半裸兄妹の舌戦
ようやく、まともに出社できた。
会社や取引先には多大な迷惑をかけた。新型インフルエンザ、恐るべし。本人が罹患してなくても家族が発症すれば同じこと。…1週間仕事できないって、ゆとりのないこのご時世には大変なこと。
…で、本来喜ぶべきなんだろうけど、新型インフルエンザ娘は意外と元気だった。発病したときもそうとは思えなかったし、具合が悪いときでも気丈なのか丈夫なのか、結構しっかりしていた。自力で病院に行けたし、診察後薬を持って帰宅できた。これは、よかった。
が、ちょっと薬を飲んだけでものすごく元気に。元気なだけならいいけど、やたらわがままで、好き勝手に振舞い始めた。仕事を失った私と息子としては、複雑である。言いたかないけど、「誰のせいでこうなったと思ってやがる!」といいたくなる。
罹患するのは、仕方が無い。それを責めることもない。
が、周囲に迷惑をかけて申し訳ない、というそういう礼を示さなくては世の中収まらないものだ。
大体、娘が体調を崩す前夜、妙なことがあったのだ。風呂にも入らず、歯も磨かず、服を着たままで寝ようとした娘に私はパジャマに着替えろ、と言った。「着替えさせて」と娘は言う。
あの事件以来「赤ちゃん返り」が激しい娘。赤ん坊のようにごろごろしながら、手取り足取り着替えさせろと言う。むかつきながらも下を脱がせ、パジャマのズボンを途中まで穿かせた。
「あとは自分でやりなさい!」
……さすがに、ちゃんとしてほしい。いつまでも甘えるんじゃない。
が、娘は拗ねてしまい、途中まで穿かせてもらったパジャマを脱ぎ、下半身パンツ一丁で寝たのである。
「馬鹿じゃねえの????」息子も憤慨。ひょんなことで下半身パンツ一丁で寝ている妹を見てしまったことでも、その翌日熱を出したことでも、当然の反応であろう。
大体娘は、赤ん坊のときからやたら脱ぐ娘だった。靴下を履かせても履かせても、すぐに脱いでしまう。
1~2才頃には、一人で全裸になれた。幼稚園に行きたがらない息子を無理矢理園服に着替えさせ、やれやれこれで出かけられる、と娘を見ると裸のマハよろしく全裸で寝そべっている。
これに服を着せている間に、息子が園服を脱ぐ。
……ああ、思い出したくも無い育児風景がよみがえってきた。「怪奇脱ぎ脱ぎ娘」なんていう名前で娘を呼んでいたこともあったっけ。
兄に「馬鹿」といわれた娘は、それでも冷静に応酬した。
「上半身いつも裸のあんたに、言われたくない」
……ああ。
息子は赤子の頃から体が弱く、ことにすぐ喘息発作を起こすのが悩みだった。
「風邪を引かせれば発作につながる」
母として、風邪を引かせないことが使命だった。
が、息子もまた、「怪奇脱ぎ脱ぎ息子」であった。
幼い頃から、風呂上りに全裸で駆け回る。
寒い季節には、カーテンの向こうでにたにた冷えていた。全裸で。
物心ついた頃には、上半身裸だった。
……聞かないで欲しい。私も何度もいろいろ言ったのだが、そういう息子なのだ、としか言いようが無い。
「…なんか今日、寒くね?」と言いながら上半身裸とか、
「…なんか今日寒くね?」と雪降る日に半そでTシャツ姿で言われ、
「服を着れば良いと思うよ?」と応えれば「服(シャツ)着てるじゃーーーーーん!」と
マジギレされる……ああああああああこちらもまた、思い出したくない日々。
上半身裸生活の息子と、下半身パンツ一丁(新型インフル)娘が激しく食卓で言い争う。
「俺は下半身はちゃんとしてるじゃねえかよ! パンツ丸出しで寝るとか、ありえねえ!」
「たまたま一回だけじゃない! いつも上半身裸のあんたに言われたくない!」
ああかしましい。
箸を動かしながら、私はつぶやいた。
「足して2で割れればいいんだけど…」
一瞬の沈黙のあと、兄妹は大笑い。
「…足して2で割って、全裸兄妹ができたら目も当てられない…」
と言ったら、また大笑い。
「右半身と左半身で違う、『あしゅら男爵』もありだぜ!」とかなんとか盛り上がっている。
…そんな子、いりません。
…誰に似たんだよっとつぶやいたら、二人は私を指差した。
ちょ、ちょっと待って。私はどんな暑い夏でも最低限の格好はしている。
何度言っても上半身Tシャツ、下半身トランクス一丁の夫はいるけど!
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コメント
下半身裸族の娘さんと、上半身裸族の息子さんの母である闇鍋さんは…
ゴクリ…
投稿: たかきち | 2009年10月14日 (水) 01時30分
たかきちさん、ようこそ~!
いえいえ、私にはそういう因子はありません。
仮に「上半身裸因子」と「下半身裸因子」が遺伝子にあるとします。
その両方を持っていた夫と、持っていない私。
息子は父の「上半身裸因子」と母の「下半身は着るよ因子」を受け継いだ。
娘は父の「下半身裸因子」と母の「上半身も着るよ因子」を受け継いだ。
そうでなければ、説明できません。
投稿: 闇鍋奉行 | 2009年10月14日 (水) 21時47分
旦那さんの存在をすっかり忘れていました(^_^;)
投稿: たかきち | 2009年10月15日 (木) 13時12分
わ、忘れられてましたかw
投稿: 闇鍋奉行 | 2009年10月15日 (木) 21時11分