「死刑」を簡単に言わないで
今日は驚いた。
自分も仕事でしばしば訪れる場所で、女性が火だるまにされたというのだ。
命に別状が無いとしても、大やけどがこの被害者の人生にどれだけ影を落とすかしれない。これから事件の事情が明らかにされるかもしれないが、今の段階でも「ここまでされるほどのことが、とてもあるとは思えない」と思う。
ちょっと前にも、パチンコ店に放火して4人の犠牲者と多くの負傷者を出した。亡くなられた方と遺族はもちろんだが、やけどを負った方にも大きな損失。店や、ビルの所有者にとっても大打撃だろう。
犯人が、ことの大きさに反省して素直に出頭したのは、まあ良かった。しかし、「死刑を覚悟で」という言葉に、なんだか心の消化不良を起こしてしまった。
死刑になると判断できるくらいなら、やらなきゃいいのに。
大体最近は「死刑」を軽々しく口にする犯罪者が多すぎる。「死刑になりたかった」とか、一体なんなんだ。
まずは、そんなくだらない願望のために未来を奪われた犠牲者とその家族・友人をどうするんだ。
死刑判決を下さなくてはならない裁判官だって、好きでやるわけではないぞ。
刑が決まった人間を預かる刑務所の人、刑執行を命じる法務大臣、実際に刑を執行する人、みんな喜んでこの仕事を引き受けるわけではない。
当然、死刑囚を出した家だって運命を狂わせられる。誰も喜ばないのだ、死刑になるようなことをすることは。
一時の鬱憤を晴らすために、くだらないことをするな。
自分だけ、人権に配慮したラクな死に方をするな。
☆
昨日不登校暴力息子(…実質、再び不登校状態だと判断した)と妙に漫画の話で盛り上がった。
漂流教室(1) |
私が子供の頃、漫画雑誌でちょっと見て、あまりの恐ろしさについ数年ほど前まで「封印」していた名作漫画である。言わずと知れている作品だが、小学校がまるまる、人類滅亡の未来に飛ばされるという物語。乏しい食料、謎の生物、恐怖に耐え切れない大人、子ども達だけの世界で暴君と化す大人……
そんな地獄の中で、子ども達が必死に生きていく物語。
数年前にテレビドラマ化もされたようだが、舞台は高校になっていたようだ。
「これは、小学校じゃないとだめだと思うんだ」と息子。私も激しく同意。高校生なら、多少青いとは言っても身も心もほぼ大人。1年生と3年生の間にもさほど差は無い。
私と息子が惹かれたのは、やはり「小学校」が舞台なのが凄いというところだった。高学年ともなれば体格や知識も大人びた子がいるとはいえ、やはり子ども。でも、1年生の子たちに比べたら、ずっとずっと大人。
お母さんに会いたい、おなかが空いた……極限状況の辛さは同じだが、この子どもたちに、「小さな子を守らなくてはいけない」という気持ちがどんどん芽生えていくあたりは、この年齢ならではだ。
それと、連載第一回目がどこまでなのかよくわからないが、ずいぶんと主人公と母親の家庭の描写にページを割いているように思える。どこにでもありそうな少年と母親の親子喧嘩。そんな日常を丁寧に描いてから、物語は異常な方向に向かう。だからこそ、そのあとの物語が深い!
最近、類似の漫画などが多く見られる。良いものもあるのだろうが、この「漂流教室」を越えられるものはどれだけあるのだろうか?
今の少年漫画とかだと、よほどビッグネームでもない限り、第一話でとっとと異世界へ、だと思う。そうでないと、読者の興味を惹けないからだ。
「日常」をきちんと描いていないと、「非日常」に世界が変わってもさほど重さを感じないのに。
どうしようもない息子ではあるが、こうして漫画について話していると、結構本質を理解している、と信じる。抑えきれないほどの凶暴さを見せるが、軽々しく「死刑になるようなこと」はしない、と信じる。
息子よ、もう1ヶ月を超えたのに、私の頭のこぶはまだ残ってて、痛いよ。
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コメント
こんばんは、鍋闇さん。いつもブログ拝見させていただいています。私も鍋闇さんの意見に同感ですね。死をもって償ったとして、遺族のかた達被害者は決してむくわれるわけではない。ただの自己満足でしかありません。
自分の罪の深さを認められるのなら何故罪を犯してしまったのか…。人間追い詰められると何をするかわかりませんね…。
投稿: | 2009年7月10日 (金) 01時50分
名無しさん、ようこそ~!
死刑の問題は深すぎて私の日記ではとても語りつくせませんが、この極刑が抑止力にさえならなくなるような社会は恐ろしすぎます…
投稿: 闇鍋奉行 | 2009年7月10日 (金) 07時29分