長男の妻の仕事はもっと評価されるべき
夫が、父親の遺産相続を放棄した。
私も、賛成した。
遠い都会で好き勝手している嫁の私に、それを期待する発想は、毛頭なかったからだ。
私の母は田舎の三男の妻。
成り上がり者ともいえるのだろうが、私の父方の祖父は一時期ちょっとした資産家で、今少し思い出しても、自宅に線路があったとか、自宅や僻地にある実家に直通する道路を作らせるとか、市民が憩う庭園を造ったとか、なにやら天皇陛下に褒章をいただいたとか、そんな家だった。子どもの頃は…ほんの少ししか気づかなかったが、男尊女卑、よそ者(つまり嫁)排除…いわゆる嫁いびりが激しく、私が成長したときに堰を切ったように母が吐露したのだ。
私に降るようにお小遣いをくれたおじいちゃん・おばあちゃん、漫画という共通の趣味を持っていたおじちゃん、美人で憧れだったおばちゃんの悪口を聞くのは辛かったが、母は必ずこう言った。
「長男の嫁は、背負うものが違う。パパはそこのところがわかってない。家を出たのに、まだ自分の家のように冷蔵庫を開けてあれちょうだいこれほしいという。それは違う。いくら法律で子どもには全部平等に遺産をとか言っても、そうはいかない。会社や家屋敷は義兄さんのものだし、○子ねえさんのものや」
父本家の嫁…私にとっては垢抜けない田舎のおばちゃんで、私の記憶でも何か不満を言ったとも、母を苛めたとも記憶がない。私自身、行けば当たり前に美味しいものをふるまってくれる人程度に思っていたのか……長じて、自分の不見識を恥じたものだ。
夫は次男で、義父からはかなり低く見られていた、と私の母は言う。
夫は次男で、義父からはかなり低く見られていた、と私の母は言う。
結婚への顔合わせ・打ち合わせで、どうせ跡取りではないからお好きなように、というのが見えて、母は夫に感情移入したのだそうだ。
時は昭和の終期から平成初期。世の女は、跡取りになる長男よりも、責任の少ない次男以下がもてもてという時代だった。
だって、資産が「平等」に分配されるのだもの。
男女も何も関係なく遺産だけは平等にもらえる、だけど家の維持や親戚の面倒、親の介護は長男の嫁の仕事、しかも義父母の遺産を受け取る権利は「嫁」にはない……それでは、誰も長男なんていうハズレくじを引くわけがないではないか!
というわけで、私は気楽な次男をゲットしたのだから、当たり前のように夫の実家の遺産なんてまったくあてにしなかった。長男である義兄は4人の子を持ちながら若くして急逝し、あとを追うように義父も亡くなった。義母は、義姉はどれだけ辛かったか計り知れないが、私たち親子を温かく「よくきてくれて」と労ってくれ、なんの役にも立て無かった自分が、なんで遺産だけよこせとか言えるのやらw
遠い土地だし、もしも義母や義姉が患っても何もできない。
義姉だって、義兄と大学で知り合って遠くの土地から嫁いできた。別に名家でもなんでもない普通の家だけど、言葉も習慣も違う場所で近所付き合い、親戚付き合いをして、仕事もし、夫亡きあとは義母を支え、4人の子を立派に育て……
義姉だって、義兄と大学で知り合って遠くの土地から嫁いできた。別に名家でもなんでもない普通の家だけど、言葉も習慣も違う場所で近所付き合い、親戚付き合いをして、仕事もし、夫亡きあとは義母を支え、4人の子を立派に育て……
そんな義姉に法律上の権利をふりかざすほど、私も恥知らずではない。
…弟の嫁でもどうかと思うのに、男性の婚姻外の関係を持ち、子を持った女性が、男性は正規の妻子よりも自分たちを家族として遇してくれた、紙切れひとつの関係で、婚外子が嫡出子の半分の遺産しか受け継げないのは差別……と裁判を起こしているのだそうで。
もちろん、非嫡出子だからといって人格を否定されるようなことはあってはならないとは思う。
私も同い年の非嫡出の従兄弟がいるのを大人になってから知ったけど、まあ、一生それと知って会いたくもないし、その子の存在がどれだけ叔母や同い年の従姉妹を苦しめていたとしても、その子を必要以上に見下しはしないだろう。生まれたその子には罪はない。
もちろん、非嫡出子だからといって人格を否定されるようなことはあってはならないとは思う。
私も同い年の非嫡出の従兄弟がいるのを大人になってから知ったけど、まあ、一生それと知って会いたくもないし、その子の存在がどれだけ叔母や同い年の従姉妹を苦しめていたとしても、その子を必要以上に見下しはしないだろう。生まれたその子には罪はない。
伯父と、愛人の責任はあるとしても。
だけど、もしもその子と母親が、嫡出子と同等の権利を主張したら???
私の父はあれこれ実家の世話をしていたけど、そこまで面倒見る?
私の父はあれこれ実家の世話をしていたけど、そこまで面倒見る?
あのあと、その家は没落し、一時期伯父の失踪まで報道された。
数日違いの弟がいる、という従姉妹は、とてもしっかりとした人だったのに
数日違いの弟がいる、という従姉妹は、とてもしっかりとした人だったのに
なぜか不倫出産に走ってしまい、一生をその償いに捧げている。
そして「長男の嫁」は今、気丈に家を守っているという。
私は保守的ではないのだと思うけど、婚姻というのは恋愛などとは違う次元で行われるもので、もしもこの裁判で婚外子が半分どころかまったく嫡出子と同じ権利を得られるのだとしたら、もうこの国に秩序はなくなるだろう。
私は保守的ではないのだと思うけど、婚姻というのは恋愛などとは違う次元で行われるもので、もしもこの裁判で婚外子が半分どころかまったく嫡出子と同じ権利を得られるのだとしたら、もうこの国に秩序はなくなるだろう。
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