息子は「使える人材」かもしれない
相変わらずマイペースながら、今年度はフリーターの道を選んだ息子。
……そりゃあ親として不安が無いわけがない。
が、とにもかくにも社会参加と経済的独立を目指し、彼は本気なのを感じるので、ここでそれはだめだこっちにしろなんて言ってはいけない。
彼なりに、自分の経験と、ネットやネトゲで知り合った人たちとの交流で、今の時代の情報を手にしているわけだから…アドバイスはするけれど、見守りつつ自分の仕事をするだけだ。
さて、息子は3年働いてきた職場に一応別れを告げ、もう少し稼げる仕事を決めてきた。ただ、元の職場としては急な退職に怒っており、今月は少し出なくてはいけなくなりそうだ。
前の職場は、前にも書いたとおり大変に堅実な所で、安い時給で人遣いが荒い……もとい、何もわからぬ高校生にも親切丁寧、細かな非常識もきっちり正してくださるところで、うちの息子は大変に勉強させていただいた。息子も本当に頑張って、責任の重いレジ作業や商品管理から、トイレの汚物掃除、お客様の苦情にもさわやかに応じられるように育ち、歴代店長や多くのお客様にも大変可愛がっていただいたようである。
最近は「PC使える?」と、簡単な事務を任されることもあり、このまま正社員の道も…なんて私は期待していたのだけど、数ヶ月前に入ってきた社員Qさんと、どうも合わなかったらしい。
息子の言い分ではあるが、息子に辛く当たるだけでなく仕事もいいかげんで、お客様を怒らせることもしばしば。私はそういう息子の愚痴を聞くことが多くなっていた。
そこにきたのが、ノルマ事件だ。
何やら、1つ5000円ほどのとある健康食品を最低1個売るノルマが、息子のようなバイトにまで課せられたのだ。売れなければ、自分で買い取ってもらう、というのだ。
「そりゃひどい」
と私も憤った。「ごいっしょにポテトはいかがですか」のレベルではない。レジや商品管理、品出しというような「単純作業」を時給800円以下で提供する立場に、そんな高額商品を売ってこいと言うのは、事実上「お母さんにでもお願いして、売り上げ協力してね」ということだ、と私は解釈した。
できるわけないだろう! マネキンさんで入っている仕事じゃないし!
そうこうするうちに、息子はその職場に見切りをつけ、とっとと違う職場を決めてきた。私は「何があったとしても、早めに辞意を告げて迷惑をかけないようにね」と言ったのだが、息子は意固地になり、「いいや、ぎりぎりまで言わない。次が決まらないうちに辞めるのはリスクがあるし」…そういうやり取りはあったが。
息子が「今月で辞めさせていただきます」と言った時、「何を考えてるんだか知らないが…」と、その社員Qはいろいろ嫌味を言ったらしい。その月、他に二人も辞意を表明していたし、その店にとっては打撃だと思う。当月限りと言うのは認めてもらえず、何日か出ろ、ということになった。
…あれ? これって、息子がとっても必要な人材だということでは…?
単純な人数だけでなく、たとえば息子が入るときにはバイトは息子一人しかいないことが多かった。通常は、バイトが二人の体制なのに。さらに、ポイントサービスデーなど忙しい時にも必ず呼ばれるし、新人の指導やチェックにも携わってきたのである。
おまけに、息子が「今日までで」と条件づけた日、息子はちょっとした最後っぺをかました。
レジに立っていた所、たまたまお客様が別の健康食品を持ってきた。息子は爽やかな笑顔を浮かべて言ったという。
「お客様、ただいまこちらの商品がお勧めですが、いかがでしょうか+.(・∀・)゚+.」
件の健康食品の説明を、手短に説明する。息子は、それらの商品の特性や成分を独自に把握し、いかにその健康食品の方が優れ、お得であるかをてきぱきとわかりやすく説明。
息子いわく「そういうところは、あさりよしとおに学んだ」という。
小さなころから愛読していた「まんがサイエンス」や「H・A・L」から理的なセンスと、的確な表現力を得たのだと言う。…たしかに!
「そうなの。じゃあ3箱いただくわ!(^o^)」
「ありがとうございます!+.(・∀・)゚+.」
これを見ていた現店長も社員Qもびっくり。店長は「今の…売ったの?」と声をかけてくるし、Q氏は忌々しそうな顔で、無言。
あら~営業ノルマがイヤで逃げ出すんじゃなくて、3倍達成したうえで辞めると言うの!
「それかっこよすぎるwww Qさん涙目www」
「ああ、気持ちよかったぜw」
「ていうか、もういやみだわ~ああにくらしいw」
「だろー?w」
……私がこの子位の時、そんな芸当ができただろうか…
私が時給700円程度の高校生アルバイトの時は、レジと前出し、たまの棚卸の手伝いくらいで、商品管理や汚物処理、お客様トラブルなんて「大人がやってくれるもの」だったなあ…
もちろん売上成績なんかまったく関係なかったし、試食試飲のキャンペーンガールの仕事だって、ノルマ無し。もちろん売上が良ければそれなりの評価は得られたけど、とりあえずミニスカートでにこにこしていれば稼げたなあ。
もっとも私の場合、「ミニスカートでにこにこ」までの道が険しくて、16でそういうにこにこすることができない自分に気付いたのだけど。
産んだとき、「うわ、この子自分と同類!」と直感的に感じ、今まで本当に「いろいろあった」けど、ちゃんと営業能力まであるじゃないか!
