2010年9月15日 (水)

田中一村「新たなる全貌」展に行ってきました!

今日はお休みをいただいて、千葉市美術館で行われている田中一村「新たなる全貌」展に行ってきた。

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孤高の画家・田中一村の、少年時代から奄美大島時代を時系列を追い、最近発見されたものも含めて600点近くを一挙に見られるという、滅多に無い展覧会。ことに、田中一村が熟成した奄美時代の作品は、多くが奄美大島でしか見られない。あの「アダンの海辺」と「不喰芋と蘇鉄」が関東で見られるのはすごいことなのだ!

…平日でも、混んでました…

エレベーターに乗ろうとすると、降りる人が「また人が入ってくるよ…」などとぼそぼそ。ど、どんだけ混んでるの…四半世紀ほど前、与勇輝の銀座松屋での展覧会が、デパートの上から下まで階段が埋まる行列だったのを思い出し、震える…

けど、チケット売り場はちょっとの列だし、「ただいま込み合っております」とは言われたものの、昔上野に来たモナリザを経験している私には、大丈夫、ゆったり!な混み具合。

「はああーーっ!」「ほおー!7歳!」
いきなり、少年時代のコーナーであちこちからため息が漏れる。さすがにアップはできないけれど、7歳でこの絵か、13歳でこれか、とたしかにため息しか出ない。昨日サイバラの「人生画力対決」の2巻を読んだばかりだけど、こんな画力は勝負する気も失せるわw

こんな画家が、生前ほぼ無名で、死後7年もたって偶然発掘されるとは。

千葉時代の作品は何度か…というか、所蔵されている方とお話する機会もあり、その作品が展示されていてなんとなく誇らしい(私のものじゃないのにw)気分になる。

それにしてもまあ、なんと山水画の素晴らしいことよ、仏教画の優美なことよ、花鳥画の力強いことよ!

今にも歩き出しそうな、体温や息、心臓の鼓動まで感じられる軍鶏に心奪われる。おいしそう…

木魚などの木彫りもあり多才なことに驚くが、中央画壇に挑戦しては決別し、旅行をし、支援者の求めに応じながら絵を描き…といううちに、徐々に独自の作風が確立していくのが実によくわかる。

そしていよいよ奄美の作品群だ~~~!

温度や風まで感じる。南方の植物と、色鮮やかな鳥たち、虫。

大好きな「アダンの海辺」の前からは、いつまでも離れがたかった。質感のあるアダンの木もさることながら、空の色の凄さ…前に沖縄で見た、あの空だ。雨が近づいているのかもしれない。そして、波。どんよりと曇った空を写す海が、どうしてこんな風に描けるんだろう……どうやって、こんな色を出し、波を描いたんだろう…そして礫の広がる浜辺。

静寂だが、漣と遠くの雷鳴が聞こえる。風向きが変わった。

アダンは、たわわに実る。

彼にとっては、いつものこと。

描きあげたときは落款を入れる力もなかったという本人の手紙も添えられていた。さもありなん。日本画の枠にも洋画の枠にも収まらない、世界で唯一の画風が完成した瞬間だったのだろうと思う。

はあ…ガラス越しとはいえ、眺めまくった…次に見るときには大行列を覚悟しなくてはいけないんじゃないだろうか。

ミュージアムショップも大盛況。レジには行列が切れることが無い様子。いくつかのグッズと、図録を購入。図録も、今現在確認されている作品の目録つきでファン必携。欲を言えば、展示に添えられていた解説も、つけてほしかった。あれもおもしろかった!

