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2011年6月28日 (火)

キングダムハーツ寺にあのヒトが

何もかも厳しい我が国ではあるが、ヒーローになれない私は黙々と働くしかない。

働いて、稼いで、税金払って、ランチ食べたり欲しいものを買ったりして少しでも経済を潤し、未来を担う子どもを育てる。
ごく当たり前の、純粋な利己的行動だが、それが利他的行動につながる。

てな日々を送りつつ、もう限界な会社のために歩き回る。

と、久々に「キングダムハーツ寺」のそばを通った。

何度か記事にしているが、キングダムハーツなどのフィギュアと、お寺の説法の見事なコラボレーションを展開しているお寺だ。最近はワンピースネタが多く、ごぶさたしていたが…

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鳥は飛ばねばならぬ

人は生きねばならぬ

う~ん、深い言葉である。
まさに今、日本人がかみ締めなくてはいけない言葉だ。


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か、カダージュ???

なんというセレクトw
「ファイナルファンタジー7アドヴェントチルドレン」という映像作品に出てきた変態……もとい、セフィロスコピーの一人だ。我が家では昔から、子どもの前髪が伸びすぎたときなどに「それじゃカダージュだよ!」と言って諌め、散髪する。
そういう位置にあるキャラクターである。
さすがキングダムハーツ寺、そのセレクトは並ではない。
で、カダージュのフィギュアはあまり見たことがないのでしみじみと鑑賞。

大体、仏像やマリア像など宗教芸術というものは、文字も読めず難しい言葉も解せずという庶民を含め、誰にでもその教えやありがたみがわかるようになっているものだ。
衆生を救うために、やたら顔や手があったり、手の指には水かきがあったり、腕が長すぎたり、という解説を、庶民はありがたく解釈する。
ああ、神様仏様に見守られ、恥ずかしくないように日々真面目に働き孝養に尽くせば、あのお手に掬われるのだ、と勇気付けられ喜捨するのだ。

しかし、飛ぶとは…
ジェノヴァ細胞を受け継いだ「ソルジャー」や、「セフィロスコピー」は、片方だけ翼を持ち、飛ぶようになる…というのが、キングダムハーツシリーズやクライシスコアで追加された。
その不安定さ、人ではないものに変化する恐怖などが、クライシスコアでは描かれていた。
カダージュもまた、そういった葛藤の中から、クラウドを「兄」として、セフィロスコピーを家族として拠所にすることになったのだろうか。

ああ、これを見るまでは、ただの非常識なおにいちゃん集団の頭としか認識していなかった。
飛ばなければならず、生きなければならない彼らに思いが及ばなかったことを恥じた。

まことにありがたいことである……(-人-)

で、ふと足元を見ると…
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不安定だったのか、ガムテープが!

私だったら、衣装に合わせて黒いテープで固定してしまいそうだが、ガムテープとは……

いや、なんとなくカダージュっぽかったw

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2011年6月25日 (土)

ああ岩手愛

先日、岩手県内陸部に行った。
夜行バスの途中、福島あたりだろうか、高速道路が曲がっていたようでものすごい勢いで弾みまくったが、朝到着した街はいたって平静。

一見して被害のあとは見えず……うちの住む関東は、今もブルーシートの屋根がたくさん見られるし、倒壊の恐れ有りのビルや家屋などもあちこちにある……あちらは3日ほど停電になったそうだが、建物の被害は内陸部ではそれほど無く、沿岸部が津波で大変だったということだ。
「東日本大震災」という名は伊達ではない…。
県や地方のレベルではなく、本当に広範囲で被害が出たというわけだ。

さて、本屋に行って気になる漫画を手にする。

とりぱん(11) (ワイドKCモーニング)Bookとりぱん(11) (ワイドKCモーニング)


著者:とりの なん子

販売元:講談社

発売日:2011/06/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する


とりぱん大図鑑 (ワイドKC)Bookとりぱん大図鑑 (ワイドKC)


著者:とりのなん子ととりぱん研究会

販売元:講談社

発売日:2011/06/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する


ゴーガイ! 岩手チャグチャグ新聞社 2号目 (KCデラックス)Bookゴーガイ! 岩手チャグチャグ新聞社 2号目 (KCデラックス)


