息子とバイキンマンの男気について語る
ああ、暑いなあ。
今日は盆休みをいただいてのんびりできるものの、室温が33度、夜も30度を下回ることの無い状態だ。
まあ、会社もエアコン壊れていて大変なんだけど。
という逃げ場が無いながらも、少しでも貴重な休みを利用したいというもの。息子が教習所にでかけるとかで、じゃあ涼しい店でランチでも、ということになった。
…息子、たとえ「冷蔵庫の鳥もも肉やほうれん草使っていいからね」と言ったところで使わない。それでも自分で買ったカップめんでも食べればいいほうで、お昼過ぎに「お昼、食べた?」とメールをしたら、16時過ぎに「まだ」という返信があるのだ。
息子の部屋は西日が当たると猛烈に暑いし、そこで裸同然でネトゲに夢中…いろいろ心配な息子ではあるが、生命の維持も気になるところ。
とにかく、食べさせたい!
ジャンクフードでは摂取が難しい、ビタミンや繊維、ミネラル分を!
母性本能なんて信じていないけれど、子どもの頃から生き物を飼うのが好きなので、そのくらいの本能はある。その点は、我が子を餓死させる親よりはましか。
というわけで、カレーのランチバイキングが人気の店へ。
やはり意外と食べないのだが、とりあえずそこは息子のお気に入りで、焼きたてのナンやキーマカレーを食べていて、よかった。夫もお気に入りの半端じゃない海鮮丼の店や、馬刺しの店が盆休みで残念だったけど。
そのままぶらぶらと話をしながら漫画の豊富な書店へ。息子、あまりそこを知らなかったらしく喜んでいて、話もはずむ。
で、なぜかアンパンマンの話になった。
きっかけは、息子いわく、漫画家が犯罪を犯したところで作品が嫌いになるとかありえない、あんな表現をする芸術家が犯罪を犯すのは当然、薬物や性犯罪なんて当然だ、という主張をしたところだ。
私も、大好きな漫画家・花輪和一氏が逮捕されてしまったという新聞記事にに「すわ、何人殺した???」と反応し、幸いにも銃の不法所持程度で「え、日本刀で腹を割いたとかじゃないんだー」ととんちんかんな安堵をしたことがあるので、なんとなく気持ちはわかる。が、後に評論家の呉氏が、優れた表現者なのだからお目こぼしを、という主旨の擁護をしたときには、それは違う、と思った。
芸術家が何かしらヤバイのは知られているが、芸術家だから犯罪を認めろというのはおかしい。
で、そんなやりとりをしているうちに、「もしもアンパンマンの作者が万引きで捕まったとしたら、子どもたちはその矛盾を受け入れられないでしょう」と私が発言。息子は少し考えて反論。
「いや、それほどまでに飢えて、作者にはアンパンマンのような存在は現れなかった。だからこそ、あの作品を生んだのだと考えればいい」
息子、無駄に美声で、理知的である。
……たって、我が家ではアンパンマンって、あまり見た覚えが無い。あの丸っこいデザインで、乳幼児はたいてい夢中になるというのだが、乳幼児だった頃の息子は、ほぼ関心をもたなかったのだ。セーラームーンにはあんなに夢中だったのに!
というわけで私もアンパンマンには何の感慨もないのだが、どういうわけかアンパンマン論議になり、なぜバイキンマンはアンパンマンに勝てないのか、という視点に立った。
周知のとおり、アンパンマンの世界は、食べ物に由来するキャラクターがひしめいていて、アンパンマンはおなかをすかせた子どもたちに「僕の顔をお食べ」と分け与える。しかし、顔が欠けていたり、汚れたり、濡れていたりすると、本来のパワーを失ってしまう。そこに、ライバルのバイキンマンが攻撃してくるのだ。はーひふーへほー!
ならば、飢えた子どもが大勢いれば、アンパンマンもジャムおじさんも不利である。
あるいは、アンパンマンの顔の原料である小麦粉の供給路を断つ、などすれば確実にバイキンマンは完全なる勝利を得るだろう。
と、私は持論を展開。なぜ、バイキンマンは瑣末な戦略に終始するのか。
すると息子は気色ばむ。
「そんなレベルの低いことを言うな。バイキンマンの男気を、知らないのか。バイキンマンは、『手を洗いましょう』という子供向けのポスターに、進んで出演しているんだぞ」
息子は、今にも涙ぐまん勢いでバイキンマンを語る。
……それはたしかにすごい。
バイキンマンは、ある意味主人公のアンパンマンよりも幼児に人気がある。
バイキンマンでさえ、ごはんの前には手を洗おう、とにこにこ手を洗っていたら、幼児としては可愛いおててを洗うだろう。
しかしそれは、バイキンマンにとってアイデンティティの否定でもある。
同胞への裏切りでもあるだろう。
「だろ???『手を洗う』だけで、どれだけの菌が死滅するんだか。自殺行為だろう!
俺はこんな犠牲を払ってまでも、幼児に手を洗うことを奨励するバイキンマンに、男を感じる。
彼にとっては、硫酸で手を洗うに等しいぜ!」
「うーん、それは、アンパンマンが『顔を洗いましょう』のポスターに出るくらいの犠牲?」
アンパンマンは、顔が欠けても、汚れても、そして濡れていても力が出ないのだ。
そんなもんじゃねーーー!と息子。
そんなことを街中や電車で語る母子。途中で、私の顧客様にもばったり会うしorz
「バイキンマンと、もやしもんの菌たちの会話的な同人誌でも作ったら?」
「アンタが描けよ」
知らんわ。
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