2018年6月21日 (木)

我が家のデーヴァセーナ

私と息子は、最近ガルパンから、「バーフバリ」に凝っている。

空前絶後、という言葉が全然オーバーではない面白すぎるインド映画である。
http://baahubali-movie.com/
古代インドの架空の国・マヒシュマティの王位継承を巡る物語。
神のごとく完璧で民に愛される前国王の王子アマレンドラ・バーフバリと、国母の実子で民に恐れられるバラーラデーヴァの魅力、国母シヴァガミの公明正大さ、両王子に惚れられる小国クンタラの王女デーヴァセーナの気高さ、不可触民でありながら王家に忠誠を誓い、絶大な信頼を得ている最強の老戦士カッタッパなど、見どころ満載で、息子ともいろいろ盛り上がる。

が、息子は言う。

「デーヴァセーナ、あれはダメだ」

確かに、デーヴァセーナは正し過ぎ、気高すぎ。

大国の国母にも恐れず直球で逆らい、正論を通そうとする。

「dc-Cover-5mep2tc5p5mgpi5qqm3esq03d7-20170319145925.Medi.jpeg」をダウンロード
正論は、時に身を滅ぼす。

結局彼女は、バラーラデーヴァの策に次々嵌り、愛する夫を窮地に追い込み、何もかも失うはめになる。

ただ、世界中で上映される国際版だと彼女の過激さ、高慢さばかりが印象に残るのだが、今日本で上映されている完全版…というかインド上映版を観ると、ずいぶん印象が変わる。

本当に、デーヴァセーナは気高く美しく、正しく、そして可愛いのだ!

王族としての矜持が、シヴァガミやバーフバリと共通している。

正しい道を疑わず、例え誰であろうと正義を通す一方、弱き民には優しいのだ。

どこの馬の骨ともしれない男に情けをかけて雇ってあげ、武芸の一つでも仕込んでやろうと思ったら、隠してはいるがただものではないのを見抜く洞察力。
それでも正体を明かさない男に、公然と恋心を歌う…
インド版では、身分も権力も、能力さえわからない男を尊重する王女の姿がはっきりと描かれ、またなぜ王女が「マヒシュマティの王子との縁談」に激怒したのかがよくわかるようになっている。

彼女は決して、高慢でも無能でもない。
バラーラデーヴァの陰謀が無ければ、大使が無能でなければ、何もかも丸く収まっていただろうに…

だから完全版見ろよ、というのだけど、息子は頑として聞かない…

で、思い出したのが彼の高校時代だ。

いろいろあってお世話になった高校で、最初は随分かわいがってもらったのだけど、いろいろと軋轢が起きてしまった。

息子の話を聞けば、確かに息子は正しく、教師よりも優れているとは思った。

だが、その言い方ややり方は無い。

教師の体面を潰したらいかん。
正しい事なんか、言ったらいかん。
まず相手を尊重していかないとやっていけないよ?と助言したら、私はボコボコにされた。

で、結局教師に憎まれ、学校に危険人物認定され、進路が断たれた息子。

あれから数年。

なんだよ

わかってるんじゃんw


もうちょっと下手に出れば、もうちょっと相手に可愛がられつつ話を進めれば、良い結果になった。

今の息子は、バラーラデーヴァを政治家として買っている。

彼は絶対権力者である母の前では良い子を演じてまんまと王位を奪い、根回しをしてその母すら追い落とし矢を放ち、暴君として立ちあがったバラーラデーヴァ。

バーフバリは、政争など縁のない、善良で愛に満ちた象徴的な王。

バラーラデーヴァは政争に長け、力で民をねじ伏せる王。

デーヴァセーナは、力と正論と慈愛に満ちた次期国母。

それぞれに面白いキャラクターだけど、息子が正論で滅んだデーヴァセーナから、バラーラデーヴァに移行しているのは、ある種「成長」だと思う。

| | コメント (0)

2011年12月 4日 (日)

最大の親不孝(息子比)

「おかん、台所洗剤ある?」

と息子が声をかけてきたので、見せてやった。最近新しいのを買ったばかりだ。
「薔薇の香りだぜ」
「おお!」

ピンクのボトルにアロマローズの香りの泡のチカラ。
息子も目を輝かせた。
「そういえばさあ、最近薔薇の香りに惹かれてベルばらのポテトチップスを買ったぜ」
「なんと!」

