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2008年10月 6日 (月)

子どもは漫画を教訓に出来ないのか?~わたしの人形は良い人形~

帰宅して鍵を開けるところで電話が鳴った。実家からだった。

用件は、こうであった。実家に預けている娘が、明日から3日、自分で弁当を作ることになっている。で、ご飯をいつもよりも多めに用意しなくてはいけない、というので娘が張り切って米を用意した。

5.5合炊き炊飯器の、「水」のラインぎりぎりまで。しかも、水まで入れちゃった!

いくらなんでもこれは大変だ、実家には複数炊飯器があるらしく、まだ残ったご飯もある。なので、今半分炊いたのを娘に持たせるから、そっちで食べてくれ。以上。

幸い、帰宅したばかりで今日のご飯を炊いていない。娘が迷惑をかけたうえ、炊いたご飯をいただけるとは、ひたすら頭が下がる話である。それにしても、炊飯器いっぱいに米を入れるって……

わたしの人形は良い人形 自選作品集  /山岸凉子/著 [本] わたしの人形は良い人形 自選作品集 /山岸凉子/著 [本]
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これを連想した。山岸作品は、バレエものだろうがオカルトだろうが、随所に「食べ物」ネタがある。「テレプシコーラ」だって、篠原家の食卓やお弁当が事細かに描かれるからこそ、あたかも現実の家庭を見ているような気分になれる。

この作品は、私の生きているほうの弟が「月刊ASUKA」で第一話を読んで、恐怖のあまりに泣いたレベルの作品である。私の息子は幼い頃、極度の人形恐怖症で、洋の東西を問わず人形を見るとパニックをおこすため、娘は人形を買ってもらえなかった経緯があるが、どうやらそれも、息子がこれを読んでしまっていたことに因るらしい。息子が「ローゼンメイデン」でようやく恐怖症どころか萌え萌えになり、「実は…」と告白したのだ。

終戦直後の日本。一人の少女を葬送する際に添えられるはずだった一体の市松人形が……

メインヒロインは、その少女の友達の娘。戦争なんて何も知らない現代っ子で、厳しい受験戦争を勝ち抜き念願の名門校に合格、母の実家「跡」に建てられた素敵な新居に胸を躍らせながら引っ越してくる。引越し荷物の中から、立派な市松人形を見つけ、嬉々として部屋に飾るのだが…

という現代少女の日常が、描かれ始める。名門校だけに授業は厳しい。部活動でも早々にドジる。母は新居ゲットを機にパートに出る。そして、ヒロインがご飯を炊き始めてある種の「恐怖シーン」になるのだ。

炊飯器まるまるの、大量のご飯! ウキャアアアアア!

ヒロインは、家族の人数×1合の計算で、ご飯を炊いてしまったのだ。母は嘆く。「一合のお米で、ご飯は2.5杯炊けるのよ。これは常識です!あ~お母さん、教育を間違ったわ~」

まさに、この恐怖だ。

わが愛娘ちゃん、ご飯の炊き方、わかってなかったか? たしか、この名作も読んでいたはずだったが??????

娘が、炊き上がったご飯を持ってやってきた。
「やあ。まあ、『わたしの人形は良い人形』でも、100回くらい読めw」と迎えてやった。娘はばつが悪そうではあったが、……とにかく学校でいろいろあるので、母親に甘える機会を得て、ちょっと嬉しそうであった。

娘が言うのには、「(我が家)には、ボタンひとつで1合とか2合とか測れる米びつあるやん~~~(実家)には、それがないんよ。で、そういうものかと思って、炊飯器の目盛り一杯に、お米を入れた」……うん、たしかに教育を間違えた。

我が家で炊く米は、通常1日1合だ。それで家族3人が、余裕でいける。たまにカレーなどをやる日には、2合。一人1合とかいう方もいるのだろうが、私はそれでずっとやってきた。それで、ボタン一つで1合、もしくは2合を図れる米びつを導入し、たしかそれを、子供たちに教えたと思う。急に働きに出て、子供たちに混乱させずに指図したかったからだ。

一応、その米びつには、昔ながらの計量カップも入れている。「1.5合欲しい」などの時にはそれを使う。そもそも家庭科学習がなされているのだから、1合=2.5杯はさすがにこの年齢には常識、と思っていたのに、娘は「シラネ」という。

ああああああ。世界的に見ても栄養価と味が優れ、生産性の高い日本の米のことを! 本来南洋の植物であるイネを、寒い東北が「米どころ」と名乗りをあげるまで、狭い国土で改良を重ねてきた歴史を! 今も「百万石」なんていわれるとおり、食べ物を通貨扱いさせたくらい、米という食物に思い入れのある民族なのに!

便利な米びつがないと、炊くことも出来ない子供を育ててしまった。誰でも美味しくご飯が炊ける、日本の誇る炊飯器でさえも、使いこなせないような。

「わたしの人形は」の、最初の登場人物たちは、その「白い飯」のありがたみをよく知っていたはずだ。だから、そのシーンにつながる。あまりにも描写の少ない「最初の少女」だが、彼女の妄執のひとつが、ヒロインにご飯を炊かせるのだ。

そんな説教をする一方、娘は私が今日入手してきた漫画に夢中。

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著者:深巳 琳子
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新刊古書の区別無く、意外と本屋で見かけないシリーズなのだが、ようやく見つけた。仕事の合間、バス待ちの間に。本当に、実在するのかとさえ思ったくらいだ。

小躍りしてレジに持っていったら、なんと5円も引いてくれた。なんという幸運。

この極上の美食SM、息子は興味を示さないが、娘は目を輝かせる。

この美しくも底意地の悪い沈夫人の表情に、私は骨抜きになっている。また、そんな奥様へのご奉仕に命を賭け、翻弄されながらも愚直に仕える料理人。ああ~~~、なんて素敵。

けれど、ここで紹介されるレシピには、何を何グラムとか、何分ゆでる、などとは一切描写されていない。奇をてらった料理も出てこない。塩加減?そんなものはご自分で、というものだ。う~ん、カエルとか、干したイカの卵とか、中国料理の奥の深さには感じ入るばかりだ。もしかしたら、現在その国の人よりも日本人のほうが、その文化に敬意を表しているのではと思うほどに。……本当に、中国の皆さん、国土の環境と、優れた文化(だけ)を、大切にしてください……

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