著者:飛鳥 あると

販売元:講談社

発売日:2011/06/13
Amazon.co.jpで詳細を確認する

偶然にも、この著者はどちらも岩手県内陸部在住の女性漫画家で、岩手を舞台に作品を展開している。

うーん、私事だが、本屋で手にした本に何か運命を感じることってある。
前に、古本屋でたまたまいがらしみきおの「かむろば村へ」と五十嵐大介の「カボチャの冒険」を手にし、
「あれ?どっちも『いがらしさん』が東北で農村暮らしをする話でないか?」
とちょっと不思議に思ったり。

というか、私はどんだけ岩手作家が好きなんだかw

「とりぱん」はもう、さすがとしか言いようが無い観察力と感性で、東北の四季と鳥や虫たちをユーモラスに描くし、大図鑑の方も思ったより楽しい。エナガの現物はこんなに可愛いのかとか、リアルコムクドリカップルを見て、あのバカップル会話が聞こえてきそうで吹いたり。
「ゴーガイ!」の方もご当地ネタを紹介しつつふんばる女性記者のお話が続く。わりと内陸部の話題が多いが、今回大船渡の話があった……
で、両方とも3月11日のルポコミックがあった。
どちらも内陸部の自宅周辺での被災なので、停電と買出しの苦労が中心。それぞれに、「あの日」が描かれている。

そういえば、最近表紙買いしたこの本

ブッシメン!THE IMAGE MAKER (1) (イブニングKC)Bookブッシメン!THE IMAGE MAKER (1) (イブニングKC)


著者:小野 洋一郎

販売元:講談社

発売日:2011/05/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する


も、作者が仙台で仕事をしているため、震災ルポがあった。

昔は漫画家といえば東京というイメージだったけど、東北在住で活躍する作家さんて、結構多いものなのだなあ……

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2011年6月22日 (水)

可愛い子のマウスを取り上げろ

一昨日の朝、私はPCの状態がよろしくなく、焦っていた。

シャットダウンができていなかった。
再起動も、シャットダウンもできない。タスクマネージャーは出るけれど、何をどうしていいかわからない。

で、息子の部屋に飛び込むと、息子は起きていた。

早起きしたのではなく、相も変わらず夜明かししたのだがorz

「パソコンが動かん」
「シャットダウンすれば?」
「それもできん。強制終了しても、元の状態に戻る」
「はぁ? わけわかんないし」
「とにかく見て」

息子は不機嫌そうにやってきて、ペンタブが汚ねえのなんのと言いながら、簡単に再起動した。
「できるじゃん」
えー。
タスクマネージャーと、方向キーと、ペンタブもペンを認識しない状況で、一応再起動のUは何度も押したのに。
「おかん、これな」
もう一度、タスクマネージャーを表示し、息子はAltキーを押しながらUキーを押した。
簡単に、再起動した。

「そこかあ~」
私はこれでも、この年の割にはPCと仲良しだと思うのだが、息子の「PCは友達」っぷりには完全に適わない。ああ、PCに強いオタク息子がいてよかったわ。ありがとう。本当にありがとう。
さっきまで不機嫌だった息子の顔も、なんとなく緩んできた。
「まあ俺はキーボードだけでも大抵のことができるしな。オカンにマウスを取り上げられたことがあったろ?」

ああ、そういうこともあったっけ?
ゲームにしろ、PCにしろ、没頭しすぎる幼い子を諌めるために、私はいろいろしたのだった。
覚えていたのは、ルーターとつなぐケーブルを抜いて隠したこととか、ログにパスワードを設けたことくらいだが、マウスも隠したっけか。
「ああ、マウスを取り上げられた。だから俺は、キーボードで大抵のことができるようになった。あと、パスワードをやられたときには、自分で考えてそれを突破し、逆にあんたのログにパスワードを設けることを考えた」

…ああ、今思い出しても腹が立つ。
臨床心理士さんに「この子は、『困る』ということができない子ですね」と言われたが、全くその通りだ。
困らせようにも、このように自力で解決する能力があるので、反省しない。
普通なら、子どもは簡単な罰を与えるだけで困って、追い詰められて、反省して、謝る。
息子は、無駄に解決能力があるおかげで、反省し、更正することができなかったのだ。
うちの場合は、幸いとても貧乏だったので早々にバイトに出し、そこで親ではない人たちにもまれてようやく「困る」ということを覚えられたのだが。