新聞で読んだばかりだ、湖池屋で、ベルサイユのばらのポテトチップスが出たとかなんとか。

「買って、全部食って、袋捨てちまったぜ!」
「ひ、ひどい! せめて袋だけでも見たかったのに!」
「ぽいっと、捨てちまったぜえ!」
「ひどい!腐児子は、頼みもしないのにベルばら切手を買って、プレゼントしてくれたのに!」
「はっはっは~最大の親不孝しちまったぜ~」

……これまでの親不孝より、これを最大にするかorz

☆ ☆

そういえば、ベルばら切手は、アニメ前半の「荒木絵」風だった。

荒木伸吾さんのご冥福をお祈り申し上げます。

| | コメント (2)

2011年9月 8日 (木)

元不登校息子が高らかに

新学期。
不登校の季節。

うちの、いろいろある娘が月曜日から発熱や喉の痛みを訴え、休み始めた。

私も仕事があるので、自分より大きくてしっかり者の娘にべったりではいられない。
「え!置いてきたんですか!」と、小中学生の母親である同僚に言われたが、まさかあんなでかい子を背負って通勤はできない。

ちゃんと食べなさいよ、うんわかってる、というやり取りはあったのだが…もうこのところ娘はろくに食べていないわけで。
ジャンクフードを食べている気配はあるものの、とにかく食べなくて。
夜はあんなに元気で、ニコニコ動画を見ながら踊っているのに朝にはぐったりとする。

…仮病とは言わない。
熱と、首筋のリンパの腫れは、自分で確認。万一悪い病気ではいけないし、何よりメンタル面が気になる。
mixiでも、不安定な状態をつぶやいていて、マイミクさんたちに心配されていたのだ。

昨日、朝一番の仕事があるので出勤したが、昼前後に時間をいただきたい、と会社に申し出た。
昼に設定したのは、とにかく飯を食わせたいという思いもある。

で、昨日は色々考えて、新しい医院にお世話になった。
「あそこって、ヤブだとインプットされてる」
と娘はいやがったのだが(というか、どこもヤブと認定する)、たしかにそこ、先代はまことにヤブの名声が高く、私も素人以下かよ!と思ったこともあったのだが、最近息子さんが跡を継いでからは評判がよろしいようで。
手際よくのどと首を診て、的確な診断を下し、診療方針を出した。
「お母さん、何か他に不安はありますか」
私はこの診断には大変満足していたが、一応言った。
「リンパの腫れが気になったのですが、悪質なものでなければ安心です。月曜から休んでいるので、早く登校できることが第一で…」
「学校は、行きたいと思うときでいいよ♪」
と先生は娘におっしゃる。

まことに察しのよい若先生だ。
これは、心身の問題だ。

学校に行けない体ではないが、学校に行きたくないという気持ちが出ているのが、ありありなのだ。

そのあと、近所のファミレスで楽しく食事をしたが、なんと娘は伝票をさっととって支払った。…お、おごってもらっちゃった!

さて今日も、薬を飲んだのに首の腫れがひどいとかどうとかでぐずぐずする娘。
昨日の医院は今日休み。
他の医者に診てもらうかどうとかもめていると、息子が華麗に登場した。

「おはよう どうした」

うーん、美声といい、人間離れしたポーズといい、面白い子だなあ。
経緯を話すと、
「腐児子は大丈夫だ。オカンは出勤するがいい」
「なんなら俺が同伴登校する。今日はバイト休みだし」
という。

同伴登校!

ちょっと前にも私が「じゃあママが一緒に行こうか?
 あだ名が『愛子様』になるかもしれないけどw」
なんて話していたけれど、うちの、あの不登校息子が自ら「皇太子殿下役」を申し出るとは!

