「もうお母さんは要らない」
主婦の仕事、お母さんの仕事が報われずに虚しくなるということは、多くの女性にあると思う。
毎日お財布とチラシをにらみながら、少しでもおいしいものを、栄養のあるものを、体にいいものをと工夫しながら作った食事を、「要らない」と言われた。
カップ麺のほうがうまいと言われた。
アレルギーなど虚弱体質の子だからと、生まれたときから食には心を配ってきたのに、そんなことはうぜえ、のだそうだ。
秋日子かく語りき /大島弓子/著 [本] 販売元:セブンアンドワイ ヤフー店 セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する |
そんな平凡な主婦のため息を描いたのが「秋日子かく語りき」だ。
突然の交通事故死。
1週間だけ時間を借りて、女子高生の体でこの世に舞い戻った主婦。
残してきた夫や子どものことが気がかりな主婦がみたものは……
私が初めて読んだ時、そのおばさんが自分の母と重なった。大根のジアスターゼなんてセリフがもう、そのまんま。平凡ながらもこつこつと、家族の健康と幸せを守って生きてきたのに、自分がいなくなっても家族はなんともない。むしろこれからは夜更かしをしたり、好きなものを食べられると呑気なものだ。
私の人生って、いったい。
おばさんの嘆きが、そのまんま「母」の嘆きだった。
今、自分の嘆きになっている。
人は親になって一人前、というのは正解ではない。
子どもを作り生んだだけでは絶対に一人前ではない。
自分が親にしたことをひとつひとつ自分が受け止めてこそ、一人前になるのだ。
思えば私も同じように母を傷つけなかったか? あれほど健康に気を使い、ジャンクフードや清涼飲料水を与えず、野菜を食べろ、大根にはジアスターゼが、という母を疎ましく思い、大人になって自由な時間とお金を手にするにつれ、外食やジャンクフードに耽った時期もあったではないか。
しかし今、私は空虚である。
わかっていても、自分の心の中に開いた穴を補完しなくてはならない。
「秋日子」の中のおばさんは、家庭の象徴だと信じていた大きな観葉植物に固執した。
多くのドラマ等では、それが趣味や仕事への原動力となったり、不倫や薬物へのきっかけとなったりする。
連休中日の今日、とりあえず私はディシディアで心を平静にする。ああ、もうご飯にあれこれ悩むこともないのね、思う存分遊べるわ。
ただいま魔導船65連勝中。
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コメント
普段コメントしませんが、
闇鍋さんの頑張っているお母さんぶり、
いつも拝読しています。
色々大変なことが重なっている時期と
お見受けしますが、
あの植物が家族のもとへ請われて戻っていったように
バナナブレッド…の糸を引くイメージのように
いつか全てがあるべきところに
収まる日が来ますように。
投稿: 白点に鷹の爪 | 2009年3月24日 (火) 02時58分
白点に鷹の爪さん、ようこそ~!
お励まし、ありがとうございます。落ち込んだりぶちきれたりいろいろありますが、それでも絶対、このブログを始める前よりも事態はよくなっております。こういうときにこの作品を思い出したのは、幸いでした。
投稿: 闇鍋奉行 | 2009年3月24日 (火) 07時14分