有名シェフとアニメを語り合った~隠れたディズニー名作~
仕事でいろいろお話することはあるが、自分の大好きなアニメやゲームの話題になることは滅多にない。
今日は某シェフとお話していて、小さなお子様と「崖の上のポニョ」を見に行きたいとか、「ポケモン」の映画がどうとかいう話題になった。あまりオタク臭を出してはいけないが、私のオタク魂は静かに震える。そうこうするうちにシェフは「ファインディング・ニモ」について熱く語り始めた。100回くらい見たというシェフは、いろいろなシーンで「あれはすごくよく作られていますね」とおっしゃる。ええ、私もあの映画には薀蓄を傾けられますとも! それにあれは子供よりもむしろ大人、それも親のほうが感銘を受ける作品ですものね!と語る語る。
そしてつい調子に乗って、ニモとほぼ同時期に出たディズニーアニメ「ブラザー・ベア」に脱線してしまった。
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世界のアニメを代表するディズニーにおいて、2D→3Dへ移行する時代を表すような位置にある作品だ。3Dのニモは超大ヒット。昔ながらの2Dアニメであるこの作品はあまりぱっとした興行成績も得られず、かなり地味だ。
けれどこれはもっと評価されていいだろうと思う。少なくとも私は、小学校高学年から高校生くらいの、ディズニーアニメなんかに興味がなさそうな少年に見せたい、と思った。いろいろ血気盛んな少年たちに。
この物語の主人公は、血気盛んな少年である。上ばかり見ていて、基本的なことを守らないばかりに、あるとき少年は熊を殺す。そして神の意思により、「熊」になってしまう。
前半の、リアルな絵柄は「加害者の視点」で描かれる。このシーンで描かれる熊は、いかにも凶暴で恐ろしい。ちょっと決まりを破ったといえども、自分たちの財産を奪い、命をも脅かす熊を殺して、何が悪い?という、少年の主張もわからないでもない。
しかし少年が熊になって、いきなりお定まりのディズニーアニメの世界になり、諧謔的な熊の世界に入ってからは、「被害者の視点」を描くことになる。熊は、こういう生活をしているのか。最初はとまどった少年だが、出会った孤児の熊との共同生活で、いろいろなものを学んでいく。
しかし、その小熊は、少年が殺した母熊の子であった。
小熊が語る「そのとき」は、少年が感じたものとはまったく違っていた。生きるために、子供を守るために必死な母熊が、「残酷な人間」によって殺されたのだった。
どうすればいい…?
少年は自分の罪を自覚し、歩き始める…。
☆ ☆
なかなかの意欲作だと思う。私はおよそディズニーアニメなんかに一番ふれないような世代に見せたいと思ったし、そういう意図もあったんじゃないかと思うのだが、そんなコンセプトでは興行成績はあがらないだろう。手書きアニメがCGに劣ることは絶対に無いが、世が目新しい技術に目を向けていた時代に、この作品は不利すぎた。
「そうですか。今度借りてみますよ」というシェフのお言葉に、我に返った。
「いえあのー…最初のシーンとか、小さいお子様には怖いかもしれません。中学生から大人が感銘できる作品なんです」などと追いかけたけど。
簡単に、……いや、大人から見たらこう言ってはなんだが「そんな理由で???」という動機で「誰でもよかった」的に人に刃を向けるこのご時世だが、少しこういうアニメでも見て、切りつけられる側の目線を理解すればいいと思う。
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