「いやいや、いいから!行くから!」

とりあえず、娘は登校したらしい。

| | コメント (4)

2011年6月22日 (水)

可愛い子のマウスを取り上げろ

一昨日の朝、私はPCの状態がよろしくなく、焦っていた。

シャットダウンができていなかった。
再起動も、シャットダウンもできない。タスクマネージャーは出るけれど、何をどうしていいかわからない。

で、息子の部屋に飛び込むと、息子は起きていた。

早起きしたのではなく、相も変わらず夜明かししたのだがorz

「パソコンが動かん」
「シャットダウンすれば?」
「それもできん。強制終了しても、元の状態に戻る」
「はぁ? わけわかんないし」
「とにかく見て」

息子は不機嫌そうにやってきて、ペンタブが汚ねえのなんのと言いながら、簡単に再起動した。
「できるじゃん」
えー。
タスクマネージャーと、方向キーと、ペンタブもペンを認識しない状況で、一応再起動のUは何度も押したのに。
「おかん、これな」
もう一度、タスクマネージャーを表示し、息子はAltキーを押しながらUキーを押した。
簡単に、再起動した。

「そこかあ~」
私はこれでも、この年の割にはPCと仲良しだと思うのだが、息子の「PCは友達」っぷりには完全に適わない。ああ、PCに強いオタク息子がいてよかったわ。ありがとう。本当にありがとう。
さっきまで不機嫌だった息子の顔も、なんとなく緩んできた。
「まあ俺はキーボードだけでも大抵のことができるしな。オカンにマウスを取り上げられたことがあったろ?」

ああ、そういうこともあったっけ?
ゲームにしろ、PCにしろ、没頭しすぎる幼い子を諌めるために、私はいろいろしたのだった。
覚えていたのは、ルーターとつなぐケーブルを抜いて隠したこととか、ログにパスワードを設けたことくらいだが、マウスも隠したっけか。
「ああ、マウスを取り上げられた。だから俺は、キーボードで大抵のことができるようになった。あと、パスワードをやられたときには、自分で考えてそれを突破し、逆にあんたのログにパスワードを設けることを考えた」

…ああ、今思い出しても腹が立つ。
臨床心理士さんに「この子は、『困る』ということができない子ですね」と言われたが、全くその通りだ。
困らせようにも、このように自力で解決する能力があるので、反省しない。
普通なら、子どもは簡単な罰を与えるだけで困って、追い詰められて、反省して、謝る。
息子は、無駄に解決能力があるおかげで、反省し、更正することができなかったのだ。
うちの場合は、幸いとても貧乏だったので早々にバイトに出し、そこで親ではない人たちにもまれてようやく「困る」ということを覚えられたのだが。

結局、子どもを困らせるということは重要なのだ。
素直に反省してはくれなかったが、息子はそれで考え、解決する能力を身につけたし、それでどこに行っても一目置かれる(時にはいやがられるけど)し、祖父母も、問題のある孫にお小遣いを与える名目として、「PCメンテナンス係」に任命した。月に一度は顔を出し、PCが問題なく動くようにチェックしたり、インストラクターを務めるという仕事で、高校生時代は毎月5000円ももらえていた。

それもこれも、私が息子を「困らせた」おかげか。

結論は、そういうことだよね、というドヤ顔の私に、息子は無言で「おかん、ありがとう」の顔をした。

| | コメント (6)

2011年6月 9日 (木)

可愛い子には、苦労をさせろ

昨年も6月にいきなり入院したんじゃなかったっけか。

息子が、足の親指の異常を訴えてきた。どう見てもばい菌が入り、化膿している状態だし、私は医者に行くのを勧めた。だがなかなか言うことを聞かず、ようやく
「…今日医者に行こうかと思う」
「ママ今日は午前にアポがあるんだけど…一緒に行った方がいいかな?」
「…いや、大丈夫」

…まあ、足を失いかねない、と本人が判断するまでなんともしがたいという難しい子だし。
万一手持ちのお金がなければ連絡しなさい、とだけ言って、私は仕事に出た。

即日、手術だったらしい。

局所麻酔で「見ないほうがいいよ」だったけれど、菌は親指の奥のほうまで入り込んでいて、膿を出すのに(自粛)な処置が施され、とりあえず足には包帯が巻かれている。はあ、なんとか切らずに済みそう。

で、昨年は理解できていなかったようだが、領収書を私に持ってきた。うん、それが集まると、場合によってはトクになるしね。

そう、息子は19。来年からは納税の義務が生じるのである。
所得があろうとなかろうと年金や保険をなんとかしなくてはいけないし、市民県民税もかかる。いや、今の時点でもそこそこの収入があれば親の扶養を抜けて自立しなくてはいけない。
バイトで稼いだお金が可処分所得♪という時代はもう、終わりにさしかかっているのである。

