トルネコに学ぶ教訓
FFTAクエスト300をクリアしたあと、なぜか「ドラクエ4DS」をやっている。
うちはこれまでドラクエとはあまり縁がなく、「トルネコの不思議なダンジョン」と「剣神」しか持っていない。「トルネコ」は人生を踏み外しそうになるほど楽しみ、ちゃんとクリアしたときには涙ぼろぼろだったのだけど。
その「トルネコ」が出るFF4を、ようやく遊び始めたのだ。10年以上の時を経て。
「いいなあ、俺もやりたい」と言う息子。「あんたにはぬるいんじゃない?」と答えた。東方だのモンハンだのを遊び倒す息子には、ドラクエはいかにも古く、万人向きではないか。
「はあ?馬鹿にすんじぇねえよ!俺はドラクエやりてえよ!」
…何が逆鱗に触れたのかはわからないが、息子は怒り出した。「あれって、仲間とか自由にカスタマイズできるんだろ?名前つけたりいろいろと」
残念だが、私が買った4というのは、そういうドラクエではない。
「名前と性別を決められるのは主人公の勇者だけで、仲間キャラは名前固定、職業固定、よくしゃべるし個性的。なんか、FF6みたいな雰囲気だよ」
「え、そうなの?」
息子は少ししょぼんとした。
勇者の名前と性別を決め、ちょっとだけオープニングを見ると、あとは仲間キャラのそれぞれのストーリーを追うことになる。戦士ライアンの話、おてんば姫のアリーナとお付の話、そしていよいよトルネコの物語だ。
トルネコは「武器屋のおやじ」で、「不思議なダンジョン」でも普通のRPGの勇者とはまったく違う性質だったのがおもしろかった。力よりも頭脳と知識と運がものをいう。
さて、本家ドラクエでのトルネコの物語は、ただの雇い人のトルネコから始まる。
☆
小さな村に、美しく聡明な妻ネネと、可愛い息子ポポロとともに住んでいる太った男がいた。
その男トルネコは、いつかは自分の店を持ちたいと願っているが、今はしがない雇い人。
妻から愛情一杯のお弁当を受け取り、この道を行くのよ、寄り道しちゃダメよ!といわれてそのとおりに職場に向かう。
なんか歩合制らしいが、言われるままにお店に立ち、店番をする。お客は割りと来てくれる。安いこん棒を売り、高いせいなるナイフを買おうというお客様に心をときめかせ…でもお金が足りないや、と言われてがっかりし。でも、言われるままにこつこつと接客をした。たまに「買ってくれ」というお客もいるのでそれを言われるままに買い取り、言われるままに売る。
……もしも「いいえ」を選んだら、もっと高く買ってくれたり、値切れるのかなあ?
なんていうことを考えるが、一介のレジがそんなことをやったら確実にクビだしなあ、とこつこつ働く。
一日だらだらと働いて、もらえる日給は100ゴールドくらい。たまに「破邪の剣」なんていうレアものを買取り、それがその日のうちに売れれば200ゴールドを超えてウハウハだったりする。が、その程度だ。
お給料をもらって夜の村を歩いても、妻子に土産を買うこともなく、ちょっと一杯なんていうこともなく帰宅し、妻と語らって眠る。朝、妻に「あら、お弁当まだ持ってたの?はい、新しいお弁当!」と、弁当を取り替えられる。ああ…弁当をもらっていたか。でも、昼休みもないし、全然おなかがすかないんだ……じゃあ、行ってくるよ。お金を稼いで、いつかは自分の店を…。
こんな毎日を、だらだらと過ごした。
いいかげん、「これではいけないのではないか」と思い始めた。
ふと家の前を見渡すと、息子が遊んでいる。話しかけると「宿屋のおじちゃんが話があるって」とか言っている。「どうせタイムカードもないんだから」ともう少しぶらりとすると、足腰の弱ったおじいさんがいる。教会に行きたいが、歩いていけないので押していってほしいという。せっせと背中を押して教会まで連れて行く。感謝と、小銭をもらい、「いいことをしたなあ」とそのまま楽しく職場へ。
それからは、職場での小銭稼ぎと、おじいちゃんのお世話で小銭稼ぎで過ごした。
愚直に。ただひたすら愚直に。
これがゲームでなければ、そのまま一生を過ごすところだった。
「これで、店がもてるんだろうか」
と、ちょっといい防具を買い、仕事の帰りに村の外に出た。月明かりの下でスライムに会った。素手でもなんとかダメージを与えられ、苦闘の末に倒した。また小銭を稼いだ。
しかし、スライム以外のモンスターには、全然攻撃できない。泣く泣く、逃げた。
武器が、ほしい。
せっかくなら、この村でいいものを買いたい、と少し働いた。行きかえりに少しずつ、小銭と経験値を貯めてもいた。ようやくちょっとよさげな武器を、いつも働いている店の親方から買い、村周辺のモンスターを狩った。
親方、困ってるかなあ。怒ってるかなあ。
これまで時間通りに店に立ち、きっちり店番してたのに、お店をほうったらかしにして、なんだか冒険に出ちゃいました。鉄の金庫を求めて。怪しいキツネの里をなんとかして。
トルネコ編には、いわゆる「ボスキャラ」がいない。彼の道を切り開くのは、才覚とお金だけだ。
少し遠くの街に行くと、いろいろな情報が手に入る。手紙を受け渡して喜ばれ、「防具」をほしがる国には、防具を仕入れて高く売りつける。金持ちがほしがるお宝を手に入れ、がっぽり稼ぐ。がんがん稼いで王様の信頼も手に要れ、念願の自分の店を手に入れて愛する家族を呼び寄せる。
そしてさらに、すごい投資に挑んで、自分と勇者、そして多くの人々の道を切り開く。
トルネコ編は、そんな物語だった。
実に教訓が多く、充実していた。ああ、ここからあの名作「不思議のダンジョン」が生まれたか。
子供の頃リンカーンの伝記を読んで「リンカーンってハンサムだわ!」程度の感想しか持たなかった阿呆な私にも、自分の人生の指針のように思えた。
よ~し、才覚磨くぞ~スキル(武器)手に入れるぞ~
で、トンネル掘るぞ~~(違)
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