水域~水がつなぐ人々の記憶~
実はこのところ体調が優れず、会社から出社能ず、ということになってしまっている。
山のような薬、どうも誤診もあったようだけど、肺炎→インフルエンザ→謎の気管支炎かもの呼吸器系疾病マーチ。精密検査するにも時間がやたらかかってしまう。入力する仕事くらいは…と在宅でちょっとずつ作業しているが、精神的にまいる日々。
だって、今実質営業は自分だけ。
その自分が歩けず、電話で話もできずって……本気で自分どころか会社全体の危機だ……いや、そのくらいうぬぼれさせてもらえれば、だけど。
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水域(上) (アフタヌーンKC) 著者:漆原 友紀 |
「蟲師」の漆原友紀最新作ということで、ふらふらしながら購入。
本当に最近は女性漫画家の骨太な作品が多くて楽しい。
渇水に苦しむ街。水泳部員千波は、熱中症なのかふらりと倒れ、以後夢の中で美しい滝のある山村を訪れることになる。
人がいるような気配があるのに誰もいない、どこか懐かしい村。
そして決まって、清らかな淵から「澄夫」という少年があらわれ、どうみてもおじいちゃんのような「父ちゃん」と、タイルの風呂に入ったり、蚊帳をはって眠ったりの生活を送る。
「スミオ」
目覚めたときにつぶやいたその言葉が、千波の母を動揺させる。「言っていないはずなのに…」
女三代、昭和初期から、平成3年の大渇水をモデルにしたと思われる「水」を巡る物語が始まる…
☆
例によって息子に勧めてみたが、どうも息子は少し読んで脱落したようでorz
うむ、私もさらっと読んだだけではよくわからなかったかもしれない。ちょっと連載中に立ち読みした部分は、まるでありふれたNHK朝の連続小説のようだったし。
しかし、検査で数時間拘束されるなかで繰り返し読むと、しみじみと数々の伏線に気づかされ、緻密に描かれた「村」の様子がまるで自分の故郷のように懐かしく思われた。
私は典型的な頭でっかちの都会っ子だったが、いとこたちと川遊びをした経験が無いでもない。ダムにこそなっていないけれど、もうあの川は子どもの立ち入りが禁止されたし、あの別の川も遊ぶ子どもどころか、集落自体がなくなりそうだ。本とテレビにしか興味を示さない幼い私を遊びに連れて行ってくれたたのもしいいとこは、今はもう亡き人か……
地域も何も違う思い出しか無い自分だが、あの「村」にはまるで自分の思い出の地のように思われた。なんとすごい描写力だろう。
ダムの底に沈む村。
ご先祖様が切り拓き、子孫が守ってきた村。
よそに嫁に行った身がなおありがたいと思う「帰るところ」……
数十年前にはそんな話が何度もニュースドキュメントで扱われていて、わかっていたはずの哀しみが、他人の話ではなく、まるで自分の物語のように思えた。
個人的にクライマックスだと思える2巻前半には、本当に涙が止まらなかったし、澄夫の指差す先に聳え立つダムに身震いした。
「…これは映像化したらすごいね~…実写でもいいし、ジブリアニメとかになったらすごいことになりそう」
別にそう望むわけでもないのだけれど、そう口にしたら息子が激しく同意してた。
☆
息子は本当にどうなったんだ!
あれほど不運を嘆いていたのに、ひとつバイトが決まったら、盗難自転車は見つかる、縁が無くなったと思われたところから単発の仕事が次々舞い込む、落ちたと思ったバイトが、今頃になって来てほしいと連絡があり、お断りするはめに……
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コメント
闇鍋さん 大丈夫ですか?
きっとお疲れが出たのでは…と思います。
何かの本で、子どもの精神状態がとても悪い時は、案外 親は平気で、
子どもが落ち着いた頃に、親が調子を崩す という事が あるそうです。
我が家が 正にそうなのですが…。
息子さんはラッキー続きのようで(o^∀^o)良かったですね。
闇鍋さん どうぞご自愛くださいね。
投稿: みりょこ | 2011年2月 1日 (火) 21時48分
みりょこさん、ご心配かけてすみません。
今日はなんとか出社できて、…復活…できるかな?というところです。こんな小さな会社で2週間も休む(自宅で少しは仕事もしましたが)という重みのほうが、むしろ辛かったり。
コメントを拝見しますと、ご子息も落ち着かれて一段落?
人生山あり谷あり。
いろいろ苦労しますが、それもまた、人生ですね。
投稿: 闇鍋奉行 | 2011年2月 3日 (木) 00時15分