9月26日まで。片道2時間がまるで惜しくなかった……ああ、あの絵の具の盛り…顔料の煌き…

もっと知りたい田中一村 もっと知りたい田中一村

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5月発行。1890円というお手ごろな値段で田中一村の生涯をたどれておすすめ!さすがに生の迫力はないけれど…

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2009年5月 4日 (月)

全裸セフィロスウォーキングwithエカテリーナ2世ディナーセット

昨日はまた、情緒不安定で社会が苦手な娘を伴って都内に遊びに出かけた。

メインは、東京都庭園美術館で行われている特別展「エカテリーナ2世の四大ディナーセット」。アール・デコの装飾が美しい旧朝香宮邸で、娘もはまった「女帝エカテリーナ」の、あのエカテリーナ2世の麗しい食器の数々が展示されているとあっては見に行かないわけにはいかない。

しかし、いつものことだが娘は家でネットでもやっていたほうがいいと、なかなかうんと言わない。
「ついでに目黒寄生虫館にも行こうよ。そのあと駅前で焼肉とか」
「そんなん、誰が行くかっw サナダムシとか見て何が楽しい」

……昔あんなににょろにょろ系が好きだったのに……(´;ω;`)寄生虫館、リニューアルしてから行ってないから行きたかった…

「じゃあ、スクエニショップにも行こうか。グッズがいっぱいあるらしいよ」
「えー……(ちょっと興味)」
「全裸の等身大セフィロスが見られるよ」
「…行く(゚∀゚)」

ありがとう、セフィロスさま!

というわけで出発。食事をして徒歩で庭園美術館へ。なかなかの混雑ではあったけど、展示品も建物も見所満載。部屋に入るたびに天井やマントルピース、ところどころにちりばめられた装飾品などにも注目させつつ、娘もそれなりに楽しんでいる様子。

とくに人気だったのがエカテリーナが愛人ポチョムキン公のために作らせた「カメオ・セルヴィス」。ほの暗い部屋でも鮮やかに光るブルーと金彩に魂が吸い寄せられてしまうのか、この部屋にいる人、ほとんど動かない!

「…ほら、ポチョムキン公の…」
と、小声で娘にささやいた。あの漫画を読んだのなら、より印象に残るはず。しかし娘は首をかしげた。
「ポチョムキン……あれ、どっかで聞いたような…」

娘、どこまで鳥頭なんだ……(つД`)

2人の姿を残したカメオもあったけれど、横顔にすると本当にエカテリーナ2世って容姿のほうは……なのだとわかってしまう。肖像画ではさほど気にならないけれど。

電車で渋谷へ。娘は服や靴も欲しいというので、ちょっとそういう街を見せてやろうと思ったのだ。ほれ、あれがテレビに良く出る109。ここがセンター街。スペイン坂。公園通り。で、あれがNHK。紅白はあそこでやる。などと教えてやるとそれなりに興味を持っていた。「しかし渋谷って何でこんな坂多いんだ……」娘が息を切らしながら言う。「渋『谷』だから」「…ああ!」「さっき通った駅前あたりはまさに谷底。昔は山の手線あたりに沿って小川があって『春の小川』もそこがモデル。坂を上っていくと『青山』だったりするし、地名で地形や歴史がわかるでしょ」地図読めない、方向音痴、地理がわからない娘だが、少し興味を持ってくれただろうか。

代々木公園ではフラワーフェスティバルというイベントが行われていてとてもにぎやか。球技を楽しむ人、演奏を楽しむ人、漫才の練習をしている人など、娘は人間ウォッチングも楽しんだようだ。「じゃ、ちょっと原宿に行こうか」少し予定を変更して、今超激混みの原宿へ。駅からして、乗れない、降りられないくらいの混雑ぶりだし、竹下通りは人がびっしりだったが、意外と娘はひるまない。

私、何年ぶりの竹下通りだろうw 空いている平日にばかり行っていたけれど、安くて個性的な服などがあるので、やっぱり面白いところだと思う。娘も奇天烈なバッグや、最近の傾向なのだろうか、「クラウドが着ていそうな服」とか「水銀燈が着ていそうな服」が安く売られているのに……さらにそういうのを着て、アニメから出てきたようなファッションの店員さんやお客さんに思わずびっくり。「あんたも着る?」「い、いやそれはちょっと…」とか言いながらいくつかの服を真剣に見ていた。……来年あたりにゴスロリ娘になっていなければ良いが。

