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2008年9月29日 (月)

コミックで「祭り」を堪能~よつばと!と天顕祭~

 よつばと!   8 よつばと!   8
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日記に書いていなかったけど、当然のように「よつばと!」8巻を発売日にゲット。

季節はちょうど今くらいらしく、よつばの住む町は秋祭りでにぎわう頃。東京都下あたりかなと思えた街だが、結構本格的な祭りが行われているらしい。

初めての祭り。

よつば視点で描かれる神輿や山車、大人たち。

大人視点で描かれる、山車を元気にひいて、お菓子の詰め合わせに喜ぶよつばら子どもたち。

なかでも印象的なのは、みうらちゃんだ。お化粧を施し、神妙な顔で舞っている。

はあ、いいなあ~~

私がこれまで住んできたのはいずれも「新興住宅街」という奴で、気がラクではあるが、土地に根ざしたものが何も無い。これまでお祭りを楽しむのはレクリエーションとしてだけで、どこの氏子になったこともない。地元民として祭りの手伝いをするけれど、神輿はどこの神社の物でもないし、いろいろなところから集まった人々や子どもたちが、いろんなものを混ぜて「お祭り」を作っている。根ざす物が何も無いから、とりあえずサンバとかねぶたとか、よそのものなんかも平気で混ぜちゃう。これはこれでおもしろいけれど、「本物」の祭りにある畏怖や、血が滾るような興奮などは経験したことが無い。

この、祭りの回は何度読んでも涙が出てくる。なんでだろう。

憧憬? 郷愁?

純真無垢な子ども、少し大人の仲間入りをした子ども、かつて子どもだったけれど、大人として子どもたちを暖かく見つめる瞳。

「よつばと!」の世界は、本当に居心地がよい。

一方、ねんがんの「天顕祭」をてにいれた!(2週間ほど前だけど)

書店でとても気になりながら、「ダ・ヴィンチ」の特集などに背を押され、「海獣の子供」に耽った勢いで購入。

天顕祭 天顕祭

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表紙は、運命に抗う「姫」の顔である。

時代は「未来の日本」らしい。「汚い戦争」のあと、国土はフカシ(=不可視)という毒に侵されていた。フカシに接触すると、「フカレ」てしまい、やがては死ぬ。爆心地から生えた竹が土地を浄化し、人々は復興の兆しの中で生きている。

「…ナウシカ?」というのが読み始めた第一印象。この作品は同人誌として初めて文化庁メディア芸術祭マンガ部門で受賞、という快挙を成し遂げたそうだが、正直、「そのテの世界観」は、オリジナル同人作品ではありがちじゃないの~~?…と、読み進む。

が、このどっしり地に足が着いた世界観はどうだ! 細部まで綿密に構築されているし、「神事」や「神話」を見事に取り込んでいる。最初は、竹を組む足場にうっとり。昔タイ旅行をしたときに、やはりちょっとした建築現場で竹を足場にしているのを見た記憶がよみがえる。あの頃、日本では徐々に建築現場はカバーが施され、鳶職人の姿を見ることが少なくなってきたのだ。竹を組んだ、当時の日本人である私にはとても不安定に思えるその足場で、まったくカバーもなしに働いている人々を移動中の車からちらりと見た。この作者も、そういうものを見たのだろうか。

鳶。 最近はすっかり忘れられているが、この物語の主人公は、鳶の若頭と、女の身でその世界に飛び込んだ謎の少女・咲である。

今、鳶に触れるとしたら、出初式などであろうか。天を衝くような高所で恐れを知らぬような軽業を披露する。それは神への挑戦のようでもあり、神と、民を喜ばせる神事でもある。

が、咲は地底に蠢く神の捧げもの=姫という自分の運命に抗い、高所へ上る。そして戦う……神と。

そんな主人公たちの煩悶をよそに、このなんとなく昭和中期の世界の人々は、いろいろな暗い歴史を秘めた「天顕祭」で縁起物を買い、はしゃぐ。本来の「祭り」の意味なんて薄らいで、娯楽のひとつになっていきそうな、そんな時代なのだ。

ああ、私の生まれるちょっと前だ。

それが、「古事記」の世界とリンクした!

未来物語なのに、そう思わせてしまう。実に良質なファンタジーだ。

酔った勢いでさらに感想を連ねてしまうが、「汚い戦争」って一体いつのことなんだろう?

数十年前の話のようにも思えるのだが、50年に一度の「天顕祭」を幾度も重ねているところから数百年はたっているような。

そんなこんなで日本は文化が後退し、あたかも20世紀前半のような雰囲気で違う発達をしているようだけど……。

見ようによっては「汚い戦争」=もっと激しく原爆が落とされちゃった第二次世界大戦 かも、と妄想してみる。

そんなパラレルワールドだとしたら、昭和初期のムード満点、神道が強大な力を持ち、一次は「人柱」なんていうものに人心がすがるのも自然なような。

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