息子とモンハンについて熱く語る~朝日新聞「声」欄から~
8日朝日新聞「声」欄に、こんな投書が載っていた。(以下引用)
子どもの間違い 大人が注意を
(パート38歳)
小学4年の息子は携帯ゲーム機を持って友だちの家へ遊びに行くようになった。その目的は「15歳以上が対象とされるゲーム、と一ヶ月ほど前に知った。
息子に聞いた。「今、夢中になっているゲーム、15禁なんだってね。人を殺すゲームなの」。息子は平気な顔で答えた。「ぜーんぜん!ただ、猫とか切り刻むだけ」。私は「……」。そして、「できれば、やってほしくないな」。
子どもたちが夢中なのは、狩猟生活を体験するアクションゲーム。恐竜などを狩り、皮などはぎ取って防具や武器にするという。
背伸びをしてゲームで遊ぶ子どもが仮想と現実の世界を混同することもあるだろう。犬やネコなどの動物をゲームのように扱ってみたい、と考える子どもがいても不思議ではない。それに気づいた大人がその都度注意し、教えていかなければならない、と思う。
ソフト開発者の方々に、子育てをする親の一人としてお願いです。「売れるから」ともうけ重視の考え方はやめていただきたい。
これってモンハンかなあ?と、おぼろげに思い、息子に話題をふってみた。
モンハン。人気ゲームソフトシリーズ「モンスターハンター」の略である。私は未プレイだがおもしろいと大評判、PSPでは唯一ミリオン達成、街中でPSPを使っている人を見たらたいていモンハンだということだ。ひたすらモンスターを狩るシンプルさ。RPGにありがちなレベルあげなんていうものはなく、生きる為に身一つで巨大なモンスターに挑む。そういうゲームらしい。
「モンハンって、猫殺すの?」
息子はきょとん、としながらも説明し始めた。
ものすご~~~~~~く長い説明は割愛するが、要は貴重なアイテムを盗んで逃げる猫なら、追いかけて、倒すことがあるらしい。「けどあいつら死なないし。モンハンはコメディだ」
まあよかったわ。
この文章を読むと、私でさえ一体どんな恐ろしげなゲームが子供たちの間で流行っているのかしらと震撼してしまう。何度か息子に画像を見せられるなどしたが、猫はその世界のキャラクターでもあり、ものによっては共に仲間になることもあるらしい。巨大な蟹に、何匹もの猫がニャーニャーいいながらぶら下がってるムービーを見たときには、その可愛らしさと必死さに顔がほころんだものである。また、まるで残酷に小動物を虐待するゲームかのように感じられるが、基本は、プレイヤーが虐待されるらしい(息子談)。前述のように普通のRPGのように弱いモンスターを狩ってレベル上げして……なんていうことはできない。装備も大切だが、プレイヤーの腕一本で、豊かな生態系の世界を歩き、狩り、飽きるまで生きていくというものなのだそうだ。
実は私もこのゲームをやりたくて仕方が無かったりする。「狩り」は人間が何百万年も続けてきた行為だ。仏教のおかげで肉食が遠ざけられた歴史のあるわが国でさえ、細々と動物の狩りは行われてきたし、海での漁は盛んだった。時には、巨大な勇魚に命がけで挑み、犠牲を払ってでも貴重な蛋白源を得たのだ。そして、屠った命は肉、皮、骨、ひげなど余すことなく利用した。今自分が、鶏を飼って〆る毎日を過ごしたいなどとは思わないが、仮想世界で黙々狩りをするっていうのはなんだか楽しそうだ。人間関係や数字に追われる日々に、いいストレス解消に、また原動力になるだろう。実際、FF12なんかはやたら楽しいし。このゲームではハデに血が出るが(それで15禁か)、実際に誰の血が流れるわけでなし。しかし
「アンタには無理」
息子にダメ太鼓判を押されてしまった。そう、これはアクションゲーム。そのてが苦手な人間にはろくに楽しめない仕様なのだ。うまい人は、ろくに装備も無い全裸にブーメラン状態で渡り歩くが、キングダムハーツレベルがクリアできない私にはまず無理。
つまり、この投稿者にも、恐らくそのおもしろさはわからない、というわけだ。