さて、元の原宿駅前に。ここからスクエニショップまでは、失礼ながら明治神宮の森を行くのが近道。お参りもさせていただき、娘に明治の森の成り立ちや日本人の精神について学んでもらおう。

すると娘が難色を示し始めた。
「明治神宮、やばい。私、死ぬかもしれない」
はあ?「清らかな空気の中で邪気も祓われるでしょうよ」
「それがやばい。私、消滅する」
娘、100パーセント邪気か。どんだけ厨二病なんだ。

鳥居もくぐりたがらず、盛んに体調不良を訴えたが、それでもなんとか身を清めてお参り。森を抜けて街中に入ると「はあ、生き返るー」などと言っている。

渋谷から原宿を巡って参宮橋までって、それなりの距離があるので娘は疲れているようだ。それでもスクエニショップまでもう少し、と頑張った。

巨大なサボテンダーやトンベリがお出迎え。はぐれメタルだー! スライムナイトだー! とついはしゃぐ。

そして奥に入って念願の「セフィロス」と対面。「びくったーーー!」と娘。公式サイトの写真よりも、かなり生々しい。……ことに頭のほうから眺めて2人で驚愕。「こ、これは……」セフィロスの腰の辺りまで丸見え……

しかし、FFグッズって総じてお高いorz……ドラクエの方はまだお手ごろなのに。キングダムハーツのフィギュア950円をお土産に買って、可愛い袋に入れてもらって帰った。

新宿都心を歩きながら、このあたりは昔浄水場で、ママの子供の頃から超高層ビルが建ち始めたのよーなどと昔話。NSビルも昔は高く思えたのに、今はすっかり埋もれてしまっていた。

帰宅して息子に原宿やスクエニショップの話をした。息子は、ゴスロリファッションが安いというのを聞いて「行きてえええええ!」と騒いだ。自分じゃなく、友達に着せたいらしい。それと、スクエニショップの1/1ガブラスの兜が「欲しい~~~~~~~っ」と騒いでいた。……そんなものどうするんだというと
「は? 端午の節句には鎧兜を飾るだろうが。なんでガブラスの兜飾っちゃいけないんだよ!」……そうか、五月人形か……って、自称「負け犬」の兜飾って、息子の何を祈るんだ??

☆  ☆  ☆

「朝香宮(あさかのみや)」と入力しようとして、「あさかのみや(変換)」したら、「朝か飲み屋」と出た……。朝っぱらから、飲んでいませんから私!

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2008年11月 1日 (土)

上野で醸されてきました~かはく特別展:菌類のふしぎ

念願のっ東京上野にある国立科学博物館=通称「かはく」で開催中の特別展「菌類のふしぎ」に行ってきた。

超人気コミック「もやしもん」とのコラボレーションということでいろいろ話題。うん、私もかはくは大好きだし、菌とか大好きだし、「もやしもん」も、携帯電話が醸されている(酔いつぶれて朝目覚めると、なんともやしもん携帯シールがびっしり貼られていたんですよ!不思議ですね!)くらい大好きなのだけど、どうなのよ、それ……と期待と不安をひとつにして、娘と久しぶりのかはく訪問。

…いやあ、なかなかの好企画。

まず会場内のデザインが素晴らしい。什器はすべて、段ボールか紙管製。「紙を、こんな風に使うか!」と感心させられることが多くてそれだけでもおもしろい。

菌だなんて、微細な地味なものだと思われがちだが、段ボールで太古の巨大菌を再現したり、机の下にさりげなくもやしもんのキャラクターがひしめいていたりと、決して「机上」を眺めるだけではない見せ方がおもしろい。

そう、本当にビジュアル面のレベルが高いのだ。段ボールと紙管でシックでナチュラルにまとめられた会場で、資料や標本がとても際立つ。可愛いもやしもんのキャラクターたちと樹教授が、「菌」の世界を実にわかりやすく、とっつきやすく導いてくれる。

そしてまた心憎いのが、もやしもん原作者・石川雅之氏によるラクガキだ。

Kamosu 基本、段ボールに紙管だし! という感じで、会場のいたるところに石川氏のラクガキがある。それも、撮影OK!