で、息子は初めて、病院から渡された書類を見た。
親の私が言うのもなんだが、息子はそれはもう聡明で、とくに理数系には強い。親が何べん言うよりも、その羅列した数字を理解した。
「……手術代で5000円くらいかかっているけれど、実際の治療費って1万5000円以上かよ…」
「うん、もしも保険に入ってなければ、その額を払うことになる。去年の入院だったら、70万くらいかな?ちょっと病気や怪我をするだけでも、そういうことに」
「…なんで今、5000円ですむわけ?」
「それは、あんたが元気なときにも、パパが一生懸命に働いて、
保険料を払ってあんたに保険証を与えているからだよ。それが無ければ、正規の値段を払うことになるので、
うっかり風邪もひけなくなる。今あんたが健康的な生活を送れるのも、多くの国民が保険や税金を納めてくださったからこそ。20になれば、大人として自分自身の生活を守りつつ、他の人たちを支えるんだよ」

息子は神妙な顔で、そのいろいろ歪んではいるけれど聡明な頭脳で、自身の責任を理解した…と思う。

数日後、息子は深い深いお辞儀をして、5000円の融通を頼みに来た。

詳しくは知らないが、オフ会か何かの付き合いをするのに、予想外の出費で「困った」ようだ。

かつて、児童相談所とか臨床心理士とか警察とかに相談したときに言われたのだが
「腐士男くんって、『困る』ということができないんですねー」
…そう、本当に不潔だろうが飢えようが「困らない」で、わが道を行くのに親の私は困っているのだ。
躾ければ、とかいうのはとても簡単。それが入らないのがこういう子の現実。
どんなに学業で理解力が高くても、ごくごく普通のことが理解できないし、たとえばお金に不自由すれば親の財布から盗めばいい、盗まれる親のほうが悪い、自分を不快にさせているのだから、そのくらいのペナルティは当然である、ということを広言してはばからなかった一時期もある。

それが、腰からきっちりと頭を下げるという美しい営業用お辞儀で「お願いします!」という。

…はあ、ようやくここまできたか。

息子の頭頂部を見ながら、財布を開く私。
この瞬間は、息子にとっては本当に大事な瞬間なのだと思う。

| | コメント (0)

2011年4月 3日 (日)

息子が泣いたラノベ

息子が、「こんなん買ったんだけど」と文庫本を見せた。

ベン・トー サバの味噌煮290円 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)Bookベン・トー サバの味噌煮290円 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)

著者:アサウラ
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

なんでも、スーパーの半額の弁当を巡って戦う、という話だという。
私はラノベはあまり興味が無いが、半額シールは萌えポイント。ほほう、と顔を向ける。
そして息子は自慢の低音美声で朗読する。

「需要と供給、これら二つは商売における絶対の要素である。
 これら二つの要素が寄り添う流通バランスのクロスポイント……その前後に於いて必ず発生するかすかな、ずれ。
 その僅かな領域に生きる者たちがいる。」

ほう。
なんか面白そうだなあ。
「俺もまだこれから読むんだけど、なんかタイトルにつられて衝動買いしちゃって」

全然足りないとはいえ、少々バイト料が入って、息子はまたあれこれ買い捲っている。少しは貯めないと…とも思うが、震災で落ち込んだ経済をまわすんだ、という。
いい浪費の言い訳だなw
…まあ、家で私がそれを言い出したのだけれど。私も顧客さまのところで少々おごったランチを食べ、服や花を買うなどいつもよりも少々贅沢をしている。経済をまわさないと、被災者を支えられないし、国の復興もできなくなってしまう。…娘までそれを言い出したのにはまいったが。

息子はその本を持って部屋に消え、またふらりと現れた。なかなか満足したらしい。
ただ、泣くようなものではないようなのに、息子は涙ぐんでいる。

息子は、中学生活のほとんど、高校生活の1年ほどを「不登校」で過ごした。

当時、本人はそれが自分にとって正当な行為であると主張していたのだが
「俺は、自分が失ったものに気づいた」

登場人物の多くは高校生。もちろんいかにもラノベらしい世界なのだが、若さ、空腹、そして青春。
「今俺が望んでも、もう取り戻せないんだな…」

…まあ、今から中学や高校には行けない。
喧嘩をしたり、先生に反発したり、学食や近所の安い店で空腹を満たしたり…そんなことも、10代ならではの経験だ。
それを、自らの選択とはいえ、失った。
卒業するときには二度と帰りたくない、と思ったのかもしれないが、1年もたつと懐かしく、また本人も少々成長して、許せなかったことが今なら理解できるようになってもいるようだ。

