歴史の中での「勝ち組」
本当に、小林よしのりはどうなってしまったんだろう。
いろいろ言いたいことはあるが、とりあえず皇統についてはこちらの本であらかた反論・説明してくれているのでご紹介。
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予約殺到で部数を増やしたそうだが、それでも5万部しかないという。かなりトンデモなさすぎる(本人、気づいてないの???)「新天皇論」に疑問を感じた人へのアンサーであり、結局皇統って何なの?天皇を通して、日本は何を守ってきたの?ということが、いろいろな立場の書き手によってわかる内容だ。
特に評価したいのは…文字を読むのが辛くなってきた老眼気味の私にもうれしい、45ページにある「『正当の理念』による天皇系図」(神皇正統記による)だ。
これは、河内祥助氏のまとめたものに、新田均氏が手を加えたものだが、「天皇」の定義が固まる飛鳥―奈良―平安時代の天皇家家系図が、まさしく男系で繋がっていることが一目でわかる。
これこれ、これよ!
私は専門家ではなく、一時期天皇家の歴史にはまったことがある程度で、たしかその当時はバリバリフェミニストだったと思うのだけど、ちょっと勉強しただけで、この系図がしっかりイメージできた。
きっかけは、「日出処の天子」や「あさきゆめみし」といった漫画ではあるけれど、興味を持てばさらに知識を得たいと思うもの。「日出処の天子」は、実際の歴史の本を読んでますます面白く感じられた。
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これは、少女漫画界に残る「怪書」だと思っていい。
あの聖徳太子が絶世の美少年で、超能力者で、女装して陰謀策謀を繰り広げる。
聖徳太子が、蘇我蝦夷恋しさにあんなことやこんなことを。
さらにはその妻である刀自古郎女もあんなことに。
まさに荒唐無稽としかいいようのないトンデモなさ。
だが、最近もとある男性実業家が心のバイブルのようにテレビ番組であげていたが、この作品は意外な層に受けている。
これだけとんでもないのに、きっちり史実とつじつまが合うって!
……私は、蘇我蝦夷が、血の一番近い山背大兄皇子を天皇に推さなかった理由を、この漫画と続編の「馬屋古皇女」以上に納得させる本を読んだことがないw
で、あれこれ読み、たいして興味もなかった天皇の歴史に興味を持ち…ことに近親婚の激しかった飛鳥~奈良時代はその血の繋がりが複雑で、家系図一枚見たところでわからない。
一度は母系で家系図を組み立てて遊んでみたりもしたのである。
で、改めて「日出処の天子」を読み返すと、登場人物のその後も目に浮かぶ。
蘇我家の宗家…蝦夷のあとは、「大化の改新」で誰もが知る。
上宮王家…聖徳太子の血筋も、その前に滅んでいる。
華麗な女帝・推古天皇も、皇子はどうも成人できなかったと見えるし、
長女の大姫(菟道貝蛸皇女)・は聖徳太子に嫁して子に恵まれず。
ちらりと、いいかげんに描かれたその妹・小墾田皇女が自嘲気味に語った嫁ぎ先こそが、重要だった。
押坂彦人大兄皇子。
この作品中にも何度か出ているが、実に地味で覇気が無く、主人公厩戸皇子の引き立て役に徹したようなキャラクターだった。
が、歴史上では勝ち組。
この作品の主要人物の血筋が、あらかた滅んでいるのに、このいつも「コホ」と咳こんで、淡水を連れまわす貧相な彦人皇子の血筋が、今の天皇家にまで続いているのだ!
それも男系で!
恐らくこの人の名は普通の中学生レベルの教科書には載ってもいないだろうし、赤線を引くこともない。
しかし「これ、試験に出ますよー!」な人物たちよりも、はるかに勝ち組だといえるだろう。
その彦人皇子が、「別冊正論」の神皇正統記による正当な家系図の太い幹に名を刻んでいる。
申し訳ないが、有名な天武天皇も持統天皇も聖武天皇も、ここでは枝の一本に過ぎない。
Y遺伝子はものの例えだろうが、天皇の歴史を知れば知るほど、いかに神に連なる男の血を尊び、意地でも守ってきたかというのがわかってくる。皇統の危機などは、長い歴史で何度もおきていて、「男系男子が足りない!」と小林よしのりのいうような意味では今に始まったことでは全然ないのだが、本当の意味での皇統の危機は、新天皇論でも詳細を避けている称徳天皇の時代以来、まさに悠久の1000年の時を越えたものだと思う。
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