某ランドの隠れねずみもおもしろいが、これがまたただ書いているだけでなく、適材適所の感心する書き込みで、通常の博物館にはできないようなナビゲーターになっているのだ。

展示物についてあれこれコメントしたり(これがまた秀逸!)ちびっこたちを励ましたり。

たとえば、展示の折り返しあたりでは、紙管のちょっと低いところにこんなものが…

Tukareta

これを鑑賞したり、撮影したりしようと思うと、自然にしゃがんでしまう。はあ~…足が気持ちいい。夢中で見ていたけど、結構博物館見学って、体力を使うんだよなあ~

と、自分の疲れに気づいたり、癒されたり。

こんなささやかな気遣い、おもしろさ。展示自体もいかに多くの人に「菌」の世界をのぞき、楽しんでもらうかに工夫を凝らした内容で、とても楽しかった。

会場入り口付近では少なかったけど、徐々にデジカメや携帯電話のカメラを構える人が増えてきた。そう、「撮りたい!」という欲求、おもしろい見所を「探したい!」という欲求が、見学者の間に生まれてきたのだ。探究心を掘り起こす、という意味でも本当に素晴らしい展示であった。

今日、かはくに向かう中でメアドを登録し、本格的に携帯デビューした娘、「最初の写真撮影は、友達とと決めているから…」などと言っていたが、どうしても探究心に勝てず、撮影しまくりになってしまった。とあるところでもやしもんオールスターのイラストを見つけ、「これ、待ち受けにしたい~」と熱中。「ここ、携帯なかったら地獄!」とかいう。

期日はお正月明けまで。菌類を観察するにはいろいろと道具や覚悟がいるが、とりあえずここではデジカメなどがないと地獄。

そしてお金が無いとミュージアムショップでは……ああっ……

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2008年3月10日 (月)

ニコニコはどこに行くのか~才能とコミュニケーションの集うところ~

このところ、ニコニコ関連のニュースが多い。

「あさっての方向に行く」とか、「ここからまた大ヒット曲の予感」とか。

たしかに、「ニコニコ動画」は本当に熱い。大小さまざまな才能、玉石混交の新しい表現、コメントという形での表現……著作権問題などいろいろな問題を孕んでいるので、切り捨てるのか、利用するのか、とプロ側も考えどころだろう。

映画や番組そのまま流すのはいかがなものか。完全な著作権侵害だ。DVDなどの売り上げ、放送時のCM効果に響けば制作側はやっていられないだろう。

しかし、その場でわいわいとどこのだれとも知らない者たちがコメントするのは、ユーザーとして楽しい。私はDVDまで持っていてとっくに見飽きた!細部まで覚えてるぜ!というアニメ映画でさえ、ここで見た。皆で一緒にわいわいと騒ぎ、笑い、驚き、怖がり、「すげえええ」と言う初心者に「こんな低画質でそれかよwここはDVDで見てよ」と思わずコメント宣伝するひととき。

プロ並みとまでは言わないけど、いやこの作者、鬼太郎のアニメ1~5期から漫画、墓場、ウエンツ版まで盛り込んで、本当に好きなんだよな、などとマニア心をくすぐらせる作品もある。