結局、子どもを困らせるということは重要なのだ。
素直に反省してはくれなかったが、息子はそれで考え、解決する能力を身につけたし、それでどこに行っても一目置かれる(時にはいやがられるけど)し、祖父母も、問題のある孫にお小遣いを与える名目として、「PCメンテナンス係」に任命した。月に一度は顔を出し、PCが問題なく動くようにチェックしたり、インストラクターを務めるという仕事で、高校生時代は毎月5000円ももらえていた。

それもこれも、私が息子を「困らせた」おかげか。

結論は、そういうことだよね、というドヤ顔の私に、息子は無言で「おかん、ありがとう」の顔をした。

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2011年6月19日 (日)

可愛い妻には外食をさせろ

最近、料理関係の仕事先と話が盛り上がる。

ただでさえ不況、社会構造の変化で厳しい者同士でもあるが、そこに震災と放射能のパンチ。悩みを伺いつついろいろと。

思えば、自分がかなりの食いしん坊で、多少は料理をやり、結構マニアックなものについても知識があることに救われた。飛び込みで営業にいったって、大抵は冷たくあしらわれる。しかし、「お、それがわかるんだ」となると心を開いてくれるシェフは多い。

いきなり捌いていた魚をつまんで見せ、「これ、何かわかる?w」とやったシェフもいる。
「…カマスですか…?」
「……ま、まあ、カマスくらいはわかるわなあ!」
と慌てたがwその後心を開いてくれたりとか。

ふぅ、魚図鑑を見るのが好きで助かったw

小さい頃から、笑うこともろくに会話することもなく、ただただひたすら本や漫画ばかりを友にしていた、今なら絶対に自閉症診断が下ったであろう私。
大変に問題のある子だが、それでも知識は私を救ってくれる。

このとき気づいたのだが、私はカマスを食べた記憶が無い。
で、調理した記憶も無いのだ。

食べたことがないもんは、作れる気がしない、というのが私の持論だ。

昔、今の夫を両親に引き合わせたときのこと。
銀座の料理屋での会食だった。まあ、朴訥な夫は両親に好感を与え、和やかに宴は進んだ。

さて、私の父は、これまた今ならアスペルガーとか人格障害とかの診断が下ってもおかしくない人間である。
超高学歴で超大手企業に進んだのだが、この人格はすごい。これでも一族の中ではましなほうなのだそうだが、どこに行っても身内、とくに自慢のはずの愛妻を大声でこき下ろすという癖がある。
この席でも、初対面の婿候補相手に放言し始めた。
「旨いな、この料理は。このコ(妻)なんか料理が下手で、こんなもん、食わせてくれん」

はあ、また始まった…
私も母もため息をつく。
美味しい料理も台無しだ。ここがどういう場なのか、高学歴でも理解できないのか。
一応「それにひきかえ奉行は料理が上手い」と私を褒めてはいたのだけど、それでも納得いかない。
私の中でずっとふつふつと煮えていたものが、噴出した。

「私も、食べたこと無いものは作る気がしないわ。今私がいろんな料理ができるのは、社会人になっていろんな店で美味しいものを食べているから。妻の料理が下手だというのは、妻に美味しいものを食べさせてないってことだと思う。自分が美味しいと思ったものはどんどんママに食べさせればいいじゃないの」

その後、両親はあちらこちらへとグルメ三昧。
今、母の料理はとても美味しい。

私自身、母の料理が(自粛)だったので、給食とか外食で「こんな美味しいものがあるのか!」「これはどうやって作るのだろう!」というのが料理をする原点だったりする。
だから、学校給食というものがあるのは、子どもの食を広げるのだから賛成だし、外食もいい。
うちの息子も娘も、最近は小金を持ったので、私の料理を放ってあちこち食べ歩いているようだが、それもいいと思う。
息子なんか、カルボナーラにこだわって、私の持っていない黒コショウをマイ胡椒にしている。
私はカルボナーラを食べたことが無くまったく興味が持てず、作ったことが無いしw
そのうち息子がふるまってくれることと期待。

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2011年6月 9日 (木)

可愛い子には、苦労をさせろ

昨年も6月にいきなり入院したんじゃなかったっけか。

息子が、足の親指の異常を訴えてきた。どう見てもばい菌が入り、化膿している状態だし、私は医者に行くのを勧めた。だがなかなか言うことを聞かず、ようやく
「…今日医者に行こうかと思う」
「ママ今日は午前にアポがあるんだけど…一緒に行った方がいいかな?」
「…いや、大丈夫」

