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2011年1月 8日 (土)

某シェフと「おせち事件」を語った

2010年は、「おせち事件」で始まった。

とある新興飲食チェーンが、グルーポンというサイトの誘いに乗り、ユーザーが集まれば半額!と、おせち料理を出したのだ。100個程度の見込みだったのが、注文が500来た。

その段階で青ざめるのではなく、オーナーは「おせちだけで1店舗分の利益が出た。まだまだ仕掛けますよ」とご満悦のつぶやきをツイッターに残した。

「えええっ!500!」
その事件をちょっと知っていた某オーナーシェフは、私の話に驚いていた。

思ったとおりだ。
「もしもうちがおせちをやるなら、まずは限定20個。3万5000円。普通は原価30パーセントだけど、おせちとなれば50パーセント。それで上手くいったとして、50個。友人の店ではおせちをやっているが、限定50個で、徹夜だそうだ」

私もまあ、たかが家庭用の1個のおせちに全力投球したら最低でも3日はかかるのを経験しているし、他の寿司屋で、おせちのに使うからすみを秋から仕込んでいるのを見ているし、飲食店が顧客様の信頼をキープしたままで「さすがはこのお店」とご満足いただき、次につなげるのを見ているので、初めてのおせちで100、1万円で受けるのも、それが500になって喜ぶのも信じがたい。
自分の店のキャパシティーを越えて受注して、いいことなんかない。
このシェフでは、30人くらいは受け入れられるスペースがあるが、
貸切で同じメニューというのでもなければ、20人程度しか予約を受けないという。
そうでないと、十分にご満足いただけない、ということもある。
それもまた、オーナーシェフだから言えることであって
「オーナーが別にいると、そういうわけにもいかない。もういっぱいいっぱいなのに、オーナーはもっと入れろと言うし、食材が切れてしまっても、パスタでも何でもいいから出せという。自分としてはそれなりにおいしいものを出したとしても、お客が満足しなければ意味は無い。『何この店!』なんていう言葉も聞いた」
結構有名店のシェフを担ってきて、それなりに名も売れている某シェフだが、それでも田舎町の「オーナーシェフ」になったのは、そういうことなのだ。

高級店を利用するのは、それが大切な席だからだ。
接待、デート、記念日…相手を喜ばせるのに失敗できないからこそ、
高い金を払って使う。
だから、お店も、十分なキャパシティを見込んでサービスする。

数字しか見ない、というオーナーとは違う、現場で料理を作り提供するオーナーシェフの心意気を感じた。

なお、こちらのお店はクーポン関係をとても嫌う。

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