へうげものに萌えまくり~男が華であった時代~
ひな人形のエキスパートのお客様は、五月人形を熱く語った。
「兜や鎧甲冑は日本人の美意識です。いつ討たれるかもしれない戦に、色も意匠も趣向を凝らし、一方で動きやすく防御力が高く、かつ美しいものにこだわったのです」
戦国時代の兜には、素材、意匠のこだわりがそれぞれにこめられているのだという。たとえば、兜の下、首周りを守るスカートのようなこざねは、美しい糸で金属部品を編みこんでみたり、和紙を漆で幾重にも塗り重ねた、軽くて丈夫で美しい紙こざねや、しなやかな鹿の皮に漆の装飾を施した印伝を取り入れた皮こざねを用い、さらにいかに重かろうがこだわりの意匠で自己アピールしたのだと。
この時代、最も男が着飾った時代かもしれない。
「へうげもの」には、(まだ3巻しか読んでないが)現代漫画的な「美女」が出てこない。これはすごい。たしかにこの時代、女性に着飾る意味はあまり無い。ちょっと時代をさかのぼれば、そこそこ身分のある女性は人前に出ることは無い。顔を真っ白に塗り、類型的な化粧を施して夫の前に出ればよいものであって、着物にはこだわっても、顔なんかついていれば十分だった。さらに戦国の世にあれば、女性など血統がすべて。家を守り、子を育て、夫をたてるのが一番。趣味の良い女性も当然いただろうが、自分より、夫をいかに飾るかに能力を発揮したことと思う。
さあ、1巻から、戦国武将たちの薀蓄いっぱいのファッションショーだ。和柄の代表のような「縞模様」が、こんなところから来たの???ルソン島の珍しい布地を小粋に(当時はこんな言葉も無かったか)仕立て、意気揚々と小鼻を膨らませながら行進する主人公古田左介がたまらない。それ以上に、このショーをかっさらう織田長益がたまらない。なんたるせくしい!
さりげなく、高山右近が色っぽい。このバテレンっぷりがまたなんとも。
そしてなんと言っても信長だ。
どういう信長を描くか、というのはきっと、この時代を描くかのポイントだろう。古田も可愛いが、それはきっと信長視点。信長が魅力的だからこそ、古田も活きる。
生きるか死ぬか、というかいかにキレイに死ぬかの戦国時代、物や生への執着にとことんこだわる人々。
2巻の、まるで小ボス、中ボスのごとく古田の前に現れる小姓、側室はおもしろかったなあ。
一方、古田の心温まる愛妻家っぷりが、実によい。野望、数奇、愛。煩悩の塊のような主人公が、絶妙~な表情でこの時代を駆け抜ける!
今日、恐る恐る公式ブログに行ってみたら、なにか「この漫画はギャグ漫画です」とひょうげておられる。…恐れながら、これは相当に野郎萌え漫画とお見受けする。
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