私も対人関係を築くのが壊滅的にダメだと思いつつ、その自分に一番苦手な能力を今の仕事で築きつつあるのだが、そういう姿を、息子は見ていたのだろうか。
☆
ひとしきり、息子のがんばりを褒めた後で言ってみた。
「そんなノルマ、高校生に課すのもおかしいし、実の所『買え、友達か親に買ってもらえ』だと思う。その場では言わなかったけど、最終的にはママが買ってやるつもりだったけど、あんたはちゃんとやりかえしたんだねえ」
すると、息子は言うのだ。
「…何言うんだよ。
オカンをラクにするための仕事なのに、オカンに金出してもらってどうするんだ!」
(´;ω;`)ブワッ
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コメント
素晴らしい~
闇鍋さん親子は多少のイザコザがあっても、根っこに深い結びつきを感じます
うちの息子はなんとか高校生にはなれたけど、その先は全く見えません
投稿: みりょこ | 2010年5月18日 (火) 11時05分
お久しぶりです。
自分も飲食店でのバイト経験がありましたが、足手まといになった苦い思い出しかありませんね……
息子さんが羨ましい……
かっこよすぎですね。
投稿: クスオ | 2010年5月18日 (火) 11時28分
見える...息子さんを立派に育てた闇鍋さんの愛が見えるぞ!
投稿: べぢ | 2010年5月18日 (火) 13時39分
全 俺 が 泣 い た
本当、息子さんかっこよすぎです!
これが漫画ならいい感じに最終回な流れですね(笑)
もちろん現実はまだまだ続くわけですけれど^^;
バイトで躓いたりして大学の一年間を棒にふってしまった私には、息子さんが眩しくて仕方ないです。
うおおお、負けてらんねえ!
投稿: かさね | 2010年5月18日 (火) 14時47分
みりょこさんようこそ~!
ほんと、いろいろあるんですけど、良い時にはこんなに良い子だし、とにかく社会に出てなんとかできそうなら無問題!ですから、とりあえずはほっとしました。
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年5月18日 (火) 20時28分
クスオさん、ようこそ~!
私も、バイトではさんざん叱られ、いじめられ、いろいろありましたよ……そこで、勉強させてもらったんですね。で、息子がバイトする前に、自分の失敗談などをいろいろ話しました。少なくとも同じつまずきをしないようにと。
息子は「そんなの当たり前だろ」と言いながらも、やっぱり最初はいろいろ言われて落ち込んで…でも、辞めないでいたら段々褒められることが増えてきたようです。
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年5月18日 (火) 20時31分
べぢさん、ようこそ~!
あ、愛ですか?
立派とまではまだまだ言えませんが、とりあえず子どもを自立させないといけませんから…
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年5月18日 (火) 20時33分
かさねさん、ようこそ~!
バイトは社会の入り口。若いうちにつまずいたり傷ついたりした方が、取り返しもきくと思います。
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年5月18日 (火) 20時34分
息子さん かっこいいです!
三倍ノルマは達成した。だが断る。
娘さんも学校の奨学生?特待生?かっこいいです(≧∇≦)
投稿: ぼん | 2010年5月19日 (水) 00時36分
ぼんさんようこそ~!
息子、なんかそういう漫画っぽいキャラですねw
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年5月19日 (水) 07時29分
息子さん、十分使える男です( ^ω^ )
それにとても優しいですよね♪
羨ましい(*´ェ`*)
投稿: マロン | 2010年5月19日 (水) 19時29分
マロンさん、ようこそ~!
いやあ、うちの息子がこんなにも褒められる日が来るなんて
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年5月19日 (水) 20時34分
初めて読ませていただきました。
私にも息子さんとよく似ている娘がおります。
「大丈夫、大丈夫、きっと生きていける
」
そんな気持ちになりますね。
それから、皇太子殿下ご一家のこと、同感です。
すべからく同感です。
精神疾患の家族をもつって、毎日が針の蓆みたいでかなりきついことです。
ですから、私は皇太子殿下の御胸中いかばかりかと、胸が詰まる思いです。
投稿: おけぼう | 2010年5月28日 (金) 13時03分
おけぼうさん、ようこそ~!
まあこんな息子なので学歴は誇れるものにならないし、こんな不況下で不安はありますが、…意外となんとかできるかも???と少し希望を持っております。コミュニケーション能力に不安がある子だったのに、気づくとここまでできているって、感無量です。
当時の表現で精神分裂病の弟を持っておりましたので、その恐怖、誰にも言えない不安、…いろいろです。精神疾患ということになった段階で、妃殿下はお宿下がりされるべきでしたね。
メンタル面に不安がある人が家族にいると、家族もいろいろ支障が出てくることが多いようです。うまく家族で団結して支え、解決できるくらいなら良いのですが、今の東宮家の状態は、ご一家共倒れになりかねません。
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年5月28日 (金) 20時51分