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2011年4月26日 (火)

稼げるって素晴らしい

娘が何度も落ちた末に、ようやくバイトを始められた。
わずかではあるがお給料を得て、娘は私にヤフオクをねだってきた。
【送料無料】【smtb-u】【中古】PSソフト どきどきポヤッチオ【10P22Apr11】【画】


古いPSソフトなのだが、うっかり割ってしまったのだ。
ギャルゲーといえばギャルゲーだが、深い世界観とほのぼのとパン屋の手伝いと村人らとの交流にふける「夏休み」は、わくわくどきどき。子どもらもまだ小さかった頃だが、お試し版ではまってみんなで遊んだだけに思い出深い「場所」なのだ。
しかしこのソフトはマニア的な人気があって……というか、マイナーで(苦笑)今は中古でしか入手できず、その数も少ないのでめったにお目にかかれないし、ヤフオクなどでもほぼ定価、プレミアムがついてしまうレベルで、皆あきらめていたのだ。

「おかん、即決3000円!これ落札して!」
娘は、記念すべき初めてのバイト代を、これにつぎこもうというのだ。あれ、前に、壊れた行平鍋を買い換えてくれるとか言ってなかったっけ。

しかしまあ、娘も働くということを通して社会勉強をし、そして自分で稼いだ金で、自分の欲しいものを買う、という喜びに目覚めたようだ。よしよし。

息子であるが、先日頭を抱えていた。


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「あああああ、おかん、あと1個だってよ!」
これ、以前にも日記に書いたと思うが、もうとうに出たソフトだ。

やはりPSのカルト的名作「テイル・コンチェルト」の続編で、私も息子も発売が発表されたときには狂喜したものである。
…しかし、限定版も含めて発売されたとき、息子は失業していた。
多少の蓄えもほいほい使い果たし、もはや親の庇護の下で生きていくのがせいぜい、という状態。
「…ねえ。…限定版出るんだよぉ…」

暗に、私に買ってくれとせがむ。

私は、自身がゲーム好きということで、昔から「物分りのよい親」でありすぎた。

おねだりしなくても、ママがほいほい買ってくる、という環境で、息子は育ってしまったのだ。

ぬぅ… 限定版……
あの「テイル・コンチェルト」の続編…
ムービーだけでも見たいものだし、設定資料とかついていたら…ああ、あの可愛い獣人たち!
私もよだれをたらしそうになったが、…もちろん今の私なら、それを買うのは造作も無いことだが…

私は無視した。
ここで買ってあげてはいけない、と思った。

で、息子は、やはりかなり苦労しながらようやくバイトに受かり、私に月2万、父親に携帯代1万を収め、失業中にお世話になった方々にもお礼をしながら、残ったお金で、ネットであと1個だけあった限定版を、手に入れたのである。

今のバイトは4月までと宣言されてしょげていたが、本日もっといいバイトに採用された息子。
「おかんおかん」と、その限定版についていた特典映像などを見せてくれた。……ああ、かわええ…なんと素晴らしい世界観…映像作品として完成したら、もっともっとファンが増えそうだ。

…と、息子は「母親にゲーム映像を堪能させてあげる」ことに成功し、喜んでいるのである。
自分の力で手に入れることの大きな喜び。
親にいつまでも「食わせてやってる」と言わせない喜び。

10代後半の子に、それを身をもって味あわせるのが、親の務めなのである。

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2011年4月15日 (金)

息子に定価弁当を買い与えてみた

…いやあ。

ラノベ「ベン・トー」を読了してみたのだがなかなかに楽しかった。
最近は仕事がいろいろ変化して、じっくり本を読む環境に無かったのだが、少しずつでも読めたし、夜毎その話題を息子とするのが楽しかった。

…で、今日はお昼前にちょっと家に立ち寄れる状況で、まあ自分だけ飯を食うのもなんだが、と一応スーパーで安い弁当を定価で買って帰ったのだ。

コストパフォーマンスだけは素晴らしい弁当。
白飯の上に、色とりどりのてんぷらをのせ、甘辛いつゆをかけた、シンプルな「欲張りてんぷら弁当」399円。
えびやナス、いんげん、細竹など具は豊富。細くともえびは2尾も入っているあたりが秀逸だ。
ちゃんとお口直しのガリも添えられている。
これが400円払ってお釣りが出るとは、涙が出る。カロリーも十分で、大震災でも生き残れる気がする。

帰宅すると、やはり息子は眠っていた。
震災以来、上から本が落ちてくる寝床ではなく、PCの前の椅子で寝るのが普通になってしまった息子。
忙しいし面倒なので、一人で食べ、また出る時に「弁当が台所にある。半額ではないがな」とメールした。

夜帰宅して、「どうだった?」と聞いてみた。
息子は少し迷いつつも言った。
「……まずかった」

そりゃそうだろう。
コストパフォーマンスは絶賛に値するが、しょせんは作り置きのスーパーの弁当だ。ことに揚げ物は、いろいろ厳しい。しんなりとしたてんぷらに美味を追究するほうがおかしい。

しかも、定価だ。最初から、半額設定かという、定価だ。
あの小説を読んだあとで、満足できるはずがない。

「おまけに、オカンに買い与えられた弁当だからな」
と言うと、息子は超溜飲が下がりますという体で、拳を握って同意した。
「そうなんだよ! 戦って手にした弁当ではないどころか、自分が食べたいと思って手に入れたものではないんだから!」

おごってもらってその言い草か、とは思うが、これもまた真理。

そう。
おいしいものを食べたければ、戦わなくてはいけない。
人の情けに頼っていてはいけない。
親の庇護などもってのほか!

