やっぱり人生ムーンウォーク
今日なんとなくニュースショー番組を見ていたら、「自称フリーター」という肩書きの青年が、同棲女性への暴行疑惑で逮捕、その一連を取材していた様子を流していた。
自称 フリーター
これまでも、自称漫画家とか自称俳優とかは聞いたことがあった気がする。そういう自由業は、職業としてはあいまいで、夢をもってその仕事をしているが、それでは食べていけなくて、他のバイトで食いつなぎ…あるいは親などの庇護で生きている、そういう人をイメージする。フリーターとかニートだとかじゃない、自分はあくまでも○○の卵なんだ、夢と現実が適合しないだけなんだ!
…が、「自称フリーター」って。
なんか夢も誇りもない。取材によると働いている形跡がなく、余罪がぼろぼろ出てきそうなことを仄めかしていたが、なんかもう、日本はどうなるのかと思った。
という話を息子にした。
息子は自動車免許取得と、当面の生活費を稼ぎながら、未来のステップアップに向けてがんばっている…ところであるが、ちょっと体の不調を感じ、自ら医者に行った。
……すごいことだ、息子が医者に行くなんて。
乳幼児の頃は、お注射大好きな子だったが、ある年齢を過ぎると、極度の医者嫌いになったのだ。それが、自ら医者に行くと。「…すぐ入院なんてことになったらどうしよう><」などとやけに神妙になっていたので、一応言った。
なあに、最近私の周囲でも、検査を渋って渋って、ようやく検査をしたら4センチの癌が見つかったけど、すぐ手術しようにも、予約がいっぱいで入院のめどがつかず、絶望的な気分で毎日働いている人がいるよ
……ちょっと脅しがきつかったかな? しかし、医者嫌いではすまない現実を知るのには、よい薬だったと思う。
で、一応近所の医院にかかったら、大学病院の予約をとってくれたそうで。
息子、ちょっと神妙な顔。
「金が、やべえ」
前の仕事をコンスタントにできればまあ良かったが、それでは教習所に行く時間がとれない。
やむなくそこを辞め、深夜バイトとコンサートスタッフの仕事を始めたが、どちらもコンスタントに仕事をもらえない。先方の都合で呼ばれたり呼ばれなかったり、時には「客少ないから、休憩して、早く帰って」なんていうこともある。
自立どころか、せっかくの蓄えも費やし、就学費用などいつになるかの状態だという。
「医者で、2000円とられるし」
これまでは、そういうお金はママが出してくれるものだったが、私はあえて「出してあげる」とは言わなかった。…もう18だ。今の状態になるまでには、私もいろいろアドバイスしたが、結局自分で選んだ道なのだ。病気や怪我をすればそのくらいかかる、働けなければ収入は無い、トイレットペーパーも、電気代も、タダではない。
今息子は、そういうことを学んでいるのだ。
「まあ、一人暮らしでなくてよかったわね」
冷たく突き放したママにちょっと失望しながらも、息子は大きくうなずく。
とりあえず雨露しのげる家があり、住民票がある。家族がいる。
一見なんでもない、当たり前のことだが、これはすごいことなのだ。
しかし
「俺は、警察的にはフリーターではなく、無職になるらしい」
と言った。
前のバイト先で、ひょんなことからパートと社員の間のような人と、自転車の盗難届けに交番に行ったらしい。
その人はその店の仕事で生計をたてているのだが、警官は聴取の上、職業欄に一度「フリーター」と書いたのを傍線で消して、「無職」と書き直したらしい。
「俺はその当時、かろうじて『高校生』だった。だけど、自分よりも上のランクで働いている人が、無職、よくてフリーターと書かれていてショックだった」
…うーん…その辺はよくわからないけれど、たしかにそうなってしまうかも…?
私は女なので、とりあえず結婚して子供もいれば「主婦」という逃げ道がある。パートや契約社員でも、さほど体面を損なわれない。
…しかしまあ、今でも男性にはきちんとした身分の保証が無ければ…という考えが根強いだろう。
昨年度までは学生証が…それも息子はずいぶん軽視していたようだが、それが身分を保証してくれた。
今、自分の身分を証明するものは一体なんなのだろうか?
何にも帰属しない自分を、誰が守ってくれるのか?
息子は今、そういう危うさを学んでいるところなのだ。
ここで親が手を出したら、いけない。
…ちなみに私が真剣にそういう気持ちになれたのはFF8のエンディングだったので、息子は早いうちにその域に達したといえるだろう!
フリーターと、ニートについてもいろいろ話した。
息子は、バイトの掛け持ちで人脈や見聞が広がったことには自信があるようで、そういう経験が無く家に引きこもる、コミュニケーション皆無な状態よりははるかに自分が成長しているという自負がある。さらに、私が否定する分、ネトゲでの交流も、ダメ人間同士の傷の舐め合いだと母親に言われないように、かなり実りあるものにしているらしい。
「ニートにくらべれば、フリーターの方がはるかにいい。けど、スーパーニートというのもあるからねえ」
と息子も私も言う。そう、引きこもりでも、ネット上での取引や、自サイトの運営だけでそこらの社員よりも稼ぐ人の存在がある。
「でもそれも、無職扱いになるかもね。小説家や舞踏家のような、才能一本でいく自由業でしょう。それはあたればすごい、けど不安定」
「そうなんだよなー俺にそういう才能はないし」
…親ばかであるが、私は息子に、それなりの能力があると思うのだが、本人がその気にならない以上、やっぱり器用貧乏というものだろう。ならば安定できるような努力が必要だ。
「俺の人生、ムーンウォーク」
とは、何年前の息子のせりふだったか。
気持ちはとても前向きなのに、なぜか後ろに下がってしまう。
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コメント
こんにちは。
私が貴女を好きだと思うのは
きっと
貴女が息子さんの医者代を、払ってあげないところなんだと思います。
えらいなぁ。
それにしても、
病気、大丈夫であることを願っております。
投稿: たかこ | 2010年6月20日 (日) 10時24分
たかこさん、ようこそ~!
そ、そんなことでお褒めいただくとはw
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年6月20日 (日) 14時45分
息子さん大学病院で検査ですか?
心配です。
就学費用という事は、やりたい事が見つかったのですね。
それにしても健康な体あればこそ。
異常なければいいですね。
投稿: みりょこ | 2010年6月22日 (火) 16時57分
みりょこさん、ようこそ~!
う~ん、まだ「やりたいこと」は未知数ですwこのまま「自分探し」で何年も過ごしてしまいそうなので、大学に行くなら、早く道を探せと尻をたたいている状態です。
病気も…心配ではありますが、私も同じ症状で異常なく、何年も生きてますので…異常が見つかれば見つかったで、対処できればまだ…
投稿: 闇鍋奉行 | 2010年6月22日 (火) 20時55分