これまで全然興味が無い、…ていうか、イラネとさえ思っていた某テニス漫画のミュージカル版も、ここでおもしろさに目覚めた。

体を張って表現する人たちも数多い。息子が、裸でウマウマダンスしたいというのを、今必死で止めているところだ。

一方、こんな可能性もある。

さかなのうた

先月末から話題の動画だ。大学の卒業制作作品で、音楽、歌、作画すべてを1人でやったといわれる。新海誠の再来か、というような才能に、「プロになれ」「事務はもったいない」などとコメントが書かれる。

ここからプロに、というのはどうなのかわからない。が、ここを登竜門にして、いくらも歌手や声優、漫画家などがいくらも出てきそうだ。しかしここでぱっと花を咲かせて、ぱっと散る才能もあるかもしれない。「これで全部出し尽くしました」なんていうこともあるかもしれない。とにかく、ここでは有名無名関係なく、気になる画像や表現が並び、おもしろさが試される。プロの誰もが見逃した才能も、素人の目に触れて再評価されることもある。ひとつの可能性ではあるが、「ひとつ」は、ゼロよりもはるかに大きい。

この動画をどう評価するかなんて私にはわからないけれど、最後のほうで、無数の「さかな」が泳ぎ始める。これは、動画を見た人たちが、そのクオリティに敬意を表し、文字で「さかな」を泳がせているのだ。最高のリアクションではないか。ここで本気で涙が出た。

こういうことのできる場を、守らなくてはいけないんじゃないか。

追記:このニコニコ動画は現在削除されており、こちらで見ることができます。

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2007年5月15日 (火)

FFTの途中ですが、パッチギの試写会に行ってきました

日曜、縁があって「パッチギ!LOVE&PEACE」の試写会に行った。私は前作を知ってはいたけど見ていないし、一緒にいくことになった父にいたっては、パッチギのパの字も知らない。

で、いきなりの流血暴力シーン。まあ井筒監督、ずっと容赦なく過激なシーンで驚かせる。

あんまり痛そうなのは見たくないなあ…と思いつつも、1974年の東京の描写にはついつい見入る。その頃私は10歳くらいか。全然違う顔の東京に住んでいたが、なんとなくああ、わかるわかる、という感じ。ことに小物類には細部までこだわっていた。シールのぺたぺた貼られたカラーボックスやら、グラビア切抜きを飾った壁。あの魔法瓶。「コーラを飲むと骨が溶ける」もあったあった。ヒロインがアイロンを置いて電話をとるシーン。さりげなくスイッチを切っている。あああ、懐かしい。今のアイロンはサーモスタット付で、ちょっと離れても問題はないが、当時はちょっと電話に…で、火事になるのだ。演じる中村ゆりさんにとっては生まれる前の時代。きっちりと、演技指導されたのだろう。「ああ、俺も気づいた!」と父もそのシーンのさりげないしぐさを覚えていた。

最後に主演の井坂俊哉さんが、舞台挨拶と握手会に登場した。何でも「アンソンが行く!」というキャンペーンで10000人と握手するという。舞台挨拶での話では、この映画、千葉で撮影されたシーンが多いという。最初の電車乱闘、在日一族とノーベル海へ行く、戦時中の済州島、そしてクライマックスの試写会会場は、八千代文化会館だそうだ。

で、井坂さんだが、不勉強なオタクなので存じ上げなかったのだが、これからぐんぐん伸びそうな方である。スタッフの方がプロフィールを紹介していたが、「純情きらり」とか「14歳の母」よりも「ジャスティライザー」に「おお」と反応したのは、この会場でも私だけだったのではないだろうか。スポーツマンでアクションもばっちりこなせ、さわやかな笑顔と目力は、かつて劇団からNHK朝ドラ、そして大河ドラマから世界に進出した渡辺健さんを髣髴とさせる。がんばれ~。私に「あの井坂俊哉と握手したのよぉ」と自慢させて~

目下、私は子供たちに「四半世紀前に近所に来た所ジョージのステージを見たことがある」という話でとても尊敬されている。

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2007年3月25日 (日)

