娘と私の「羞恥心」~ダ・ヴィンチの謎~
テレビの特番で、レオナルド・ダ・ヴィンチを扱っていた。
今日は休日出勤で、夜7時くらいに帰宅。ごはんの準備をしながら「火曜日に休めるのはめったにないわ。何かお勧めの番組ある?」と聞いてみた。息子は、バイトである。
娘は新聞のテレビ欄を読み、夜7時からの番組を読み上げた。ああ、ダ・ヴィンチの特番、朝から何度も宣伝してたわね、と思いながら聞いていると、私の聡明な娘が何か言いよどんでいた。
「山口智子&あら……あらとしひろが発掘を目撃…????」
ん? 誰それ? とりあえず、そのチャンネルにあわせて、手が空いたときに新聞を見た。
「あら」って、荒俣宏じゃないか!
「あんた『荒俣宏』も知らないの?」ちょっとあきれた。ほかの女子中学生が知らなくても、うちの娘なら当然知っていると思った。
「知らない。それ、おいしいの?」
ちょっとふてくされた娘が答えた。
「ああ、番組で見られるから、どうぞ召し上がれ」
番組でご尊顔を拝した娘が、「要りません!」と叫んだ。
☆
さて番組が佳境に入り、稀代の天才ダ・ヴィンチと、ルネッサンスを代表する芸術家ミケランジェロの対決という話題になった。モロだしでも許される最高芸術ダビデ像を見て、娘が何か言い出した。
「あせった~~~! ヘンなことを考えたんで」
え?何、ヘンなことって。モロだしのダビデ像に、清らかな女子中学生がヘンなことでも?と聞いてみた。
「いや、違うの。この時代の双璧をなす芸術家って聞いて、あたしゴッホかと思ったのよ」
……それは恥ずかしいな。
私も歴史音痴の部類だけど、いくらなんでも時代が違うだろう。ダ・ヴィンチは、ルネッサンスとか言われる時代の人だ。それはなんとなく、現イタリアが文明の先端で、カトリーヌ・メディチとかいうお姫様が料理人を従えてフランスに嫁入りしたとかおかげで、フランス料理が洗練されたとかいう時代で、早い話がベルばらよりも前の時代だ。
ゴッホは、たしか日本の浮世絵に影響を受けた人だ。「ベルサイユのばら」が人形佐七捕物控と同時代、つまりゴッホはベルばらよりも後の人、漫画で言うと「エマ」の時代に近い人だ。ええと、5以上数えたり計算するのむずかしいけど、とにかく、何百年も違う時代だわ!
「時代が違うじゃないのw」
母の私は、「ベルばら原器」を以ってアバウトな年表を脳内に描き、あたかも賢い母親のように笑った。しかし、娘の答えは私の想像を超えることになった。
「いや、それ以前の問題で……」
え。それ以前って。私、何か見落としていたかしら。近所でも評判の賢く美しい娘のこと、何か崇高な芸術論でもぶつのかしらと期待。しかし、美しい娘の口から出た言葉はこうだった。
「ゴッホって、音楽家だよね?」
しゅーちしん、しゅーちしん、おれたちーはー♪
なぜでしょう、最新ヒット曲が脳内に流れます、というか、なぜか口をついて歌ってしまった。
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