…不登校というのは、そういうことだ。

涙が本格的に出てきた息子は私にこの本を貸してくれ、また部屋に引っ込んだ。

| | コメント (4)

2010年10月17日 (日)

息子にスーツを買った

スイーツではない、スーツである。

息子が単発だが仕事をもらえそうで「でも、スーツがないと(ノ△・。)」

遠慮せずに、相談なさいな!

息子も18。高校も出てニ…いや、とりあえず病気療養求職中となれば、スーツや礼服くらい無いといけない。私もそう母に言われて18の春に買ってもらった服を、金田良功氏を偲ぶ会に着て行ったぞ。

というわけで、息子を伴って紳士服屋へ。こればかりは、紳士服のプロの意見を聞きつつ、体に合うものを買わないと……誂えてやる、とまで言えない貧しさが歯がゆいが。

見るからにニ……いや、デスノートのエルのような少年とお世辞にもリッチには見えない母だが、女性店員さんが「お探しですか?」にこやかに声をかけてくれた。

息子はウエストが極端に細いが肩幅はあるし腕だけがやたらと筋肉質、尻がでかいという、スリーサイズだけみればぼんきゅっぼん!な体型だが、合うスーツなんてあるのだろうか……と不安な親子にてきぱきとアドバイスをくれる。

「こちらは裏地もストレッチで動きやすく、サーモ機能がついてオールシーズン使えます。このくらいのストライプなら、ビジネスシーンから、お友達の結婚式二次会や、さほど神経を使わなくてもいい間柄の弔事でも…またこちらは撥水で、こちらは……こちらの商品、ただいま半額で、2着お買い上げですと2着目を1000円で」

親子二人して( ゚д゚)( ゚д゚)<……
        Σ( ゚д゚)( ゚д゚)Σ<あっこれで試着してみます……

馬子にも衣装、とは実に控えめな表現で、親ばかモードを許していただければ
まあ、なんとりりしい息子だろうか
体型のあれこれがまったく気にならず、実に「かっこいい」。

で、これと決めて、「ただいまスーツお買い上げの方に○○を半額で」「お名入れはいかがいたしましょうか」「補強は」「○○加工は」とオプションもつけて、予算はオーバーしたものの、息子も「これは大切にしなければ…」と感激するほど気に入っている様子。そして、高校の制服を買った時と違って、そのお金の重みもかみ締めているようだ。

そう、これだけのお金を稼ぐのは大変なもの。高校生がバイトで稼ぐ1か月分くらいは、スーツ一着、それも安さで知られるチェーン店でもかかってしまうのだ。

金を稼ぐにも、金が要る

わかったか、普通口座残高ゼロはありえない、数十万あっても貯金とは言えないということの意味が。

店員さんは、店の出口まで見送ってくれた。もう息子、恐縮しまくり。そういうところはなんだかパパにそっくり……堂々とふるまうことも、教えなければ。
そして出口で店員さん、息子に、息子のサイズデータ入り名刺を差し出した。おお、すごいなあ。息子はぺこぺこしながら片手で受け取る。
「両手で!」
思わず声が出てしまった。仮にも名刺だし、新社会人をめざすんだから、これからとっさに両手で受けるくらいの動作が出来るようにしないとー。ううむ、この店、営業のノウハウ伝授やビジネスマナーの訓練までしてくれる!w

今日は娘のサークルがイベントで発表をするとかで、一応息子を誘ってみた。昨日はスーツを買うので外に出たが、自動車学校卒業以来ほとんどこもりきりでPCに向かい、本人も目の疲れを感じて蒸しタオルならぬ蒸しティッシュを作るくらいだ。さわやかな秋、広い公園で新鮮な空気を吸わないと、体力が落ちる。
「いや、いい。金も無いのに出たくない」
「そんなの、ママが財布代わりになるし」
「いや、それはいい」
「別にお金使わなくても外に出ればいいじゃない」
「金を使わないで、何するんだよ!」
「緑豊かなところを散歩したり動植物観察するだけでも、違うでしょう」
「そんなんじゃだめだよ!外に出れば金を使うんだよ!」