「いとしの儚」を観劇~横山智佐さん体当たりの演技~

友人に誘われ、広井王子さんプロデュースの「いとしの儚」を観てきた。

最低の人格を持つ博打うち・鈴次郎が、赤鬼に博打の形として手に入れた絶世の美女「儚(はかな)」。しかしそれは人の死体を寄せ集め、死んだ赤ん坊の魂を入れたもので、100日立つ前に女として抱くと、水となってしまうという。赤ん坊同然のはかなを育て始める鈴次郎。だが、それまで鈴次郎を支えてきたツキの神は離れてゆき…

人が人であるために必要なものは何かを問う伝奇ファンタジー。

この役を熱望したという儚役の横山智佐さんが、文字通り体当たりの演技で魅了。
素裸の赤ん坊状態の儚。
鈴次郎のために野放図育った、体はオトナなのに幼児同然の儚。
ホモの僧らに教育を受け、歌や舞に通じ、大人の女性としての知性と教養を持ち始めた儚。
自分よりも高い精神を持った儚に対して怒り狂う鈴次郎に、一途に夢を説きながら、愛そうとする儚。
鈴次郎に売りとばされ、女郎となりながら必死で身を守り、体は許さず男たちの欲望を満たす術を使って売れっ子花魁になっていく儚…。

どのシーンの「儚」も見事。自我を持ち、鈴次郎を諭すほど人として成長するかと思うと、天真爛漫に銀次郎に甘え、愛を求める姿が、とても魅力的だった。声優さんだから、というのも変なのかもしれないが、大変声がかわいらしく良く通り、ことに生まれたての赤子の鳴き声には体が震えるほどうまいと感じた。

また超売れっ子声優の山口勝平さんも楽しみにしていたが、なんと2時間10分、ずっと舞台にいるなんて。こちらもさすがに巧みだ。いや、他のキャストの皆さんもうまい方ばかりで泣いたり笑ったり、楽しい舞台だった。

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2007年3月22日 (木)

美術鑑賞と観光で息子の容量オーバー!~って、よくわからないのですが…

野田市の報恩寺ですごい美術展をやるというので、元不登校息子とでかけた。

きっかけは先月だ。タウン紙の広告で、素晴らしい絵とともに、この美術展のことを告知していたのだ。Issonn_1
田中一村の蓮の屏風絵。この絵と、お寺が無料で有名作家の美術品を公開しちゃうというのにオタクな息子が萌えた。念のため、この絵には美少女はいない。双子でもない。ツンデレでもない。

いやあ、本当にすごい美術展だった。こんなに贅沢な作品群を、無料でお茶の接待つきで一般庶民に見せてくれるなんて驚いた。おかげで、日ごろ漫画、アニメ、ゲームなどにしか興味を示さず、学校にも行かなければ秋葉原やコミケにも一緒に行くことがない息子が朝早くから遠出したし。息子なりに芸術に興奮しているのを観察もできた。横山大観、池大雅、谷文晁、板谷波山、高村光雲…などという、「何でも鑑定団」で庶民もその名を知るような一流作家がずらりの中で、普段同人作家に恐れ入っても、あまりそういう有名作家に恐れ入ることのない、オタクな息子がとくに興味を示したのはこういうものだった。

田中一村。これは息子もとても楽しみにしていたのだが、とくに揚羽蝶を描いたものに感動していた。筆致、色彩、構図の妙。私もこれは感動した。後の奄美大島時代にも通じる視点を感じる。花鳥風月はどの作家も描くけれど、虫を描くことはたとえ蝶といえども少ない。精密にして玄妙。そこに息づいて風に吹かれているような風情に親子して心を奪われた。

