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2011年4月 3日 (日)

息子が泣いたラノベ

息子が、「こんなん買ったんだけど」と文庫本を見せた。

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なんでも、スーパーの半額の弁当を巡って戦う、という話だという。
私はラノベはあまり興味が無いが、半額シールは萌えポイント。ほほう、と顔を向ける。
そして息子は自慢の低音美声で朗読する。

「需要と供給、これら二つは商売における絶対の要素である。
 これら二つの要素が寄り添う流通バランスのクロスポイント……その前後に於いて必ず発生するかすかな、ずれ。
 その僅かな領域に生きる者たちがいる。」

ほう。
なんか面白そうだなあ。
「俺もまだこれから読むんだけど、なんかタイトルにつられて衝動買いしちゃって」

全然足りないとはいえ、少々バイト料が入って、息子はまたあれこれ買い捲っている。少しは貯めないと…とも思うが、震災で落ち込んだ経済をまわすんだ、という。
いい浪費の言い訳だなw
…まあ、家で私がそれを言い出したのだけれど。私も顧客さまのところで少々おごったランチを食べ、服や花を買うなどいつもよりも少々贅沢をしている。経済をまわさないと、被災者を支えられないし、国の復興もできなくなってしまう。…娘までそれを言い出したのにはまいったが。

息子はその本を持って部屋に消え、またふらりと現れた。なかなか満足したらしい。
ただ、泣くようなものではないようなのに、息子は涙ぐんでいる。

息子は、中学生活のほとんど、高校生活の1年ほどを「不登校」で過ごした。

当時、本人はそれが自分にとって正当な行為であると主張していたのだが
「俺は、自分が失ったものに気づいた」

登場人物の多くは高校生。もちろんいかにもラノベらしい世界なのだが、若さ、空腹、そして青春。
「今俺が望んでも、もう取り戻せないんだな…」

…まあ、今から中学や高校には行けない。
喧嘩をしたり、先生に反発したり、学食や近所の安い店で空腹を満たしたり…そんなことも、10代ならではの経験だ。
それを、自らの選択とはいえ、失った。
卒業するときには二度と帰りたくない、と思ったのかもしれないが、1年もたつと懐かしく、また本人も少々成長して、許せなかったことが今なら理解できるようになってもいるようだ。

…不登校というのは、そういうことだ。

涙が本格的に出てきた息子は私にこの本を貸してくれ、また部屋に引っ込んだ。

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コメント

いつも引き込まれてしまいます。
また前を向いて歩いていく元気をもらえました。

また、日本経済を活性化させるための消費行動
その心意気にも…

投稿: 野原 | 2011年4月 6日 (水) 07時08分

野原さん、ようこそ~!
いやいや、うちはど貧乏なので志がいかにあろうとも、たいした貢献はできません。が、募金はもちろんするとして、その分我慢…なんかしないで、美味しいものを食べたり、おしゃれをしたり、好きな漫画やゲームを買ったり、そういうことは我慢しないで…あ、お店がちょっと節電で暗かったり、紙が足りなくて質が落ちたりとか、そういうことは我慢するとしても…そうやっていつもどおり、楽しみましょう、ということです。
被災者の悲しみや苦しみを共有するのも大事ですが、経済を考えると、被災者の皆さんの分も、消費を楽しまなくてはいけないんです。

投稿: 闇鍋奉行 | 2011年4月 6日 (水) 21時28分

息子さん泣いちゃったんだ~(;_;)


うちの息子も、ずいぶん立ち直ったとはいえ、中学の話をする時は、過去がフラッシュバックするのか、つらい表情になる時があります。


末っ子が昨日 中学の入学式で、自分のお下がりの制服を着た弟を見て、何を思っているのか…とふと考えます。


投稿: みりょこ | 2011年4月 8日 (金) 08時41分

みりょこさん、ようこそ~!
いやな思い出も、大人になれば大切なものになります…
10代は、やはりかけがえのないものです。

投稿: 闇鍋奉行 | 2011年4月 8日 (金) 23時53分

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