何、その「外に出たら金を使いたくなる病」

「散歩にお金はかからないのに。あーあ。あんたも昔は、蟻を見ているだけで何時間も過ごせたじゃない」

息子がひるんだ。そう、今となれば典型的な自閉症のお子さんです、本当にありがとうございましたとしか言いようが無いが、息子を自分のようにはしないために、私は育児書にあったとおり「毎日2時間の外出をし、公園などで他の子どもたちと触れ合いましょう」を実践したのだが、息子は大勢の子どもがいる公園でも、人間にはほとんど興味を示さず、黙々と砂と戯れたり、延々蟻を眺めていたのだ。
まあ、母親の私もママ友と語らうよりも、そこらの木々の葉っぱの葉脈を眺めるのが楽しかったんでどっこいどっこいなのだが。

息子もそんな、懐かしい日々を脳裏に浮かべたようだ。しかし、目が泳ぐ。ぱくぱく、と口を少し動かしたところで、息子はようやく声を出した。

(#゚Д゚)「つっ通報されるわ!!!!!」

……たしかに、幼児の息子が公園の片隅で蟻ばかり見ていたところで、他の親子にお察しされるだけだが、今の息子がにやにやしながら同じことをしていたら通報されるわなあ。真面目に生活していても、職務質問やら、誤認逮捕状態に追い込まれたこともあるし。
「男って、不便ねえ」

なお、息子の自動車学校の送迎バスの待合所は、息子もお世話になった幼稚園の前だったのだが、何も停留所のようなものがないので、いつ通報されるかビクビクしていたそうだ。

| | コメント (2)

2010年10月14日 (木)

ずる休み~この新鮮で懐かしい響き「ママは小学4年生」

今日も娘とキッズステーション「ママは小学4年生」を懐かしく見た。

このアニメは、15年ほど前に、「少子化すると玩具が売れなくなる。女児に、赤ちゃんを育てる楽しさを」というコンセプトで作られたテレビアニメーション。小学4年生の女の子が、突如未来からやってきた自分の赤ちゃんを育てるというストーリー。「赤ちゃんって可愛い!」「赤ちゃんって大変!」を、楽しく体感できる物語だ。

両親は外国に行ってしまい、代わりに留守番にやってきた20歳のおばさんだけが頼りという主人公・なつみだが、漫画家志望のおばさんは赤ちゃんが大嫌い。「あたし一人で育てる!」とがんばったものの、とうとう学校を休まざるを得ない展開に…

「もうっ!おばさんのせいであたし、ずる休みしなくちゃいけなくなったじゃない!」

ずる休み!

なんだか懐かしい、しかも新鮮な言葉に思わず娘と目を見合わせてしまった。
「最近は、ずる休みって言わないわよねえ」
「うん、サボリっていうし…」
「『ご負担』とか『恐怖心を克服できず』とか…」
「www」

そう、「ずる休み」は、私が子どもの頃は普通に言っていたが、それが「学校に行かない権利」のもと「登校拒否」という言葉になり、今はそれが長期にわたると「不登校」になる。
たとえ「これは病気ではないなあ、行きたくないんだなあ」と思っても、親も学校も「ずる休み」とは言わず、子どもの自主性を重んじる時代になった。

…で、今は「不登校」は当たり前という時代だ。

私もまあ、今なら発達障害の病名がいくつついてもおかしくない性格で、小学校の頃などは毎日ごみをかけられ、リレーに負けたのはおまえのせいだと足をかけられ…ではあったが、とりあえず自分で勝手に「休んでいいのは一学期に一日まで」と決めており、いわゆる不登校にはならず、どんなに嫌われていてものうのうと学校に出ていた。

当時はどうあっても、休んだほうが「ずる休み」(=負け)だったから、「学校に行かない」などという選択肢は、なかったのである。

今は、「ずる休み(死語)などと決め付けず、子どもの言い分を聞いてあげよう」となっているが、学校に行けない子どもは増える一方だ。もちろんそれを受け入れる学校は増えており、私も息子の未来にさほど悲観しているわけではないが……たとえば