棟方志功。なぜか孔雀を描いた屏風に特に関心を持っていた。力強く、荒っぽい筆致と色彩がよいらしい。
加山又造。ことに金彩、銀彩の桜の絵で、銀が酸化して変色しているのに強い関心。「酸化を見越して作っているのがすげえ」「この花は、年月を経るごとに枯れてゆくのか」「この額の中の酸素は…」とひたすら銀の化学反応に興味がゆく。
欄間。お寺の本堂の欄間の素晴らしいことに気づき、感動。また室町時代の弘法大師や、平安時代の観音像などに関心。
関口正男。超ビッグネームだらけの美術展では知名度が劣るかもしれないが、こちらのお寺はこの人の作品のためにすごいホールを建て、いくつも作品を飾っていた。「でけえ」と息子はため息をついていたが、サイズもでかいがそれ以上の「でかい」ものを感じたのだという。それがどういうでかさかは、自分でも表現しきれないようなのだが…宗教画の方面、結構好きなのかもしれない。
川端康成。『雪国』のあの有名なフレーズを短冊に書いていたが、「すげえ親近感を感じる」と息子大うけ。「書」の名品はこの会場にいくらもあり、文句のつけようがない完璧な空間処理を見られたのだが、こちらの先生の書は、最初大きくだんだん「書ききれない」と思ってか小さくなり、また「しまった、署名のスペースがないや」と思ったのか2行目、徐々にゆがんでいく。「昔の人って、みんな書がうまいのかと思ったけど、そうでもないんだな」「しょうがないよ、原稿用紙に書くのが本業だし」と適当なことを言ってしまったが、鋳造を生業とする作家、政治家として有名な方などにも素晴らしい書を書く方は大勢いる。ただ、この短冊を見ると書きなれない印象を感じるけれど、文字そのものには大変味わいがあり、「川端フォント」があればいいなあなどと思ってしまった。

このお寺の裏手はキッコーマンの御用蔵と排水処理場になっており、息子、その風景にも大変感動していた。御用蔵はお堀の中に浮かぶお城のようで風光明媚。処理場は、今日は轟音をたてて水を処理しており、これがまた絶景。そして気候によっては富士山も拝めるという江戸川の景の見事さよ。
その足で、キッコーマンを支える名家のひとつ・高梨家の「上花輪歴史館」を訪ねる。500円の入館料はかかるが、見所は多い。木や苔、硝子にも息子感動。また、おそらく当主?の方など多くの方が喜んで解説してくれた。
私は仕事の関係で何度か野田を訪れたため、結構絶景ポイントを知っている。それで軽くそこを紹介しながら歩いたのだが、息子はものすごく感動していた。「野田、すげえ!」
すごいだろう。「ここでちょっと振り返ってみ」「そこは、一応一般のお宅なんだけどね…」と案内すると「すげえ!」「ちょwwwこれで一般のお宅って、俺どんなにみじんこの生活してるんだよwwww」と本気で興奮している。野田の市街は、江戸、明治、大正、昭和、平成の建築物が一気に見られる建築物のデパートだ。昭和初期の建物が見られたかと思うとそこにファンタジー漫画家ますむらひろし氏の壁画が広がっている。ガラス張りのキッコーマン本社脇を曲がると、ロケにも使われるという黒塀があり、レンガの塀があり、板塀のお宅が続く。大正時代の給水塔が聳え立つお向かいには、これまた風情満点、四季折々に美しい景を織り成すお屋敷がある。芝桜はまだまだこれからというところだが、それでも十分美しかった。そのそばには、キッコーマンの茂木家が惜しげもなく美術品を見せる美術館があるし、「いやいやまだまだ」と連れていたのは「市民会館」。いや、「市民會舘」。「はい、これが市民會舘~」と見せると、息子は腰も抜けんばかりに驚いた。「なんか、違う!」続いて隣接する郷土博物館に行こうとすると、息子は悲鳴をあげた。

