皇太子夫妻は被災地を周るべきか

平成になって間もない雲仙普賢岳の噴火被害、そして当時未曾有の被害となった阪神淡路大震災。

今上である陛下と美智子皇后陛下は、一刻も早く被災者を見舞いたい、と声をあげられた。

これには右翼も左翼も批判的な声が上がった。
右の方は言う。
「天皇というのは穢れから離れ、まずは安全なところにいらっしゃるもの。危険なところに赴かれるべきでない」
自治体は言う。
「被害がひどくてとても両陛下をおもてなしできるような状態ではない」

左の方は言う。
「被災者は着の身着のまま、不自由な暮らしをしている。それを見物に来るか」

今では信じられないことだが、当時は大災害間もない被災地に皇族が行くことには、概ね批判的であった。

が、両陛下は、通常の行幸啓のようなもてなしは不要、食事も被災者と変わらぬものでよい、と交渉なさり、大変質素なお召し物で、決して十分な環境とはいえない避難所に飛び込み、膝をついて手をとり「よく、ご無事でいてくださいました」と、心身に傷を負った人々を癒して周られた。

これこそ、平成流の「ご公務」である。

これまでだって、災害には下賜金があったり、多少落ち着いたところでお出ましがあったものだけど、基本的に皇族、特に天皇皇后は「穢れ」に触れてはいけないので、災害の爪あとも生々しい現地に赴かれることは、きわめて異例だ。
が、まさに美智子様流、平成流のお声かけや交流があって、雲の上だった皇室と民とが結びついた瞬間だった。

さて、皇太子夫妻が、今年東日本大震災被災地の慰問にこだわり、揺らいでいる。

2011年遅れに遅れてささっと周って以来、もう用は済んだとばかりだった皇太子妃雅子様だが、いろいろな批判を受けて、なんとか被災地訪問をしないといけない、と思いたたれたようである。

が、春から宮城県への訪問を計画されながら3回ものキャンセル。

いずれも雅子様のご都合ということだが、それで皇太子殿下だけが赴くということはなく、いろいろ準備したのをやめさせて、雅子様のためだけに調整させたのだ。

8月にようやく実現したが、仮設住宅の住人でも会えるのは40人ほどだけ、他地区の被災者は立ち入り禁止、おまけにびっしり座らされた仮設住宅民はお声をかけられたあと待機させられ、また出てきたときも同じ声かけをされたという。
また、なぜか地元の味噌作りを視察されたが、通常夏の時期には行われない作業を見ていただくという奇妙なことに。

被災地を励ますのではなく、雅子様のためにロケをした

そんな感じにしか見えなかった。

というような批判を受けて、今度は福島に行かれるという。
でも、両陛下はじめ皇族方は交通の不便な被災地に時間をかけてまわられているのに、皇太子夫妻はやっぱり新幹線でちょっと周って帰れる場所を周られる予定。

……既に、わけのわからない交通規制や、子どものための施設なのに、連休中日にクローズ（厳選された親子でロケ？）という情報が流れている。

万事が、自分の美談のため。

そんなパフォーマンスなんかいらないよ！！！というような罵声は、両陛下は受けられていたが、なぜかそう言っていた人たちほど雅子様マンセーなんで不思議である。

「にこにこ手を振るだけの皇室なんて」と適応障害になられた雅子様。
でも、本当ににこにこ手を振るだけの皇族って、雅子様だけです。

伝統の皇室や、平成流の皇室ではなく、新しい皇室像を描くのならそれもいい。
両陛下も耳を傾けていらっしゃった。

…けど何も出せず、皇室像をぶっこわした上で、こんな「劣化平成皇室」公務のために、被災者に負担をかけても、点数なんか稼げませんよ…

今さら点数稼ぎの訪問なんかいいので。

高学歴有能キャリアウーマンなら、在京のままでもいろいろできるはず。
その前に、皇太子妃としてやらなければいけないことが何年も放置されているはず。

今一度、皇太子妃、皇后の役割について、考え直すべきではないだろうか。