「能力はあるのだが決められた時間に出勤できず、小さな人間関係で深く傷つき外に出られなくなる人」と、
「能力は今ひとつだが、決められた時間にきちんと出てきて、叱られてもちゃんと克服する皆勤賞受賞者」

がいたとして、自分が事業経営者ならどちらを採用したいか、と言ったら……
やはり後者ではないだろうか。

「ずる休み」という侮蔑的な言葉が、小さな私を発奮させた。
今は学校に行けない子どもたちに、優し過ぎるのではないか。

☆ ☆ ☆

それにしても、やはり「ママは小学4年生」は何度見てもいい。
特にこの「おばさん」がピリッと効いているキャラクターだ。20歳だというのにどこか幼い個人主義者。自分がマンガを描くと言う夢には夢中だが、一般常識が無い、普通の女の子らしい働きをしないと親を嘆かせる。
自分だけが可愛いから、小学生の姪っこにも、またその子どもだという乳児にも容赦が無い。

「この子がいるからあたしはマンガが描けない、あんたは成績が下がる!警察にでも、届けちゃいなさいよ!」
「自分の子は可愛いだろうけど、他人の子は可愛くないのよ!」

ひゃー

当時、こんなことをはっきり言える人はいなかった。いや、今だって普通はこんなことを口走れない。

口走れず、「赤ちゃんって可愛い」と、優しいお母さんを装わなくてはいけないから、疲れきって虐待に走ってしまう人もいるように思えてしまう。

子どもは、可愛いだけではない。
無力で理不尽な存在で、これまで自由に羽ばたいていたはずの自分の行動を制限する。
育児とは、それを受け入れられるかどうかが大切で、この作品では、なつみと赤ちゃんに理解的な人ばかりではなく、こんなすごいことを叫んで逃げ出してしまうおばさんがいるし、なつみ自身が育児に疲れきってしまうあたりもまた、秀逸だ。

そして、こんな自分勝手なおばさんが…

最終回で、視聴者をおおいに泣かせることになる。

| | コメント (2)

2010年9月29日 (水)

息子の自動車学校生活

息子は今、自動車学校に通うほかはネットゲームやなつかしのテレビゲームに興じ、家の掃除や買い物を少し手伝う暮らしである。

自宅警備員

主婦

ニート

…いや、ニートというのは職が無い上に職を得るための勉強もしない状態をいうのだ。運転免許を取ろうとがんばっているので 辛うじて 「無職男性」。   断じてニートではない …ッ

というぎりぎりの毎日で、半年が過ぎてしまった。うーん、ほとんどの試験を優秀な成績で一発合格しているし、先日は体調を崩してわずか1点足らず、しかも再試験の3800円を持っていなかったばかりに、翌日ハートキャッチプリキュアを諦めて再試験を受けたのだが、今度は94点の高得点だったそうだし、…話を聞く分には順調そうなのに、運転免許を取るのは大変なんだなあ。

「今度は高速実習なんだ」とちょっと前に息子が言っていた。なんか、やけに緊張している。話すと息子は高速道路というものを良く知らないらしい。

「あんた、じいちゃんとよくドライブに行ったじゃないの」
「いつの話だよ」
「…ああ、うーん…結構昔か」
息子が低学年くらいまでは、何かと車に乗せてもらいあっちやこっちに行った…と思ったが、あの時の旅行は子どもらが寝ている間に高速道路を越えてしまったようだし、息子は、あの時速100キロの世界を体験した記憶がないかもしれない……
「こえー、時速100キロ、こえー」
やたら怖がる息子。…だから、車はいやだの旅行行きたくないだので引きこもっていたから…ったって、私も子どもの頃はもっと偏屈で、やっぱり車を嫌い、家にこもることを好んだ。それで免許を取るという発想さえなく、おかげで今、履歴書は真っ白。就職は難しいし、身分証明もできない。だからこそ、子どもには何が何でも免許を!とか言っているという勝手さなんだけど。
「あんたが知っている時速100キロの世界って…『リッジレーサー』くらい?w」
うう、そんなに怖がらなくていいわといいたいのだが、こんな例では、他の車に追い越されそうになったらお尻を振ってぶつけてしまいそうだ!