…まあ、足を失いかねない、と本人が判断するまでなんともしがたいという難しい子だし。
万一手持ちのお金がなければ連絡しなさい、とだけ言って、私は仕事に出た。

即日、手術だったらしい。

局所麻酔で「見ないほうがいいよ」だったけれど、菌は親指の奥のほうまで入り込んでいて、膿を出すのに(自粛)な処置が施され、とりあえず足には包帯が巻かれている。はあ、なんとか切らずに済みそう。

で、昨年は理解できていなかったようだが、領収書を私に持ってきた。うん、それが集まると、場合によってはトクになるしね。

そう、息子は19。来年からは納税の義務が生じるのである。
所得があろうとなかろうと年金や保険をなんとかしなくてはいけないし、市民県民税もかかる。いや、今の時点でもそこそこの収入があれば親の扶養を抜けて自立しなくてはいけない。
バイトで稼いだお金が可処分所得♪という時代はもう、終わりにさしかかっているのである。

で、息子は初めて、病院から渡された書類を見た。
親の私が言うのもなんだが、息子はそれはもう聡明で、とくに理数系には強い。親が何べん言うよりも、その羅列した数字を理解した。
「……手術代で5000円くらいかかっているけれど、実際の治療費って1万5000円以上かよ…」
「うん、もしも保険に入ってなければ、その額を払うことになる。去年の入院だったら、70万くらいかな?ちょっと病気や怪我をするだけでも、そういうことに」
「…なんで今、5000円ですむわけ?」
「それは、あんたが元気なときにも、パパが一生懸命に働いて、
保険料を払ってあんたに保険証を与えているからだよ。それが無ければ、正規の値段を払うことになるので、
うっかり風邪もひけなくなる。今あんたが健康的な生活を送れるのも、多くの国民が保険や税金を納めてくださったからこそ。20になれば、大人として自分自身の生活を守りつつ、他の人たちを支えるんだよ」

息子は神妙な顔で、そのいろいろ歪んではいるけれど聡明な頭脳で、自身の責任を理解した…と思う。

数日後、息子は深い深いお辞儀をして、5000円の融通を頼みに来た。

詳しくは知らないが、オフ会か何かの付き合いをするのに、予想外の出費で「困った」ようだ。

かつて、児童相談所とか臨床心理士とか警察とかに相談したときに言われたのだが
「腐士男くんって、『困る』ということができないんですねー」
…そう、本当に不潔だろうが飢えようが「困らない」で、わが道を行くのに親の私は困っているのだ。
躾ければ、とかいうのはとても簡単。それが入らないのがこういう子の現実。
どんなに学業で理解力が高くても、ごくごく普通のことが理解できないし、たとえばお金に不自由すれば親の財布から盗めばいい、盗まれる親のほうが悪い、自分を不快にさせているのだから、そのくらいのペナルティは当然である、ということを広言してはばからなかった一時期もある。

それが、腰からきっちりと頭を下げるという美しい営業用お辞儀で「お願いします!」という。

…はあ、ようやくここまできたか。

息子の頭頂部を見ながら、財布を開く私。
この瞬間は、息子にとっては本当に大事な瞬間なのだと思う。

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2011年6月 3日 (金)

便りの無いのは良い便り…か

…とはよく言ったもので、このところかなり日記が滞っているが、それは割りと子どもたちが順調であるとかであったりする。

……ネタが無いわけでもないのだが、どうにも子どもたちの個人情報や、守秘義務に触れかねないので面に出すのがはばかれるのだ。

あの息子は、今新しいバイト先でなかなかに頑張っている様子。
「俺史上一番大きい組織」ということで、いろいろ珍しいらしい。私は、そこに匹敵する近場に務めていたこともあるので、いろいろ話も盛り上がる。

