田中一村「新たなる全貌」展に行ってきました!
今日はお休みをいただいて、千葉市美術館で行われている田中一村「新たなる全貌」展に行ってきた。
孤高の画家・田中一村の、少年時代から奄美大島時代を時系列を追い、最近発見されたものも含めて600点近くを一挙に見られるという、滅多に無い展覧会。ことに、田中一村が熟成した奄美時代の作品は、多くが奄美大島でしか見られない。あの「アダンの海辺」と「不喰芋と蘇鉄」が関東で見られるのはすごいことなのだ!
…平日でも、混んでました…
エレベーターに乗ろうとすると、降りる人が「また人が入ってくるよ…」などとぼそぼそ。ど、どんだけ混んでるの…四半世紀ほど前、与勇輝の銀座松屋での展覧会が、デパートの上から下まで階段が埋まる行列だったのを思い出し、震える…
けど、チケット売り場はちょっとの列だし、「ただいま込み合っております」とは言われたものの、昔上野に来たモナリザを経験している私には、大丈夫、ゆったり!な混み具合。
「はああーーっ!」「ほおー!7歳!」
いきなり、少年時代のコーナーであちこちからため息が漏れる。さすがにアップはできないけれど、7歳でこの絵か、13歳でこれか、とたしかにため息しか出ない。昨日サイバラの「人生画力対決」の2巻を読んだばかりだけど、こんな画力は勝負する気も失せるわw
こんな画家が、生前ほぼ無名で、死後7年もたって偶然発掘されるとは。
千葉時代の作品は何度か…というか、所蔵されている方とお話する機会もあり、その作品が展示されていてなんとなく誇らしい(私のものじゃないのにw)気分になる。
それにしてもまあ、なんと山水画の素晴らしいことよ、仏教画の優美なことよ、花鳥画の力強いことよ!
今にも歩き出しそうな、体温や息、心臓の鼓動まで感じられる軍鶏に心奪われる。おいしそう…
木魚などの木彫りもあり多才なことに驚くが、中央画壇に挑戦しては決別し、旅行をし、支援者の求めに応じながら絵を描き…といううちに、徐々に独自の作風が確立していくのが実によくわかる。
そしていよいよ奄美の作品群だ~~~!
温度や風まで感じる。南方の植物と、色鮮やかな鳥たち、虫。
大好きな「アダンの海辺」の前からは、いつまでも離れがたかった。質感のあるアダンの木もさることながら、空の色の凄さ…前に沖縄で見た、あの空だ。雨が近づいているのかもしれない。そして、波。どんよりと曇った空を写す海が、どうしてこんな風に描けるんだろう……どうやって、こんな色を出し、波を描いたんだろう…そして礫の広がる浜辺。
静寂だが、漣と遠くの雷鳴が聞こえる。風向きが変わった。
アダンは、たわわに実る。
彼にとっては、いつものこと。
描きあげたときは落款を入れる力もなかったという本人の手紙も添えられていた。さもありなん。日本画の枠にも洋画の枠にも収まらない、世界で唯一の画風が完成した瞬間だったのだろうと思う。
はあ…ガラス越しとはいえ、眺めまくった…次に見るときには大行列を覚悟しなくてはいけないんじゃないだろうか。
ミュージアムショップも大盛況。レジには行列が切れることが無い様子。いくつかのグッズと、図録を購入。図録も、今現在確認されている作品の目録つきでファン必携。欲を言えば、展示に添えられていた解説も、つけてほしかった。あれもおもしろかった!
9月26日まで。片道2時間がまるで惜しくなかった……ああ、あの絵の具の盛り…顔料の煌き…
もっと知りたい田中一村 |
5月発行。1890円というお手ごろな値段で田中一村の生涯をたどれておすすめ!さすがに生の迫力はないけれど…
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