半額弁当を命がけで奪い合うという、かなりばかばかしいことを真剣に描くラノベが、息子の就労意欲に火をつけた。

空腹を理由に、半額弁当を奪い合う青春は、もはや取り戻せない。

今、自分は、食いたいものを、与えられるのではなく自分で手に入れるべきなのだ。

ああ、私にも覚えがあるが、それが自立への一歩だと思う。

2月に決まったいいバイトは、4月までと宣告を受けた。5月からの道を探らなくてはいけない。
親に恵んでもらった定価弁当の心理的なまずさに、息子は奮起したようだ。
…早く、自分で稼がなくては!

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2011年4月10日 (日)

3月11日以降の漫画の読み方

子どものときに呼んだ漫画が、自分の成長につれて感じ方が変わるようになることがある。

たとえば、「ベルサイユのばら」など、小学生の頃はロザリーの視点で楽しんでいたようなのに、大人になるとオスカルの視点に、そして結婚し人生の苦味も知ると、なぜかこれまでまったく関心がもてなかったフェルゼンの献身的な愛に涙したり。
アニメ「火垂るの墓」だって、あのおばちゃんはなんてひどいのだろう、と感じていたのに、いざ自分で家庭を切り盛りするようになると、おばちゃん気の毒に、あのご時世じゃ自分の家族だけで精一杯よねぇ、……清太さん、甘すぎるわ!せめて家事くらい手伝いぃ!などと叫んでしまう。

…そして、3月11日の大震災以降、なんだか自分が変わってしまったようで、今はナウシカを見ても未来少年コナンを見ても、これまで以上のリアリティを感じてしまう。

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)Book進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

著者:諫山 創
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生物の概念を越えた「巨人」が世界を闊歩し、ただひたすら人間を食う……

あの理不尽な存在の「巨人」への漠然とした恐怖が、今は妙にリアルである。
この世界の人々は、身長15メートルほどの巨人襲来に備えて、最大50メートルもの壁を立てて備えていた。100年も、その世界は平和だった。なのに突然、50メートル以上の巨人が現れて簡単に壁を撃破、それまで主人公たちが住んでいたエリアは巨人たちに蹂躙され、愛する家族たちも飲み込まれ、故郷は失われる……

津波に関しては世界一の備えを誇っていた町々が、想像以上の大津波に襲われ飲み込まれた。
なんという理不尽。

もうだめだ、人類最期のときをせめて家族と過ごしたい…!
死に方くらい自分で選びたい…
巨人への恐怖に克てず、絶望し逃げようとする兵士たち。
彼らを鼓舞するのは
「その巨人の恐ろしさを自分の親や兄弟
 愛する者にも味合わせたいものも!
 ここから去るがいい!」
「我々はこれより奥の壁で死んではならん!
 どうかここで
 ここで死んでくれ!」
という言葉だ。

……

軽々しくここで言うのもなんだが、
今の日本には、このくらいの厳しく力強い言葉が必要なのではないか、と思う。

目には見えないが、たしかに巨人たちは侵攻しているように思える……まだ食い足りないのか、不気味な笑みを浮かべてじわじわと日本を歩いている。

この圧倒的な力に対抗する物語に、自分も鼓舞されたいと思う。

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2011年4月 3日 (日)

息子が泣いたラノベ

息子が、「こんなん買ったんだけど」と文庫本を見せた。

ベン・トー サバの味噌煮290円 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)Bookベン・トー サバの味噌煮290円 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

著者:アサウラ
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なんでも、スーパーの半額の弁当を巡って戦う、という話だという。
私はラノベはあまり興味が無いが、半額シールは萌えポイント。ほほう、と顔を向ける。
そして息子は自慢の低音美声で朗読する。

「需要と供給、これら二つは商売における絶対の要素である。
 これら二つの要素が寄り添う流通バランスのクロスポイント……その前後に於いて必ず発生するかすかな、ずれ。
 その僅かな領域に生きる者たちがいる。」

ほう。
なんか面白そうだなあ。
「俺もまだこれから読むんだけど、なんかタイトルにつられて衝動買いしちゃって」

全然足りないとはいえ、少々バイト料が入って、息子はまたあれこれ買い捲っている。少しは貯めないと…とも思うが、震災で落ち込んだ経済をまわすんだ、という。
いい浪費の言い訳だなw
…まあ、家で私がそれを言い出したのだけれど。私も顧客さまのところで少々おごったランチを食べ、服や花を買うなどいつもよりも少々贅沢をしている。経済をまわさないと、被災者を支えられないし、国の復興もできなくなってしまう。…娘までそれを言い出したのにはまいったが。

息子はその本を持って部屋に消え、またふらりと現れた。なかなか満足したらしい。
ただ、泣くようなものではないようなのに、息子は涙ぐんでいる。

息子は、中学生活のほとんど、高校生活の1年ほどを「不登校」で過ごした。

当時、本人はそれが自分にとって正当な行為であると主張していたのだが
「俺は、自分が失ったものに気づいた」

登場人物の多くは高校生。もちろんいかにもラノベらしい世界なのだが、若さ、空腹、そして青春。
「今俺が望んでも、もう取り戻せないんだな…」

…まあ、今から中学や高校には行けない。
喧嘩をしたり、先生に反発したり、学食や近所の安い店で空腹を満たしたり…そんなことも、10代ならではの経験だ。
それを、自らの選択とはいえ、失った。
卒業するときには二度と帰りたくない、と思ったのかもしれないが、1年もたつと懐かしく、また本人も少々成長して、許せなかったことが今なら理解できるようになってもいるようだ。

…不登校というのは、そういうことだ。

涙が本格的に出てきた息子は私にこの本を貸してくれ、また部屋に引っ込んだ。

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