなんとなく禁句、10年以上、ほとんど口にさえしていないんじゃないかと思われるのだ。
幼稚園の頃、仲のよいお友達が深刻な顔をして「おばちゃん、腐児子ちゃんが……」と話しかけてきた。
お友達は娘に何の気なしに「そういえば腐児子ちゃんのパパはどんな人?」と聞いたのだそうだ。娘はいつも明るく元気いっぱいの子であったが、そのとたん押し黙り、しおれるようにうつむいて固まってしまったそうだ。ほとんど家に帰ってこず、運動会や父親参観日にもきてくれないパパに、普段は何も言わなかったのだが当時から彼女の「傷」になっていたのだと思う。
娘に、パパのコートをうれしそうに着、自慢する日がくるなんて。
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