……しかし、息子があちらこちらに転職するたびに、私は大変な思いをしているぞw

最初のバイト先は、私服でOKだったが、下はスラックスなどということで、直前に購入したカーゴパンツが未だに値札がついたままだ。

次に決まったバイトが、動きやすい服装とスーツを同日に着るということで、これまた散在することになった。

同時に始めたバイトが、やはり下は黒のスラックスで上は白のシャツということで、それも買った。まさかこの二つ、急病ですぐに辞めることになるとはorz

で、次がゲームのインストラクターと物まね芸人だが、幸いこれは手持ちで済んだw

次に決まったところは、下はチノパン、上は襟付きのシャツという指定。

「襟つきか~(当時は早春なので)ネルのシャツでも買うか。あと、ダンガリーも使い勝手がいいよね」
と私が言うと、息子は訝しげな顔でなぜか大声を出した。
「そんなこと言われても全然わからねえよ!」
な、なんでそんなにキレるかな、と思いつつ会話を進める。
「え、ネルは温かいし、ほら、前に買ったアレ、あれがもう一枚あれば楽でしょう、それにダンガリーとか、コットンの白シャツとかも1枚は欲しい使いまわしアイテムで…」
「だーかーらー!!!!そんなこと言われてもわからねえよ!!!!」

息子は、絵に描いたようなオタクにありがちな……いやネタではなく真剣に、ファッション…ていうレベル以前の、被服についての知識が皆無だったようだ。
これまでも、無頓着なような異常なこだわりのような奇妙さがあったが、本気で、理解できていないのだ。
そのくせ、チェックのシャツを勧めると「そんなオタクくさいの着ねーよ!」とか言うしw

「ネルは、厚手の起毛した生地で、1枚でも温かいし、ジャケット代わりにも使えるよ。ダンガリーは…」
「うっせえな! わからねえって言っているだろうが!!」

うーん、コムサデモードとかアニエスベーオムとかエンポリオアルマーニとか、そういう呪文を唱えたわけでもないのに、息子は意味のわからない単語に猛り狂う。これでは会話にならない……

「じゃあ、『もめんのふく』とかならわかる?」
RPGにありがちな表現をしてみた。荒れ狂う息子はとたんに穏やかになった。
「ああ、それならわかる。要するに、素材だな」
……ふう。
「そう。てつのよろいとか、ミスリルメイルとか」
「ミスリルはわかる」
…それ、架空の素材だけどなー……
「コットンは木綿のことで、織り方や染め方でいろんな生地があるのよ。ネルは厚手で起毛、ダンガリーは…」
いろいろ説明する。
「ああ。そういうことか」
「そう。たとえば同じ素材でもミスリルメイルとミスリルアーマーがあるように、いろいろあるわけ。今の季節なら、こういう素材の無難なシャツを少し買っておこうか、と言っている」
「わかった」
「はあ~、フリースのよろいとかあったらやだねーw」
「ああw」

…念のため、幼い頃から息子は科学や政治など、雑談していると素晴らしい理解力を見せるのだ。まさに一を聞いて十を知るとか、砂に水が染み込むようだとか、そういう聡明さもある。

なのに、こんなことがなかなか理解できずに荒れ狂う。
発達障害というのは、こういうことだと思う。

…と、そんなことがあった職場も3ヶ月で終了。
入力作業中心の職場で、息子は超余裕でこなしていたが、慢心して嫌われている様子も察したのでまあ仕方が無いかと。

で、幸いにもまさかと思った憧れの職場で採用。
…ただ、大きいだけに服装などの要求も厳しい。
上は、アイロンのかかった白ワイシャツ。
下は黒スラックス。これはなんとかある。
しかし、肌着は白。説明の時に着ていたのがほんの少しグレーの肌着だったのに、しっかり見咎められた。また、普通見えそうにもないのに、靴下の色まで指定。ひゃー。
私は仕事の合間にシャツや靴下を買わなくてはいけなくなった。今度の職場は、長く続きますように。

そういう服装の問題抜きにしても、例えバイトでも、長く務めるということは大事なことだ。

息子は、高校時代に某大手企業系のストアでバイトしていたが、そこで3年勤めた実績は、どこに面接に行っても注目されたそうだ。今のところでも「それは履歴書に書いていいじゃないの」とさえ言われたとか。

不登校暴力息子の「学歴」はあまり誇れるものではない。
まず能力の評価には繋がらないだろう。
しかし、3年もひとつのところで働くということは今の時代では結構すごいこと。
ちゃんと要求された仕事をこなし、対人関係も保て、最低限の忍耐力や問題解決能力もないとできることではなく、それができる人材が少なくて困っているというのが現状だ。
ああ、まずはバイトをさせ、めげそうになっても耐えろと教えてよかった。
「石の上にも3年とは、よく言ったものだね」
「うん」

まことに難しい時代ではあるが、子どもには社会性だけは身につけさせないといけない。それが難しい体質だとしても。

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