私はこのお母さんの言うこともわかる。小学4年生の子が「15禁」に夢中というだけでも不安だろう。人間でも殺しまくるゲームなのかと問えば「猫を切り刻むよw」と言われれば、背筋が凍るだろう。モンハン仲間同士ならば、それは気の利いてる的軽い冗談で済むかもしれないが、猟奇殺人へつながるといわれる猫殺しを、子どもたちが楽しんでいるのかッそんなソフトがあるのかッとあれこれ悩むのも当然だ。そうなると、狩った獲物の皮をはぎ取って…なんていうのもいやに生々しく思える。自分が牛皮財布や靴を持っているのも忘れるほどに。
息子はこの投書の話に怒りだした。「は?バカじゃね???」
そして久々にモンハンソフトを持ち出し、私に「このゲームは、こういうものだ」と主張するのだ。いや、私に主張されても。
できることなら、このお母さんにわかる言葉と、紳士的な態度で、そのソフトの有用性を、投稿し返しなさいよ。プレイヤーとして。
昔、美少女エロ漫画を見て怒り出した主婦がいた。その主婦が「子どもたちが見る漫画から性的表現を排除せよ」と運動をし、本気で表現の自由が危ぶまれた時代があったのである。しかし漫画家、漫画の読み手など有志が団結し、その主婦らと対話をしつづけた。最終的にはその主婦も「今日本の漫画はとても多様化し、大人向けの表現があることを理解した」という話を聞いた。
今の「お母さん」世代だって、子ども時代に何度「PTA」に面白いものをいろいろ取り上げられたかしれない。危険なもの、有害なものから子どもを守ろうとする母親、仕事に夢中で、自分の子どもと共通の話題を失ってしまってる父親。子どもはいつもそんな親をうざがるけれど、それじゃいつまでたっても対話や理解は生まれない。親世代が、中途半端な知識で自分たちに擦り寄ってくるのが許せない、と息子は言うけれど、それじゃあんたたち子どもは、どれだけ親を理解させようとしているの。
☆ ☆ ☆
この親子の対話で息子が語った。それは、息子が引きこもり、暴れ、放火するぞと騒いでおまわりさんが来たときのことだと思う。
「警官うぜ。本気でうぜ」
その時は何も言わなかったのだが、私の目には親身になって息子に語らい、半狂乱の私にも「実はうちの息子もこうなんですよー」と語らってくれたおまわりさんの、こんなエピソードだ。
その時息子はたまたま名作シュミレーションゲームシリーズ「スーパーロボット大戦」をやっていた。おまわりさんは荒れた我が家に恐れることなく踏み入り、テレビ画面を見てこういった。
「スパロボかあ。なつかしいなあ」
その言葉に、ふと息子は振り返った。
「ラスボスの ま お う が強いんだよね」
すんごい中途半端な知識だ。なんだよそれ、引きこもりのゲーム好きのお子様にはその台詞でいけってでもマニュアルがあるのか。ドラクエもプレイしてない私でも、ちょっと暴れたくなるぞ。このロボットだらけの世界に、まおうwww。
これで息子は完全に心を閉ざし、世の中を恨んだという。
「wwwwwそれ、ものすごく笑えるwwwwあんた、すごいネタ仕入れたんじゃんww」
と笑う母も母である。あ、私か。私はこのゲームも自分で買って我が家に布教したのに、自分じゃ一切クリアできてないんだっけ。一番の目的であるハイネル様にも拝謁してないし、これは見ていいものかどうだかしらないけれど、「人間爆弾」も見てない。夫をこれで欝にしちゃったのに。で、思い切って息子に聞いてみた。
「で、スパロボのラスボスって、なんなの?」
息子がひるんだ。確かにクリアはしたらしく、デンドロビュームがどうのこうのと最終戦を語っていたが、どうにもラスボスの名前が出てこない。
「じゃ、まおうがラスボスでいいんじゃね?」
「いや、絶対、まおうじゃねええええええ」
引きこもり対応のお仕事は、表面だけでなく、本気でオタクな方にお願い。
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