さて、息子はしっかり遅刻せずにその実習を受けてきた。
「遅刻やドタキャンは禁物だからな」

話を聞くと、この実習は数名一組で行うのだが、一人でもドタキャンすると、他の人もキャンセルされてしまうのだという。なんでも、前にそこの教習所で、有給休暇をとってその実習に臨んだが他の人がドタキャンして一日が棒に、そしてその次も有給休暇がぱあに、という気の毒な人がいたらしい。
「だから、俺は絶対寝坊できねえ!」
…ああ、あの起きられなくて不登校の日々よ。息子、やればできるじゃないか!

幸い息子の組は誰もドタキャンが無く、無事に高速道路での教習を終え、息子は上機嫌で帰ってきた。

3人一組で、一人はなんだかいろいろ危なっかしい人だったという。そしてもう一人は

「片腕の無い人だった」

……あら……

「でも、その人が一番運転がうまかった。安心して乗っていられた」

……そうか…

息子の目は、輝いていた。

私たちは性格やものの考え方が変という障害だが、だからといって甘えてはいけないな、と二人で話し合った。

| | コメント (2)

2010年9月18日 (土)

最近の元「不登校暴力息子」

久々に、息子のことを。

突然の病気によって閉ざされた「18の春」。

そこそこいい評価を得て、本人も意欲的だった二つの職場にも、この入院ですっかり声をかけてもらえなくなってしまった我が息子。

進学とも就職とも道は見えない。このままじゃニートまっしぐら??とりあえず「自宅警備員」と「主婦」役を担いつつ、運転免許取得してから再起を目指そうとしている。

そんな息子に、私は何不自由ある生活をさせている。

不登校で暴力を振るっていた頃から、「ママが面倒を見るのは18までだ。社会が『児童』として保護してくれるのも18まで。18以降は、経済的自立をはかってもらう!」と宣言していたので、ここであれもこれも助けてあげては本人のためにならない。もちろん、飢え死にさせない程度ではあるが。

息子も高校時代のバイトでそこそこお金が手に入り、労働の喜びを理解したところ。

高校生の小遣いとしては十分な額を得、それを私が管理する形で自動車免許取得資金を貯めた上で息子は自由を満喫していた。スナック菓子や清涼飲料水、ファストフードなどを自由に買って食べていた。オカンの飯など食べなくても、やっていけるという顔をしていた。

それが、底を突いた。

本当なら就学するか(それなら自立を先延ばしできる)、バイトでもいいから就職して、家にいくらか生活費を入れるはずが、入れるどころか完全に養ってもらうことになってしまった息子。

もう、オカンの作る食事を捨て置くこともない。
それどころか、朝早く起きてきて、「ハムマフィン」を焼いてもらうのを期待している。

子どもの頃、マフィンをなぜか嫌っていたはずなのに……ていうか、朝ごはんを食べなくなって10年以上?

裂いたマフィンとハムをフライパンでさっと焼き、自家製ガーリック・ハーブオイルを垂らしてハムをのせ、サニーレタスとあればプチトマトの薄切りを盛り、マヨネーズをかけてはさむ。

かりっと焼けたマフィンが香ばしく、ハムと野菜が鮮烈で…と、「今一番うまいと思える」そうだ。

そして同時に、あれほど嫌い、憎んでいた親に依存していることを自覚し、そのありがたみを感じているという。

今息子は、わずか3150円にも不自由している。
一応息子は、学科も実技もずっと順調で一発クリアだったのだが、今日の試験では肝心なところでくしゃみが止まらなくなり(持病のアレルギー性鼻炎か、風邪か)、なんと合格点まで1点足りない結果に。そのわずかなお金があれば、午後再試を受けられたのに、そんなお金が、息子の財布に入っていない。

……かつてはほいほい何万円も親や祖父母の財布から盗み、好きなものを買っていた息子が、そのわずかな金の重みを痛感する。

「明日必要なんで3150円貸していただけませんか><」というメール。
私の仕事もいつまで有るかという状態ではあるが、私もまた、こういうときにお金を融通できる、仕事があるということに感謝しながら、余裕を持って5000円渡す。「いいよ、いつか10倍にして返してくれると信じているから♪」
「…w10倍はどうかわからないけど、必ず返しますw」

そして、最近生意気盛りの娘に、親や祖父母がいること、家があること、お金があることの大切さを説く息子であった。

| | コメント (8)

より以前の記事一覧