「もういい!野田すごすぎる!ひとつひとつが2ギガくらいある!もう俺、何言われても入らねえよ!」

息子の言い分はこうだ。東京の秋葉原とか、コミックマーケットとかも魅力的だが、それらもひとつひとつは何キロバイトか、というレベルだという。修学旅行で京都奈良も行った息子だが、野田はとても自分のスペックでは計り知れない!というのだ。面白い表現をするなあ。私としてはもっといろいろ見せたかったが、息子はパニックを起こして大声で騒いでいる。大体、娘へのお土産にと和菓子屋に寄っても息子は天地がひっくり返るほどの衝撃061231_005 を受けたのだ。

「のだれーぬ」って……w

息子、これだけでも窒息しそうなくらい興奮していた。ところが家族へのほんの数百円のお買物客にもこの店は、お茶と最中を出すのだ。「こんな安い買物だから」と固辞したのだが、「お茶だけでも」「お菓子はぜひお持ち帰りを」と勧めてくれた。お昼を食べたとんかつ屋にもいろいろ感動していたのだけど、息子にはこの町のすべてが新鮮で感動的だった。「野田、すげえ」うん、私もそう思う。だから、この町に連れてきたかった。

近々、息子はかなり有名な精神科にかかる。

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2006年5月24日 (水)

すごい人と出会ってしまいました。

今の中高生は、「ボボボーボ・ボーボボ」で、マルガリータなる、人類を丸刈りにしようというふざけた組織と闘う鼻毛真拳の使い手・ボーボボの活躍を笑いながら見ていると思う。が、ほんの数十年前なら笑うどころかリアルな話だったのを知らないだろう。

今日、たまたまお会いした人は、まさにマルガリータと戦い、勝利した人であった。あ、鼻毛はない。アフロでもないけど。

20年以上昔、関東のとある県では、中学生の管理教育が美徳のように扱われていた。まず、男子は丸刈り。女子はおかっぱを理想とし、長い髪は三つ編み。スカート丈から靴下の長さまできっちりと決められた。それだけではない。体育だけが得意、とか、理数系だけは抜群、なんていう生徒の存在は認めない。個性なんて要らない、均質な品質の「製品」を出荷する。それが公立中学校だったのだ。

その象徴とも言うべきなのが、「丸刈り」。これに徹底して対抗し、ついに市で撤廃を実現、当時はマスコミにも多く取り上げられた人物に、今日、出会ってしまった。こんな偶然もあるものか。会社でその話をしたら、その方はいろいろと伝説の人物であるらしく、社長が「どこで会った?話を聞きたい!」と目を丸くして興奮。関東の一地方だけの話ではない。日本の教育はどこへ行くべきなのか、日本の民主主義は実現できるのか、というレベルの話だ。今、あれほど普及した管理教育を実践する地方があるか。中学生を丸刈りにするのが教育だなどと言えば失笑を買うだけだろう。だが、当時の先生方は賞賛、子も親もしっかりと反論できず、ただ従うしかなかった。それが、いまや清潔であればほどほどに自由が認められ、むしろ生徒の個性を尊重しようという流れに変わったではないか。すごいことだ。

息子は今の教育でもまあいろいろあるようで、不平不満を言っている。まるで昔の自分を見るようで、私もそれなりに助言はしているのだが、「不平不満」をいかに、意見として形に出来るか、これは自分で考えるしかないだろう。暴力ではだめ、キレて叫んでもダメ。そんなことを徐々にわかってほしい。今日、このことを息子に話したら「まじ?すげー!どうやったら先公をいいくるめられるかききてーーーーー!」……丸刈りにされて少しは考えろ!  orz

☆ ☆ ☆

息子、明日から修学旅行。日頃クラスメイトと顔も合わせたくないというのが、集団生活を楽しもうというのだから喜んで送り出してやろう。最近はかなり素直になってきたし。日頃漫画やアニメ、ゲームばかりの息子が「新幹線の中では俺、小説読むつもりだぜ」とかいう。私は微笑んで言った。

「涼宮ハルヒとかいうオチはないんだろうな?」

…図星だったようだ。息子よ、うぬの精神構造など、とうにお見通しだ。

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